黒鷲旗奪還に挑んだ石川勢の夢は、県外の強豪に阻まれた。金沢学院大附と金市工は優勝、準優勝のチームにいずれも先鋒戦で勝利したものの、あと一歩のところで届かず。各選手は悔しさを糧に夏の高校総体(インターハイ)での雪辱を期した。

  ●金沢学院大附・篠、けが乗り越え奮闘

 金沢学院大附は、決勝トーナメント初戦で昨年の覇者・箕島(和歌山)に逆転勝利を収め、続く拓大紅陵(千葉)も破った。準々決勝の相手は3月の全国選抜大会を制した鳥取城北。優勝候補を相手にしてもメンバーは気後れせずに挑んだ。

 先鋒・篠宗磨選手(3年)が、選抜大会個人3位の加藤哀翔選手の厳しい攻めに耐え、最後は押し出して先勝。会心の勝利に応援席はこの日、最高潮の盛り上がりを見せた。しかし、中堅・大家丈力選手(同)、大将・木原康生選手(同)が敗れ、16年ぶりの栄冠を目指した大会はベスト8で終えた。

 篠選手は昨年3月、稽古中に左膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂する大けがを負った。手術に踏み切り、本格的に稽古を再開したのは今年3月。金沢大会に照準を合わせ、苦しいリハビリに耐えてきた。

 2022年の金沢大会で個人優勝した兄の侑磨さんから大会前に「勝ち負けを気にしないで」と声を掛けられたというが、篠選手は終了後「実力が足りなかった。チームとしてしっかり稽古してインターハイ予選を戦いたい」と目を真っ赤にした。

  ●金市工・管部、志賀町出身「上へ」前向く

 全国選抜大会3位の勢いそのまま、9年ぶりの優勝を狙った金市工も8強で散った。主将の管部憩選手(3年)は「自分たちの相撲ができなかった」と唇をかみ、夏の高校総体でのリベンジを誓った。

 熊本農との準々決勝は、先鋒・大谷夏希選手(2年)が落ち着いてはたき込みを決め、スタンドは大歓声に沸いた。しかし、管部選手に代わって出場した中堅・井口一太選手(2年)が下手投げで敗れ、大将の野口明輝選手(2年)は相手を土俵際に追い詰めたものの、押し倒された。

 管部選手は志賀町出身で、地元を離れて金沢市鳴和中、金市工に進んで力を付けた。今年の元日は実家へ帰省中に地震に遭い、断水も経験。「ふるさとを元気にする相撲を見せたい」と意気込んでいただけに悔しさが募った。

 金市工は2年生主体のチームだが、管部選手は「自分が頑張ればもっと上へ行ける。夏は優勝したい」と前を向いた。