「足が短いのが嫌だ」「胸がもう少し大きければ」多様性が尊重されつつある今でも、自分の体を好きになれない人は多いのではないだろうか。
けっして簡単ではない「自分を受け入れる」ことをアートの力で可能にするのが、Rina Lilaさん(以下Rinaさん)だ。彼女の手がけるボディペイントでは、人の体をキャンバスにし、その人から感じ取ったエネルギーや色を描いていく。

「嫌いだった体の一部がかわいいと思えるようになった」イベント参加者がそのように話すのはなぜなのだろうか。

きっかけは自分だけの「遊び」だった

Rinaさんがアートの道に進むきっかけとなったのは、2019年夏、大学卒業後に訪れたバリでの一人旅だった。ふらりと入った美術館で出会った絵に魅了され、帰国後すぐに独学で絵を描き始めた。2020年9月にはアクリル絵の具を使用した本格的なアート活動を開始し、以来「愛を伝える」をテーマに、展示会やワークショップなど幅広く活動している。

ボディペイントを始めたのは、自身の「遊び」がきっかけだった。

「体にも絵を描いたら絶対楽しいと思って、色のついた化粧品を顔や手に塗って遊んでみたんです。肌に色がつくことで表情も明るくなって、自分の心が解放されていくのがわかりました。きっと人にも喜んでもらえる。そう思って人の体にも絵を描くようになりました」

心を解放させてくれるボディペイント

Rinaさんが絵を描くときに大切にしていることは「決めない」ことだという。

「イメージや色の配置は決めず、その人から感じるものや色を出てくるままに指や筆で描いていきます。優しさや強さなど、人によって感じるものやあらわれる色は全然違います」

参加者の多くはRinaさんに会ったこともなければ、ボディペイントを経験したこともない。服を脱ぐ恥ずかしさやためらいがあるなかで、どのように緊張が解かれていくのだろうか。

「初めは緊張していても、Tシャツを脱いで描く私を見てお客さんも自ら服を脱いでくれたり、色がついた体を見て表情が和らいでいったりするんです。体って簡単に他人に見せられるものじゃないからこそ、私を信頼して来てくれることが本当にありがたく感じます」

体が“ある”ことに感謝する

参加者には自分の体にネガティブなイメージを持っている女性が多い。無意識に根付く「美の基準」があるからだ。

「太ってたら好きになってもらえないとか、二重の方が美しいとか、体毛を剃ってなかったら普通じゃないとか、まるで顔や見た目に正解があるかのように見せられてることに違和感があって。私たちはそんな考えのなかで生きてきたから、無意識に『こうならなきゃ』って考えちゃう。それってすごい苦しくて不自由なことやと思うんです。本当は皆そのまんまで美しいし、何も否定する必要がありません。自分の体が“ある”ことに感謝するようになれば自分や人をジャッジすることがなくなって、助け合いのできる心地良い世の中になると思います」

実際、Rinaさんのアートや言葉で自身の体に対する見方が変わる人もいる。

「一時期太ってたことでお尻の線ができて気になるって言う人がいて。『それも生きてる証拠やし、体が存在するから今日もここに来れた。“ある”ことにありがとうなんだよ〜』って伝えて、そこにお花を描いたんです。そしたら『かわいくなった〜』って見てくれて。絵を見てかわいいって言ってるのか自分の体を見てそう言ってるのか、境界線がないように感じました」

自分を受け入れるために

なぜこんなにも愛のある言葉が溢れてくるのだろうか。それはRinaさんが自分を受け入れることを何度も繰り返してきたからだ。

「自分を受け入れたいという気持ちに気づくことから始まったかな。それからは自分を100%発揮できる場所や時間を作って、そのまんまの自分を出すようにしました。自分の好きなところと嫌いなところをノートに10個ずつ書いて、『よく頑張ったね』ってチアリーダーになって褒めてあげたり、落ち込んでても『大丈夫、それでも良いんだよ』ってとにかく言葉をかけてあげるんです。進んだり後戻りしながら何回も何回も続けていくうちに、人に気に入られようとしなくていいんや、もっともっと好きなことをしようって楽に考えられるようになりました」

「自分を受け入れることは、今も続くJourney(旅)」と話すRinaさん。今ではアートこそが自分を受け入れるための場になっている。

「アートと出会って、『何を表現したいのか』と自分にフォーカスすることで自分を受け入れ、愛せるようにまでなりました。次は私がアートや私の存在を通して皆に伝える番。そのまんまの自分を愛するきっかけをつくる。アートにはそれを叶える力があると信じています」

上野さき