「老後に2000万円の資金が必要」という金融庁の報告が、2019年に話題となりました。最近では、「2000万円では足りないのではないか」「3000万円必要」などという情報も溢れており、いくら貯蓄があれば安心して老後生活を送れるのか不安に思っている人もいるでしょう。金融エリートの女装家として波乱万丈の人生を歩んできた肉乃小路ニクヨさんに、老後資金の不安を解消するための方法をアドバイスいただきました。

 

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肉乃小路ニクヨさん肉乃小路ニクヨさん

 1:経済的な余裕があればNISAとiDeCoを併用しよう

――老後資金を準備する制度としてiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)がありますが、iDeCoはどのように活用するのがよいと思いますか。

iDeCoは掛金が全てその年の所得控除になるというメリットがあります。ただ、60歳まで資金を引き出せないのが、多くの人にとって不自由な点ですよね。今やNISAで老後資金を作れるので、相対的にiDeCoの魅力が薄れた気はします。NISAのほうが口座開設も簡単ですから、投資初心者にはNISAがおすすめですが、「NISAだけでは不安だな」と思う人は老後資金の備えとしてiDeCoも併用するのがよいのではないでしょうか。

特に自営業者やフリーランスの人などは、毎月6万8千円まで掛金を積立てられますし、所得控除で節税効果も大きい。会社員は勤務先の年金制度によって異なるので、上限額を確認してみて、使えるのであれば活用するのがよいかと思います。

2:「老後資金、いくら必要?」にとらわれすぎない

――60代で定年退職してから最低限の生活を送るには、いくらぐらい必要とお考えでしょうか。

老後資金がいくら必要かを示す平均的な数字は出ていますが、役に立たないものだと思っています。というのも、一人ひとりのライフスタイルなどによってその額は大きく異なるから。誰にでも言えることは、老後も働き続ければ貯金がなくても生きていけるということです。

「死ぬまで働き続ける」というのが持論です。私は、父方・母方が商売をやっているので、祖父母が死ぬまで働いていたんですね。サラリーマンの場合、「死んで引退」というのは難しいかもしれません。ただ、いろんな仕事があるじゃないですか。人材不足が深刻化するなかで、高齢者も重要な働き手となってくるでしょう。健康を維持しながら、死ぬまで働く覚悟を持っていれば、老後資金の不安も解消されるのではないでしょうか。もちろん何かあった時のために、お金があるに越したことはないですけど。

私は高齢者になっても、労働を通じて社会と関わり続けていきたいです。判断能力や、時代を読む力が鈍ることで、意思決定の中枢に居続けることができなくなるかもしれません。でも、どのような仕事であっても、価値があると思うんです。自分がその仕事に対してどのような意味づけをして、楽しく生きていくかが大事だと考えています。だから、腐らないで仕事し続けるマインドと、動ける体をキープしていればいいんじゃないかな。

肉乃小路ニクヨさん肉乃小路ニクヨさん

私自身、頭脳労働にこだわらず、老後働けるならどんな仕事もアリだと思っています。お掃除のような作業であっても、意味づけできる柔軟さを持っていたい。自分に与えられた人生を楽しむ気持ちさえ持っていれば、老後を悲観する必要はないと思うんですよ。どんなことでもやり方によって全部“おいしい”経験になりますし。おいしくさせるかどうかに、若い時の生き方が関わってくるのではないでしょうか。

3:ダメな自分を受け入れる

――どんな状況も楽しめる “腐らないマインド”は、どのように培われたのでしょうか。

さんざん腐ってきたのよ。でも、腐っても全くいいことがない。腐っても人生、腐らなくても人生、踊らにゃ損々(笑)。腐っていた時間があるからこそ、今の自分があるのだと思えると、腐っていた時期も愛おしく感じられますよ。

どうしたって自分から離れられないわけだから、自分を好きになるしかない。「自分のことが嫌い」っていう人は、自分に対する期待値が高いのではないでしょうか。期待値と実際の自分にギャップがあるから「こんな自分を受け入れたくない」「本当はもっと素晴らしい自分があるんだ」と思ってしまう。でも、私は歳を重ねるうちに、そういう気持ちがなくなって、ダメな自分を受け入れられるようになりましたね。

歳を取れば取るほど、表情の作り方で魅力を増すことができると思うんです。だから、鏡に向かって表情を作る訓練をすることをおすすめします。いい顔でいると、自己肯定感が上がるのではないでしょうか。社会で生きていくには、鏡を嫌ってはいけませんね。

4:「人生の経営者」マインドを持つ

――著書『元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方』に書かれている「自分は人生の経営者である」というメッセージが、お金と向き合う上でも大事だと感じました。会社員が経営者の視点を持つには、どうしたらよいでしょうか。

私は父方も母方も自営業者なので、生活と商売が密接な環境で育ちました。だから、会社員の気持ちがわからなかったんです。組織における上下関係や同僚内での競争関係が理解できず、会社員が向いていなかった気がします。でも、日本人の多くは会社員じゃないですか。だから、この先、何の仕事をするにしても、会社員の機微をわかっていないと痛い目に遭うなと思っていました。

もちろん才能のある人が専門性を活かしてやっていく方法もありますが、私には、そんなずば抜けた才能がないと自覚していました。凡人が何かを表現するためには、将来自分のお客さんになる人のことを知っておく必要があると感じたんです。そのために私は会社員をやっていました。日本の会社の実態を知るために潜入捜査している感覚で(笑)。

でも、会社員を続けているうちに、いつかは自分も経営者の視点で会社を持ちたいなと思うようになりました。なぜなら、私はゲイで子どもが残せないと思ったので。会社が子どもみたいになってくれたらいいなと。だから今後、小さいビジネスをやってみたいなと考えています。

――夜のお仕事を通じて、サラリーマンと自営業者のお金の使い方の違いを知ったと著書に書かれています。どのように違うと感じられたのでしょうか。

自営業者の場合、商談をすることが前提になりますが、飲食代を経費で落とせますよね。サラリーマンは取引先との接待でない限り経費にならない。ですから、自営業者とサラリーマンでは、自由に使えるお金の幅が違うと感じました。

収入の範囲内で貯蓄やお小遣いなどを決めて生活するサラリーマンと違って、自営業者は仕事に関わる社交を通じて、どんどん成長していけるのが面白いなと思ったんですよ。そういった気づきもあり、サラリーマンを辞めて独立し、社交性を活かしながら活動を広げていますね。

5:「自己投資」にお金を使う

――自分の成長のために、お金を使うことも大事なのですね。お金の上手な使い方について、アドバイスいただけますか。

自己投資にしっかりお金を使うことが大切です。例えば、私は、自宅だと仕事に集中できないので、コワーキングスペースを活用したり、有料メディアのサブスク会員になったりして、仕事場の環境を整えることや情報収集にお金を使っています。書籍は「(買おうかどうか)迷ったら買う」と決めています。

肉乃小路ニクヨさん。制作した自身のアクスタと。肉乃小路ニクヨさん。制作した自身のアクスタと。

昨年まで24時間営業のスポーツクラブの会員でしたが、いつでも行けるとなると「明日でいいか」と思って後回しにしちゃうんですね。だから、今年から営業時間が決まっているスポーツクラブに変えました(笑)。

食事については、炭水化物でカロリーを摂取することが最も安価ですが、なるべく野菜と肉を取るようにしていますね。一人暮らしにしては、割とお金をかけているほうだと思います。IHのクッキングヒーターを使って、夜はお鍋ばかり食べていますが。

より自分の力を発揮しやすいように環境を整えることが、自己投資なのではないでしょうか。自己投資にお金を使い、自分の価値を高めて、稼ぐ力を伸ばしていくことが、お金を好循環させることにつながると思います。

肉乃小路ニクヨさんプロフィール
経済愛好家、ニューレディー、コラムニスト。慶應義塾大学在学中の1996年より女装を開始する。並行して会社員としても勤務。主に銀行と保険会社でキャリアを積む。セクシャルマイノリティーとしての葛藤で苦しんだ青少年期とショウガール、ゲイバーのママ、会社員時代に鍛えた人間観察力を活かして、経済、お金、恋愛、ライフスタイル等を語る。2023年に初の著書『確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方 』(KADOKAWA)を発売。