見知らぬ人が困っているとき、どのような行動ができるでしょうか。助けてあげたいと思っても、勇気のでないこともあるかもしれません。

今回紹介するのは「電車の車内で助けてもらったこと」についてのエピソードです。

イラスト:チッチ

電車内で突然浴びせられた罵声

今から5年ほど前、マリ(仮名)さんは就職活動のため、スーツで電車に乗っていました。その日は比較的志望度が高い企業への二次面接。マリさんは朝からずっと緊張していました。

マリさんは、日頃はスニーカーばかり履いていたので、ヒールには慣れていません。そのため、電車が急ブレーキをかけたときによろけてしまい、隣に立っていた中年男性にぶつかってしまったのです。

その男性は「どこ見てんだよ!」と大きい声で怒鳴り始め、関係のない容姿の批判までされてしまいました。面接を控えて緊張していたことと、やってしまったという絶望感とでいっぱいになり、人目もはばからず泣いてしまったマリさん。

すると、そばで様子を見ていた中年女性が「この子に謝らんかい!」と怒ってくれたのです。男性はその場に居づらくなったのか、次の停車駅でそそくさと降りていきました。

その後、注意をしてくれた女性が「気にしたらあかんで。就活生?がんばってね」と声をかけてくれました。マリさんは、そんな女性の行動と言葉に涙が止まりませんでした。

困っている人を助けたいと思うように

このときの出来事について、マリさんに話を聞きました。

ー助けてもらったとき、相手の女性に対してどう思いましたか?また、なんと伝えましたか?
なんて優しい方なんだろう。この女性のように勇敢で優しい大人になりたいなと強く感じました。女性に励まされたときに泣いてしまっていたので、うまくお礼を言えませんでしたが、震える声で「ありがとうございます」とだけ伝えたのは覚えています。

ー相手の方とはその後何か会話をしましたか?
お礼を言った後にすぐ私が降りる停車駅に到着したので特に会話はしていませんが、女性はずっと私の方を見ながらニコニコしてくれていたのを覚えています。

ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
たとえ知らない人だったとしても、困っている人を見たら極力助けてあげようと思うようになりました。恩返ししたのが同一人物ではなくても、優しさは巡っていくものだと思います。また、当たり前ですが誰かを傷つける言動だけは絶対にしてはいけないなとも思いました。

ーこの経験を誰かに話したことはありますか?
実母に話しました。実母も自分のことのように共感してくれました。あのとき助けてもらった女性には頭が上がりません。

誰かを助けることは簡単なことではありません。しかし、勇気をもって声を上げることで、救われる人もいるのですね。

※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。

ほ・とせなNEWS編集部