どんな役でもリアルに存在するように好演！北村匠海が激しくシャウトしてギャップを見せた「にじいろカルテ」

ある時は、時をかけるヘタレ少年(映画「東京リベンジャーズ」)、ある時はゴスロリ女装のサイコキラー(「ミステリと言う勿れ」)、またある時は引きこもりのネット廃人探偵（「名探偵ステイホームズ」）と、ここ数年、クセのある多彩な役を演じている北村匠海。2023年に入ってからは、純愛ラブストーリー「星降る夜に」で手話を使った情感豊かな演技を見せ、高く評価された。現在25歳。子役時代から培ってきた演技力で、どんな役でも本当に存在するように演じている。

そんな北村が、2021年に高畑充希や井浦新と共演した連続ドラマが「にじいろカルテ」だ。「ひよっこ」の岡田惠和が脚本を書いたオリジナルストーリーで、山奥の過疎の村を舞台に、それぞれ挫折や喪失を心の傷として抱えながらも、隣にいる人と手を差し伸べながら生きていく人々を描いたヒューマンドラマ。

主人公は、東京の大きな病院に勤務していた内科医の真空(高畑)。まだ若い彼女だが、ある難病に冒されていることが判明し、医師として戦力外通告を受ける。しかし、お金もなく、仕事も続けたいと困った真空は、偶然知った"虹ノ村"の医師募集に、病を隠して応募。虹ノ村診療所で、先に東京から村に移住していた外科医・朔(井浦)と看護師・太陽(北村)と３人で共同生活を送ることに。「医師だが患者」という立場である真空は、なにかといえば集まってお節介をしてくる村人たちに囲まれ、そこに自分の居場所を見つけるが、病は容赦なく進行し、やがて周囲に本当のことがバレてしまう。

北村演じる太陽は、前髪ぱっつんのマッシュルームカットがトレードマーク。生真面目な性格で、仕事熱心。自由奔放な朔とは何かとぶつかり、良いコンビだが口論が絶えない。いちいち考え込む傾向があり、自分のことを「つまんないし」という太陽だが、高校時代に作った曲を村内放送で流したところ、「俺以外みんな死ね！」とデスメタル調で激しくシャウトしており、村人たちの度肝を抜く。この曲が流れる場面は、北村の歌うバラード「猫〜THE FIRST TAKE ver.〜」(DISH//)がヒットした後だっただけにギャップが激しく、爆笑を誘った。

ただ、普段は大人しい性格の太陽。真空のことを女性としても意識しているが、自分から強くアピールはできない。北村はそんな不器用さを繊細な表情で表現し、時に美しい涙を流す。「隣の家族は青く見える」で男性同士のカップルを演じた眞島秀和とこのドラマで再共演しているのも見どころだ。

真空は病気が進行して人生のカウントダウンが始まっているが、誰も彼女を「かわいそうな人」としては扱わない。最終話、倒れて救急車で運ばれる真空に付き添い、朔と太陽が自分たちの生命力を分け与えるように両頬にキスをする場面は、ドラマ史に残る名シーン。たとえ身体的には問題がなくても日々のタスクに追われて心が疲れているときにじっくりと見たい、ハートフルな一作だ。

文＝小田慶子