4月19日に東京ドームでの埼玉西武対ソフトバンク戦において、セレモニアルピッチに登場した歌手の郷ひろみ。ノーバウンド投球で球場を沸かせ、国歌独唱も行った。試合後にはミニライブも行い、名曲「2億4000万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」を熱唱。SNS上で「67歳って嘘だろ?」「カッコ良すぎる!」などと、昭和のトップスターが今も健在の姿に若者たちから絶賛の声が集まった。

当時10代の郷ひろみ
当時10代の郷ひろみ

(C)松竹

郷ひろみが「男の子女の子」でデビューしたのは、1972(昭和47)年のことで、同年に生まれた人はもう50代に入っている。西城秀樹、野口五郎と並んで「新御三家トリオ」として、70年代の歌謡曲全盛時代をトップランナーとして支えた。実はデビュー当時から俳優としても活躍していて、1972年のNHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優デビューを果たしている。

1973年には、NTV系のテレビドラマ「ぼくは叔父さん」に主演。本作が郷のテレビドラマ初主演作となっている。郷が演じる主人公の早川大助は父親を亡くし、四国の高知県から義姉を頼って上京。姉の経営するレストランに住み込みながら働き、定時制高校に通う苦学生だ。郷は実年齢にほぼ近い主人公をみずみずしい演技で演じているが、義姉の3人の娘たちからいびられてしまう場面など、苦難に負けずにたくましく生きる姿がほほえましい。

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複数の脚本家がシナリオを手掛けているが、クレジットには市川森一の名前もある。市川といえば、「ウルトラセブン」や「帰ってきたウルトラマン」など円谷プロの特撮作品で名を馳せ、「コメットさん」(九重佑三子主演版)や「傷だらけの天使」といった、昭和を代表するドラマの脚本家として有名な巨匠である。ほかにも、宮脇康之が主演した「ケンちゃんシリーズ」の脚本家として知られる、三宅直子らが本作のシナリオに参加した。

定時制高校に通いながらレストランで働く主人公という設定は、今思えば地味な話のようにも思えるが、シナリオの妙と魅力十分な俳優たちの存在感によって、十分に見ごたえのあるドラマに仕上がっている。デビュー当時に郷が所属していたジャニーズ事務所のスターだったフォー・リーブスのメンバー(北公次、青山孝史、江木俊夫、おりも政夫)も共演。郷はブレイク前にフォー・リーブスのバックダンサーも務めていただけに、本作は貴重な共演作であるが、あらためて見るとフォー・リーブスの4人とも華々しい容姿を誇っていて、さすがにトップアイドルの風格を十分に感じさせる。ジャニーズ事務所の初期を支えた、彼らの勇姿を見れる映像としても貴重な一作だ。

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ほかにも、「笑点」の座布団運びでおなじみの山田隆夫も共演。郷より1年年下の山田は、本作が放送された1973年に江藤博利、今村良樹、新井康弘と共に「ずうとるび」を結成し、大変な人気を誇った。「みかん色の恋」などをヒットさせてNHK紅白歌合戦にも出場している。ほかに「ハレンチ学園」で人気を博した児島美ゆき、ベテラン女優の加藤治子、小津安二郎映画でおなじみの名優・笠智衆といった俳優陣も共演しているほか、子役時代の尾美としのり(当時は尾美利徳)も顔を見せている。

昭和の香りが全編に漂う、心温まる青春ホームドラマ「ぼくは叔父さん」は記念すべき郷ひろみの初主演ドラマでありながら、話題にのぼることが少なかったこともあり、知る人ぞ知る隠れた名作といえる。今も元気な郷ひろみの若き日の凛々しさと可愛さを再確認するとともに、衣装や風景などに垣間見られる昭和の日本の姿を画面で味わってみるのも一興だろう。

文=渡辺敏樹

放送情報

ぼくは叔父さん
放送日時:2023年5月22日(月)20:30〜
※毎週(月)20:30〜

放送チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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