妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産といいます。早産で生まれたことでさまざまな心配をしてしまうお母さんもいるのではないでしょうか。

今回紹介するのは「NICUで出会ったお母さん」についてのエピソードです。

イラスト:23ca

自分を責めていたお母さん

ナミ(仮名)さんの次男がNICU(新生児集中治療室)に入院しているときのことです。

ナミさんはの長男は35週、次男は33週と早産で生まれてきました。そのため、子どもがNICUに入院するのは2回経験していたナミさん。次男がNICUに入院しているとき、ナミさんが面会に行くと、次男の隣の保育器にいた子のお母さんが涙を流していました。

看護師さんもしっかり話を聞いてあげていたようですが、お母さんは涙が止まらない様子。ナミさんはそのお母さんが気になり、少し耳を傾けて様子を伺っていました。

お母さんは「初産でこんなに早く生んでしまって、この子の人生はどうなるんでしょうか…。私のせいだ。ちゃんと大きくなるのか、ずっと小さいままなのか。妊娠中の何がいけなかったのでしょう…。食べ物でしょうか」など自分を責めていました。

看護師さんは「大丈夫。誰のせいでもないから」とお母さんをなだめています。するとちょうどそのとき、その子の酸素アラームが鳴りました。看護師さんが対応しなければいけなくなり、お母さんは1人になってしまいました。

ナミさんはとっさに「大丈夫ですか。わたしは長男も早産で今3歳ですけど、何にも心配なことはなく元気に育っていますよ」と声をかけました。お母さんは、涙を流しながらもナミさんの方を向き、話を聞いてくれました。

同じ境遇だからこそ

このときの出来事について、ナミさんに話を聞きました。

ーどうしてお母さんに声をかけようと思ったのでしょうか?
私も初産で長男を早産してしまった際はとても心配で、自分のことを責めていました。そのとき看護師さんに「誰も悪くないから。お母さんに早く会いたかったのよ」と言われてとても励まされた記憶がありました。また、その後早産児のサークルに入り、早産経験のあるお母さんたちと触れ合い、それぞれの出産での経験やその後の成長を聞くことで、とても心が救われました。なので、同じ境遇にある私が話をした方が、このお母さんには届くのではないかと思ったからです。

ーあなたが取った行動で、そのお母さんはどういった反応をしていましたか?
私の方を向いてくれ、私の話に耳を傾け、大きくうなずいてくれました。涙がとまることはありませんでしたが、まず私の話をしっかり聞いてくれました。そして自分の今の心配ごとをたくさん話してくれました。話していただいた心配ごとの内容自体は、本当によくわかるのでまったく否定しませんでした。しかしお母さんが自分を責めるような発言をされたときだけは否定していました。そうすると「ありがとうございます」と言って泣きながらうなずいてくれていました。

ーその後、そのお母さんはどんな様子でしたか?
その後、少し落ち着いた様子で看護師さんと再び話をしていました。そうして次の日には抱っこができるようで「楽しみにしていましょうね」と看護師さんに言われていて、笑顔も見られました。

ーご自身がした行動について、どう思いましたか?
声をかけるか迷いましたが、自分の経験から声をかけてよかったと思いました。最後はお母さんの笑顔もみられたので、やはり同じ経験をしたもの同士で声をかけあうのも大事だと思いました。

今後も同じような境遇にある人には積極的に話をしてみようと思ったというナミさん。同じ経験をした人にしかわからない気持ちもありますよね。そのお母さんにとって、ナミさんの言葉は心強かったことでしょう。

※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。

【参考文献】
日本産科婦人科学会

ほ・とせなNEWS編集部