ファッション誌のモデルからスタートし、2014年に俳優デビューした成田凌。2016年放送のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や2017年度下期放送のNHK連続テレビ小説「わろてんか」などで好演して注目を浴び、2019年には映画「スマホを落としただけなのに」「ビブリア古書堂の事件手帖」の2作品で第42回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。現在も第一線で活躍しているのは周知の通りだ。

そんな成田が個性極まる"毒舌敏腕キャリアアドバイザー"を演じて話題となったのが、2月26日(月)より日本映画専門チャンネルで放送される2023年のドラマ「転職の魔王様」だ。成田が演じるのは本作の主人公・来栖嵐。求職者に対して辛辣な言葉を投げつけるため"魔王様"と呼ばれているが、優秀な成績を誇る。
来栖は過去の事情から、笑うことはもちろん、表情を変えることもほとんどない。つまり表情で心情を伝えることが難しいキャラクターなのだが、それでも"目"と"声"で感情の動きを表現する成田の演技はまさに絶品だ。

成田凌が主演するドラマ「転職の魔王様」
成田凌が主演するドラマ「転職の魔王様」

物語は、小芝風花が演じるヒロイン・未谷千晴がある事件を目撃するところから始まる。大手広告代理店を辞め求職中だった千晴は、仕事が決まらず自暴自棄になっていた。そんな中で、中年男性がある男に襲いかかる場面に出くわす。その時襲われた男がまさしく来栖だ。来栖は難なくナイフをかわし、冷静な態度で男性に対応する。さらには相手の手首を掴み、切っ先を自分の喉元に向けて「どうぞご自由に」とまで言い放つ。その時の落ち着いた声と微動だにしない視線からは、来栖という人間の覚悟や、得体の知れない強さのようなものが感じ取れる。冒頭で人物像を強く印象付けてしまうところに、成田の演技の凄さが伺える。

その後、千晴は叔母の落合洋子(石田ゆり子)が経営する転職エージェント「シェパードキャリア」で職探しを始め、同社にキャリアアドバイザーとして在籍する来栖と再会する。面談シーンでの成田の演技も絶妙で、信念もなくとりあえず仕事に就きたいという千晴に次々にキツい言葉をぶつける。眉を動かしながら転職の現実を突きつけるなど小技も効いている上、最後には軽蔑を含んだような冷たい眼差しで「お帰り下さい」とまで言い放つ。

そんなまさに"魔王様"な来栖だが、甘いものに目がないという一面も。同僚が差し出したチョコレートを前に落ち着きなく視線を動かしたり、洋子が取り出したプリンを引っ込めた途端に動揺したり、来栖という男の愛すべき部分もしっかり成田は演じて見せてくれる。

第3話で周囲に合わせがちな青年に「その仮面、いつまでつけ続けるおつもりですか?」と言った後に憐れむような眼差しになったり、第4話で登場する元カノとの面談で攻撃的な口調になったり、回を重ねるごとに成田の"目"と"声"の演技の幅が広がっていき、来栖という男の人物像が深まっていくところも、本作における成田の演技の妙と言えるだろう。

千晴がキャリアアドバイザー見習いとして来栖とともに仕事をするようになってから、物語はより深いものへと発展していく。「仕事はその人の人生」という観点から、転職活動によって求職者が本当の幸せを見つけていく姿が各話で描かれる。また、同時に、来栖が笑わなくなった理由や、キャリアアドバイザーとして成長していく千晴の姿も描き出される。成田の演技はもちろん、表情豊かな千晴を演じる小芝の演技によって、本作がより魅力的なドラマに仕上がっていることは誰もが認めるところだろう。

果たして来栖に笑顔が戻る日は来るのか。成田や小芝の秀逸な演技に注目しつつ、この極上のドラマを最後まで楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

転職の魔王様 #1〜#3
放送日時:2024年2月26日(月)9:30〜
※#4〜#7は2月27日(火)9:25〜、#8〜#11は2月28日(水)9:25〜
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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