■挫けそうで挫けない、ひたむきな主人公に胸が熱くなる

今ノリに乗っている若手実力派がこぞって出演し、大人気コミックを実写映画化した『東京リベンジャーズ』(2021年)。北村匠海、山田裕貴、吉沢亮ら注目の俳優陣による見応えのあるバチバチの演技合戦だけでなく、先が気になってしかたがないストーリー展開、仲間との絆、ド迫力のアクションなど、どこを切り取っても胸が熱くなるような内容で、興行収入45億円、観客動員数335万人を記録。2021年劇場用実写映画No.1の数字を叩き出した。今年4月に公開された続編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』も大いに話題を呼び、2部作の後編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(6月30日(金)公開)への期待も高まっている。

「新宿スワン」などでも知られる和久井健によるコミック「東京卍リベンジャーズ」を実写映画化した本作。元ヤンキーで、成人した現在はダメダメな人生を送る主人公のタケミチは、人生唯一の恋人であるヒナタが犯罪組織「東京卍會」の抗争に巻き込まれて死亡したことを知る。タケミチは突如身につけたタイムリープの力を使って過去へと戻り、ヒナタ、そして仲間を救うために人生のリベンジに挑んでいく──。

タイムリープのトリガーとなるのは、ヒナタの弟で現在は警察官のナオト(杉野遥亮)との握手
タイムリープのトリガーとなるのは、ヒナタの弟で現在は警察官のナオト(杉野遥亮)との握手

原作が累計発行部数7000万部を突破しているように、まず物語自体に強度や新鮮さがたっぷりと織り込まれている。「ヤンキーもの」はもともと人気のジャンルで、喧嘩をしながら仲間を増やし、トップを目指していく青春王道ストーリーとしての興奮も満載。本作はそこに、誰もが一度は抱くであろう「人生をやり直してみたい」という願望を叶える「タイムリープもの」の要素を加え、斬新な組み合わせによってさらなる感動を生み出すことに成功している。

「東京卍會」を犯罪組織に変貌させたキーマン、マイキーに立ち向かうためにタイムリープしたタケミチだが、過去の世界で出会ったマイキーはとびきり魅力的な人物だった。いったいマイキーや東京卍會に何が起きたのか?どうすればヒナを救うことができるのか?タケミチと同じように、読者や観客も謎を紐解いてみたくなるくらい、「タイムリープもの」だからこそ描けるサスペンスフルな展開も面白い。また「クローズ」や「ビー・バップ・ハイスクール」など実写化もされた伝説的なヤンキーものと同様に、ビジュアル&性格も個性豊かなキャラクターが続々と登場し、所狭しと大暴れ!東京卍會のメンバーの絆と友情、それぞれの内面が明らかになるにつれて、気になるキャラクターや、「この2人のやり取りが好き」といったお気に入りができるはずだ。

そして本作の柱となっているのが、主人公タケミチの成長物語だ。人生負け組のタケミチが「大切な人を守りたい」という想いを再確認し、運命を変えようともがきまくる。とんでもない殺気を漂わせる最恐キャラに毅然と向き合い、何度も立ち上がるタケミチから勇気をもらった人も多いことだろう。

■完璧なキャスティングと、役者の実力を引き出す監督の手腕

タイムリープのトリガーとなるのは、ヒナタの弟で現在は警察官のナオト(杉野遥亮)との握手
タイムリープのトリガーとなるのは、ヒナタの弟で現在は警察官のナオト(杉野遥亮)との握手

漫画原作の実写化は成功が難しいとも言われているが、その中でも本作は成功例として原作ファンからも支持を集めた。成功の理由は、原作に沿った内容、バッチリとハマったキャスティングなど、製作陣がしっかりと原作に敬意を表していたからこそ。

「泣き虫のヒーロー」タケミチ役に抜擢された北村匠海は、タケミチのがむしゃらさと誠実さを見事に体現。イケメンオーラを封印し、タケミチのヘタレ具合にも説得力がある。ボロボロになればなるほど輝くような底力を放つタケミチとなったが、本作出演後には、北村が所属するバンド「DISH//」のツアー会場に大勢の子どもの姿が見受けられるなど、「東リベ効果」によって北村自身のファン層にも変化が生まれたという。これは彼が、タケミチを血の通った魅力的な人間として表現したからにほかならない。

圧倒的なカリスマ性で東京卍會を束ねるマイキー役に吉沢亮
圧倒的なカリスマ性で東京卍會を束ねるマイキー役に吉沢亮

また東京卍會の伝説の総長・マイキーを演じたのは、吉沢亮。異常な喧嘩の強さと、一瞬にして周囲を惹きつけてしまうカリスマ性を持つマイキーは極めて漫画的なキャラクターだからこそ、原作漫画を楽しんでいる時点では正直「マイキーを実写化するのは無理だろう」と思っていた。しかし、吉沢扮するマイキーがお目見えするやその予想はいい意味で裏切られ、「マイキーが動いている!」と胸が高鳴ると同時に、吉沢はカリスマ性をにじませることができる稀有な俳優だと改めて実感した。

そして東京卍會の副総長でマイキーを支えるドラケンを演じる山田裕貴は、どっしりとした重厚感も役そのもの。放送中のドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」もそうだが、山田は、無愛想に見えながら、隠しきれない優しさが見え隠れするような役柄がよく似合う。そのほか、今田美桜、杉野遥亮、鈴木伸之、磯村勇斗、間宮祥太朗、眞栄田郷敦、清水尋也など、人気と実力を兼ね備えた若手俳優陣がズラリと顔をそろえ、それぞれがすばらしい熱演を見せている。イベントで北村は「この仲間たちは誇りに思える人」と、同世代の仲間から刺激や喜びを受け取っていることを明かしていた。お互いに着火し合いながら、限界を突破していくような撮影を経たことで、その熱気が確実にスクリーンにも映しだされている。

人気と実力を兼ね備えた若手俳優が集結しながらも、誰一人埋もれることなく活躍を見せている
人気と実力を兼ね備えた若手俳優が集結しながらも、誰一人埋もれることなく活躍を見せている

メガホンをとったのは、『映画 賭ケグルイ』(2019年)や『映像研には手を出すな!』(2020年)など漫画原作の実写化、そして若手キャストの演出に定評のある英勉監督。『映画 賭ケグルイ』では、浜辺美波や高杉真宙、福原遥らがイメージを覆すようなぶっ飛んだ表情を披露していたことも印象深い。英監督とタッグを組んだ俳優にインタビューをすると、「英監督は『もっと飛べる。飛んじゃいな』という力を注いでくれる」と口にすることもあり、思い切り暴れられるのが英組の現場である様子。次々と激しいぶつかり合いが巻き起こる『東京リベンジャーズ』の監督として白羽の矢が立ったのも納得だ。

今年2部作で公開される『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』も大きな盛り上がりを見せている
今年2部作で公開される『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』も大きな盛り上がりを見せている

青春、サスペンス、ラブ、アクションなど、どの角度から見ても心揺さぶられる本作だが、英監督がそれらをバランスよくまとめ上げただけではなく、若手キャスト陣からあふれ出す気迫までをしっかりと捉えている。信頼を寄せ合うキャスト陣が同時代に活躍し、彼らが本作に集まったことは、まるで奇跡のよう。熱さも迫力もさらにパワーアップした劇場版最新作を鑑賞する前に、まずはその始まりをチェックしよう。

文=成田おり枝

成田おり枝●映画ライター。大学卒業後、シネコン、ミニシアターでの劇場経験を経て、映画サイトの編集者へと転身。 現在はフリーライターとして映画、アニメ、ドラマを中心に、インタビューやコラムなど日々の取材に奔走中。

放送情報

東京リベンジャーズ
放送日時:2023年6月24日(土)21:00〜
チャンネル:チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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