高橋一生が主演を務める映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」で青年期の露伴が出会うミステリアスな女性、奈々瀬役を演じている木村文乃。彼女がヒロインを演じ、2019年に配信ドラマとして制作されたのが、「SPECサーガ完結篇『SICK'S 厩乃抄』〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜」だ。

バディで捜査をする木村文乃と松田翔太
バディで捜査をする木村文乃と松田翔太

本作は「ケイゾク」「SPEC」に続く"SPECサーガ"の完結編であり、「SICK'S」 3部作の最後を飾る物語。木村が演じているのは、内閣情報調査室の中にあるSPECホルダー対策の特務事項専従係(通称トクム)に所属しているハーバード大卒の天才・御厨静琉。元警視庁公安部の高座宏世(松田翔太)と共に時空を操るSPEC"リバース"を持つ宿敵、ニノマエイト(黒島結菜)との最終決戦に挑んでいく。
当時、堤幸彦監督が会見で「『ケイゾク』からご覧になってくださっている方には、たまらない方向に進むと思います」とコメントしたように本作はシリーズファンがニヤリとする場面も登場。余命3ヶ月と宣告された御厨が特務の係長、野々村(竜雷太)と高座に支えられながらSPECホルダーをめぐる大がかりな戦いの決着をつけるべく生命を賭ける。ふらふらになりながらも決して諦めない木村の迫真の演技、仲間との絆も見どころだ。

■御厨が乗り移ったような木村文乃の佇まい、行動にゾクゾク?

内閣情報調査室特務事項専従係の係員である御厨はIQ230の天才かつ変人。自身もSPECホルダーであり、片目は常に眼帯で覆われ、服は黒一色。空気を自在に操ることができる能力の持ち主だ。しかし、そのせいで少女時代から孤独に苛まれ、自傷癖があり、自分は誰からも必要とされていないと思っている。口が悪く、感情が揺れ動くと故郷の気仙沼弁が飛び出すのが特徴で、拾壱話ではスキルス性胃癌で余命3ヶ月だと宣告され、見舞いに来た野々村と高座が挙動不審なのを見て「なにや〜、全部、知ってっぺやー」と言い放つ。2人が止めるのも聞かず、生命ある限りニノマエイトに立ち向かう決意を固める御厨が痛み止めでぶっ飛んだ状態で"トクム"に現れ、階段から落ちながらもやる気の儀式を行う場面は負のエネルギー全開でど迫力。役が憑依しているような木村の演技にゾクゾクする。

■松田演じる高座との男女を超えたバディの信頼関係が胸アツ

謎の物体"HOLIC"を巡って日本政府やアジアの某超大国、国家維新を目論む団体など、対立が激化し、カオスとなる中、SPECを使って戦う御厨はどんどん消耗していく。そんな御厨を案じて、高座がとった行動は結果的に家族との過去を蒸し返すことになる。絶望してどん底まで落ちた御厨を高座が全力で説得するシーンには心を動かされずにはいられない。高座が病室を去った後で、「これが生きる希望か。悪くないっちゃ」とつぶやく姿は御厨の暗黒人生に光が差し込む瞬間を見るようで木村の演技が秀逸だ。燃え尽きるまで信念を曲げない御厨を心配しながらも父親のような視線で見守り、バックアップする野々村、御厨からの願いに苦悩しながらも望むままに戦わせようと覚悟を決める高座。固く結ばれた3人の絆は揺らがない。「ケイゾク」「SPEC」「SICK'S」。3つの物語の様々な点が線になっていく物語の行方はいかに? シリーズを見たことがない人は遡りたくなるかも!?

文=山本弘子

放送情報

SPECサーガ完結篇『SICK'S 厩乃抄』〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜
放送日時:2023年6月11日(日)0:00〜[全話一挙放送]
放送チャンネル:TBSチャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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