「大学生になったら海外留学をして、将来は英語の先生になりたいと思っています」
そんな夢について楽しそうに語る、高校3年生の小汲唯奈さん。学業に加えて、ボランティア活動やビジネスコンテストに挑戦する、明るくアクティブな女の子だ。彼女はいま、点字塾を設立に向けて奔走している。

ラップの芯くらいの視野に

唯奈さんは小学4年生の時に、網膜色素変性症と診断された。国が法律で定める指定難病である。だが、当初は自覚症状がなかった。しかし、徐々に視野が狭くなっていき、中学3年の時にはラップの芯くらいの視野になっていたという。

「黒板の板書が難しいので、先生の話から推測してノートに書いていました。音読も視野の影響でうまく読めず、教科書の文章を丸暗記して授業に臨んでいました。体育では全然ボールが取れないし、ゴミ箱を蹴っ飛ばしちゃうし。そんな状態でした」

都立高校を受験したが、視野の影響で試験時間内に問題を解くことができなかった。そこで、同時受験していた都内の盲学校へ進学することになる。

「それでも当時はなんとか活字が読めました。だから、なんで私だけ盲学校なのかと納得できませんでした」

だが、その考えは入学後すぐに変わったという。

授業で使われる文字の大きさ。板書が少ない教え方。参加保証された体育。さらに、同じ悩みを持った仲間との出会い。そして、見えづらさを抱えながらも、生き生きと学校生活を楽しむ友人。音楽活動やパラスポーツに挑戦する同級生。

「必要な配慮を受けることの大事さを痛感しました。いままでどれだけ不必要な努力をしてきたことか。そして、仲間との出会いは大きかったです。自分一人じゃなかった。自分も夢を目指して頑張ろう。そんな勇気が湧いてきました」

視覚障害を持っていても、大学進学をしたい! 唯奈さんも自分の目標に向かって前進することにした。

感じた学びの機会の少なさ

しかし、ここで大きな壁に直面する。通う盲学校のカリキュラムでは、大学進学は想定されていなかったのだ。卒業生の多くは、マッサージなどの専門的な技術が学べる学校への進学や就職がほとんど。

そこで唯奈さんは学習塾へ行くことを考えた。しかし、複数の学習塾を訪ね歩くも、「視覚障害の方に教えた前例がないので」「点字対応した教材がないので」と断られ、入塾することができなかった。独学するために購入しようとした参考書も、点字対応しているものは多くはなかった。

ある時、都内の私立高校に進学した幼なじみと進路について話していた時のこと。自分自身が直面した、視覚障害という理由で直面する学びの選択肢の少なさについて話した。

そして、視覚障害者が大学進学を目指すことができる点字塾を作りたいというアイデアを話した。すると幼なじみは共感し、ビジネスコンテストにそのプランを出してみようということになった。

点字塾設立へ前進中

その後、プランを練り直しながら、全国高校生ビジネスアイデアコンテストで特別賞を受賞。そのほかにも様々なコンテストで表彰や上位入賞を果たした。

幼なじみと「ブレイリーず」というコンビ名を決め、Instagramで視覚障害について知ってもらう発信活動もスタートした。

「テレビで障害者が取り上げられる時って悲劇のヒロインになることが多いですよね。障害者だからできないことが多いと思われます。でも、ちょっとの助けがあればできることはたくさんあります。決してかわいそうな人ではない。今は、視覚障害は私の個性だと思ってほしいと考えています」

唯奈さんは、来年4月から大学に進学する。留学プログラムが充実した国際的な大学だ。いまは通学路の歩行訓練に取り組む日々を過ごしている。

また、点字塾の実現に向けて、仲間集めを開始している。クラウドファンディングを計画中で、集めた資金で全国をまわり、講演や交流を通して協力者を募る予定だ。

「枠に囚われることなく、自分がやりたいことにどんどん挑戦していきたいです」

谷村一成