通常の検査では異常が見当たらないのに、慢性的な腹痛や下痢、便秘などの症状に悩まされる「過敏性腸症候群」は誰にも相談できず、悩んでしまうことも多い病気。YouTuberのあんずさんも、この病気に10年以上悩まされたが、生き方を見つめ直し、病気を克服した。

過敏性腸症候群に苦しめられた子ども時代

過敏性腸症候群は、トイレへ行きづらい状況下で腹痛と便意を感じる「下痢型」、便意を伴うもなかなか排便できない「便秘型」、この2つの特徴を併せ持った「混合型」の3タイプに分けられ、中には腹部が張り、おならが出る「ガス型」の症状が現れる人もいる。

あんずさんは、下痢型。小学2年生の頃から学校で自由にできない、制限されているというストレスから腹痛を感じるようになり、小学4年生の時、病院へ。その時は菌の影響だと診断され、治療薬を貰ったが症状は改善せず、腹痛の頻度が増加した。

中学入学後、症状は悪化し、校内では席に座っていないといけない状況や集会の時間が苦痛に。そうしたストレスが引き金となり、パニック障害を発症。明るい性格であったからこそ、友達に病気を相談できなかった。

教室や体育館に集まる時は席を後ろにしてもらい、腹痛や動悸を感じたら、すぐ抜けられるようにしていたが、人からどう見られているかが気になった。

そうしたストレスもあってか、症状はさらに悪化。学校に行く前や通学中の電車内、休日の外出時や移動時にも腹痛に悩まされるようになった。

耐えきれず、中学3年生の終わりから不登校に。その後は高校に進学したが、あまり登校できず。この頃には、うつ病も発症していたという。

状況を変えようと投薬治療を開始し、ネットで効果があったと言われているサプリや健康法も試したが、腹痛を感じる頻度は週2〜3日から、週4〜7日へとさらに増加。

「遊びに行く時も、緊張したらどうしよう……と考えると腹痛。薬を飲んでも変わらず、症状が出たら、その場から一旦逃げる、耐える、休むなどしかできませんでした」

その後、とにかく手に職を……と考え、専門学校へ行くも体調は悪化し、休学。留年し、同じ学校で再スタートしたが、めまいや気持ち悪さに悩まされ、ベッドから立てない日を送ることとなった。

「自分満たし」をするようになって病気が完治

もう、打つ手がない。生きていたくない。そう心が折れた時、YouTubeでたまたま目にしたのが、神社参拝の動画。もともと神社が好きだったあんずさんは動画を見て、今までなかった考え方や視点に触れられたと感じた。精神面からも、自分を見つめ直してみたい。そう思い、電話相談を仕事にしているとあるYouTuberに連絡。それが、生き方を変えるきっかけとなった。

「それまで私は自分を責め、制限をかけ、信じなかったり貶したりしていました。自分自身との信頼関係が全然なかったんです。でも、自分を幸せにしてあげたいと思った時、ストレスを与えていたのは私自身で、解放してあげられるのも自分だけだということに気づいた。だから、固定概念やポリシー、窮屈に思うことを捨てることにしました」

そして行ったのは、目標や信念を持たずに通っていた専門学校をやめること。顔に自信がない、周りの目が気になるなどの理由で諦めていた「YouTuberになる」という夢を叶えることだった。

「YouTubeは辛い時に自由な世界を見せてくれ、楽しい時間をもたらしてくれました。動画を見ることで幸せになる人がいると自分で証明されていたので、YouTuberに憧れていましたが、その選択肢はないものと考え、やりたいことが分からないと自分に嘘をつき続けていた。だから、SOSが病気という形で出たんだと思います」

そう気づいたあんずさんは、自分を責めることや不幸だと決めつけて生きること、持っていないものやできないことばかりに目を向けることもやめた。

「それまでの私は拗ね散らかし、不幸だと思っていました。だけど、自分を不幸だと決めつけたのは私自身でした。自分自身にしてあげられていないことを誰かに求めたり、周りが変わったりするのを待つのではなく、“自分で選ぶこと”を常に意識し、生きるようになりました」

あんずさんは自己肯定感を高めるため、自分優先の生活を心がけ、「今日できたことリスト」を毎日書き、声に出して読んで自分を褒めるなどの「自分満たし」をスタート。すると、体調はどんどん回復し、長い間悩まれ続けていた過敏性腸症候群も、なんと完治したのだ。

現在はパニック障害も回復に向かっており、電車や新幹線に乗れ、車の運転もできるようになった。

視野が広くなったあんずさんは、かつての自分と同じ悩みを抱える人に届くよう、YouTubeで過敏性腸症候群であったことを告白した。

「病気というサインが出てくれなかったら、ずっと自分を信頼できなかっただろうし、言い訳をして、やりたいことや夢も見えなくなっていたはず。だから、病気を経験したことは不幸ではない。もし、あの時の自分に会えるなら、違和感を覚えた時に自分を見張る方向や努力の方向性を、色んな角度・視点から再確認しようと伝えたいです」

あんずさんのように、生き方を変えるのは勇気も時間も必要となるため、決してたやすいことではない。だが、病気という形でSOSを訴える自分の心の声に耳を傾けることは、新しい治療のヒントを見つけるきっかけになるだろう。

「自分の人生は不幸前提の視点で見ると不幸に見えていたけれど、幸せ前提の視点で見ると幸せであった」

そう語るあんずさんは新たに見つけた、声優になるという夢に向かって邁進している。

古川諭香