名探偵といって思い出すのは、コナンくんか、明智小五郎か、金田一耕助か......。テレビや映画でも大人気の探偵ものだが、海外の名探偵として名前が上るのは、シャーロック・ホームズや、ポアロだろう。中でもホームズは人気が高く、コナン・ドイルのミステリー小説「シャーロック・ホームズ」シリーズの舞台を現代のロンドンに置き換えた海外ドラマ「SHERLOCK」、現代のニューヨークに置き換えた海外ドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」も制作された。そして、舞台を令和の東京に置き換えたのがドラマ「シャーロック アントールドストーリーズ」だ。

ディーン・フジオカと岩田剛典が現代版ホームズ&ワトソンを演じる
ディーン・フジオカと岩田剛典が現代版ホームズ&ワトソンを演じる

(C)2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会

世界各国で愛されているキャラクター、日本版のシャーロック・ホームズを演じたのは、ディーン・フジオカ。現代の東京で探偵ホームズは、犯罪捜査コンサルタントの誉獅子雄。そしてホームズのバディであるワトソンは、岩田剛典演じる元精神科医の若宮潤一。副題にある「アントールドストーリーズ」は「作中に登場するが、詳細は語られていない事件」のこと。
ストーリーは、小説「シャーロック・ホームズシリーズ」に登場する「語られざる事件」にスポットを当て、オリジナルストーリーとして展開している。その日本版「シャーロック」が、初めて原作でメインとして扱われている事件を用いたのが「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」だ。ドラマ「シャーロック アントールドストーリーズ」の最終回翌週に、特別編ドラマ「誉獅子雄という男」が放送されたが、この作品のエピソードの下敷きとなった"語られざる事件"「義理の娘殺人の罪に問われたモンパンシェ夫人の冤罪事件」は、小説「バスカヴィル家の犬」の中に「バスカヴィル家の犬事件のあと、かかりきりになっていた事件」として記述のあるもの。つまり特別編ドラマは、連続ドラマと映画「バスカヴィル家の犬」とのブリッジになっていたという訳だ。

(C)2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会

原作となった小説「バスカヴィル家の犬」は、ファンの間でも最高傑作との呼び声が高い「シャーロック・ホームズ」シリーズ長編小説のひとつ。劇場版での舞台は瀬戸内海の離島に。この島に住む日本有数の資産家(西村まさ彦)が、莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げた。死の直前、資産家は獅子雄に、娘・紅(新木優子)の不可解な誘拐未遂事件の犯人捜査を依頼していた。

真相を探るため島を訪れた獅子雄と若宮を待ち受けていたのは、古い洋館に住む奇妙で華麗な資産家一族と、嘘を重ねる怪しい周辺人物たち。2人の到着直後、資産家に続き息子の千里(村上虹郎)も非業の死を遂げたが、彼らの死には、島に伝わる"黒い犬の伝説"が関わっていた――。

獅子雄と若宮のイニシャルがホームズとワトソンと同じになっているように、バスカヴィルという苗字が"蓮壁"に、ヘンリーは"千里"、ステープルトンは"捨井遥人(小泉孝太郎)"、バリモアは"馬場杜夫(椎名桔平)"と、登場人物たちの名前も原作に寄せられているので、原作ファンには登場人物が想起しやすいもの面白い仕掛けだ。

連続ドラマの映画化作品だが、ドラマを見ていなくても映画に支障はない。獅子雄と若宮がホームズとワトソンの関係であることだけわかっていれば、大丈夫。ドラマでは毎回、推理を巡らせる時にバイオリンを弾いていた獅子雄が見られないのは残念だが、ディーン・フジオカと岩田剛典という見目麗しいバディの活躍は健在。相変わらず若宮は獅子雄に翻弄されておろおろしているし、獅子雄は周りの空気を読まずに独自の目線で捜査を進める。天才と秀才のデコボココンビぶりも見逃せない。閉ざされた島と島に伝わる伝説、そして名門一族の抱える秘密といった正統派ミステリー原作があるだけに、これまでの現代的なドラマ版とは一味違う最強バディが楽しめる。

文=坂本ゆかり

放送情報

バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版
放送日時:2023年5月20日(土)20:00〜
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2023年5月21日(日)11:00〜
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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