子育てをしていると、さまざまな困難に直面することがあります。どうにかしなくてはいけないと思っても、1人で頑張るには限界があるでしょう。
今回紹介するのは「支援センターで悩むお母さんに声をかけたとき」のエピソードです。

イラスト:チッチ

ぐったりとした様子のお母さん

サナ(仮名)さんが、大きめの子育て支援センターへ行ったときのことです。サナさんの子どもは、のんびりと車のおもちゃで遊んでいました。そんな子どもの様子を見ていたサナさんは、1歳くらいの女の子とそのお母さんがセンター内の椅子に座ってぼんやりしていることに気づきました。

そのうちに、女の子がサナさんの子どものおもちゃに興味を示し一緒に遊ぶことに。しかし、女の子のお母さんはぐったりとしていて暗い表情。サナさんがお母さんに声をかけると、目に涙を浮かべて今にも泣きだしそうになりました。

サナさんは、自分のことを話してから「大変ですよね」と、相手の話を聞く姿勢を示すことに。こういう場合は、センターの職員さんの方が適任かなと思いつつも、少し話が聞けたらいいかなと思って行動に出たサナさん。

お母さんは最初は緊張していたようですが、疲れ切っていたのか、少しずつ話し出しました。

育児で困ったことについて「私のときはこうするとおさまったよ」と話したり、一緒にスマホで調べて「今聞きたいのはこんな綺麗ごとじゃない」「具体的な解決策がほしい」など言い合ったりしました。

話していくうちに楽しい雰囲気になり、小さな愚痴や困りごとをお互いに笑いながら話していたサナさんとお母さん。

子ども同士がよく遊んでいてくれたこともあり、落ち着いた雰囲気で話せ、うまく話せてよかったなとホッとしたサナさんでした。

自分を責めずにゆるく逃げる

このときの出来事について、サナさんに話を聞きました。

ーなぜサナさんはお母さんに話しかけたのでしょうか。
私も子どもが小さい頃は、本当にしんどくて泣きたいときがあったので、少しでも話を聞いて楽になるのであればいいなと思ったからです。特にそのお母さんと同様で、保育園に行き始めた頃に呼び出しや子どもの風邪が多く、職場とのバランスで心底疲れていて、土日に少しでも子どもから離れたいと思った時期もあったので、とても気持ちに共感できました。自分が苦しかったときに誰かに話を聞いてもらうことで楽になった経験があったからこそ、同じようにしたいと自然に感じたんだと思います。

ー相手の方の反応はいかがでしたか?
うちの子と遊んでいたので、女の子はあまりお母さんの様子を気にする感じはありませんでした。お母さんの方は、涙を拭いてからぽつりぽつりと話をしてくれて、仕事を再開したのに満足にできないことや、子どもの偏食が多く保育園の先生からも一言あったことなど、たくさん重なってしまった疲れを少しだけ吐き出してくれました。話していると、また涙がにじむ様子もありましたが、うちもそうだったよと話を聞きながらうなずいていると、だんだんと涙が少なくなってきました。

ーその後、そのお母さんはどんな様子でしたか?
少しだけ気恥ずかしそうな様子もみられましたが、話せて楽になったような表情も感じられました。子どもに向ける目線も柔らかくなっていたので、よかったかなと思いました。

ーご自身がした行動について、どう思いましたか?
悩んでいるときの過ごし方や泣きたいときにどうしてほしいかは人それぞれだと思いますので、少し声をかけて1人の方がよさそうなら離れました。けれど、そのときのお母さんは限界のような感じだったので、少しでも話をして息抜きになったようでよかったです。

ーこの体験を通して、何か意識していることや気持ちの変化などはありましたか?
「ママ」というのが、今の社会では本当に大変だと心の底から思いました。だからこそ、改めて助け合いたいなとも感じました。

ーこの経験を通して、同じような状況で悩む方にどのようなことを伝えたいですか?
育児をしていると、どうしてもしんどくなる時期があるので、自分を責めずにゆるく逃げてほしいと思います。逃げ道がないと、気づかないうちに自分や子どもにストレスの矛先が向かってしまうことがあります。今後の自己コントロールの練習にもなるので、上手に逃げることを試してほしいと伝えたいです。

子育てに一生懸命だからこそ、限界を超えても頑張ってしまうのでしょう。そんなときに力を抜く方法がわかれば、気持ちも楽になりそうですね。

※こちらは実際にユーザーから募集したエピソードをもとに記事化しています。

ほ・とせなNEWS編集部