自民党議員が参加する会合で性的マイノリティに差別的な内容の冊子が配布されたことに対する抗議の参加者たち=2022年7月4日撮影、東京・永田町の自民党本部前

自民党の国会議員が参加した会合で、「同性愛は精神障害、または依存症」「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではない」といった、性的マイノリティに対する差別的な内容が書かれた冊子が配られていた問題を受け、7月4日、東京都千代田区の自民党本部前で『Stand for LGBTQ+ Life』と題した抗議活動が行われた。

全国から多くの当事者やアライが参加し、レインボーフラッグなどを掲げ「差別をやめて」「いますぐ冊子を撤回して」「いつまで非論理的な考えによって、差別され続けなければならないのでしょうか」などと訴えた。

共同発起人のアンドロメダさんは抗議活動について「差別が原因で亡くなる人もいます。セクシュアリティで悩む、特に若い世代のためにも声を上げたいと思いました」、ワインさんは「いかなる差別にも加担したくないんです」とそれぞれ思いを語る。 

 

◆抗議活動の背景は?

抗議活動のきっかけとなったのは、宗教法人「神社本庁」を母体とする政治団体「神道政治連盟」や自民党の国会議員による「神道政治連盟国会議員懇談会」の6月の会合で配られた冊子。

・同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症

・同性愛は、回復治療やカウンセリングなどの手段を通じて抜け出すことができる

・LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではない。LGBTは自分自身がさまざまな面で葛藤を持っていることが多く、それが悩みとなり自殺に繋がることが考えられる

といった内容が書かれていた。

当事者や専門家からは「事実に基づかず、非論理的」「性的マイノリティへの根強い差別や偏見がにじんでいる」「差別や偏見を放置し、当事者を追いやっているのは社会の側、マジョリティの側の責任」といった指摘や声が上がり、『change.org』では、自民党に対し、冊子の内容について明確な否定を求める署名活動が行われている。

自民党に対し、冊子の内容の明確な否定を求める署名活動自民党に対し、冊子の内容の明確な否定を求める署名活動

 

◆「差別で奪われる命がある」

抗議活動を主催したアンドロメダさんは、冊子に関する記事を読んだ瞬間、憤りと混乱に包まれ、「セクシュアリティのことで悩んでいる人、特に若い世代がこれを読んだら、すごく苦しむんじゃないか」と思ったという。

アンドロメダさんはノンバイナリーで、性的指向は男性に向いているという。10代前半の頃、「おかま」などと暴言を吐かれいじめを受けた。まわりと同じように女の子を好きになれない自分自身への「おかしい」「普通じゃない」と苦しむ中で、周囲からの差別はその悩みをより強くさせた。

卒業後、母校で10代前半の子が自分と同じように、いじめに苦しみ、自殺したと聞いた。苦しくて悔しくて、胸が張り裂けそうになった。

冊子の中で、特に許せない文言があるという。「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではない」という主張だ。これに対して「今回の冊子をはじめ、社会に差別が蔓延ることで、死にたいと思う人、奪われる命が間違いなくある」と憤る。

記事を読んで、眠れなくなったといい、その日の明朝にインスタグラムに書き込んだ。

「おかしいと思う」「デモをしませんか」

抗議活動を主催したアンドロメダさん抗議活動を主催したアンドロメダさん

 

◆「いかなる差別にも、加担したくない」

その言葉に共感し、ともに発起人になったのがワインさんだ。

ワインさんは海外にルーツがあり、肌の色や身体的特徴をもとにステレオタイプな見方をされないように、攻撃的に感じられない服装をするなど「周囲に溶け込む」努力をしてきた。

子どもながらに「見た目や内面で持っているものが多数派と違うだけで、どうしてこんなにも憎悪や差別を受けるのだろう」と感じてきた。

自分自身はヘテロセクシュアルで、「自分が幼少期に受けた差別は、LGBTQの方々のものと重ね合わせてはいけないと思っています」「私には分からない思いも多いかもしれません」とした上で、こう語る。

「私はいかなる差別にも、加担したくないんです」

LGBTQ当事者ではない自分が発起人になることに悩みもあったが、人種差別抗議デモ『Black Lives Matter』が、アメリカから世界各地に広がったことに勇気をもらったことも背中を押した。

「デモは意味がないと言う人もいますが、連帯して声を上げることで、社会は変えられると信じています」

 

◆「自殺は本人のせいじゃない」「差別は人を殺す」

2人はSNSなどで抗議活動の告知をし、想像よりもはるかに多くの人から反応があり、勇気をもらったという。

関西や海外などから足を運ぶ人も多く、参加者は長蛇の列を作り、レインボーフラッグや「差別をやめろ」「いますぐ冊子を撤回しろ」と書いたプラカードを掲げ抗議の意思を示した。

アンドロメダさんとワインさんは「若い世代など、苦しんでいる人のためにも、声を上げないといけないと思いました」「冊子の内容を明確に、否定してください」 と訴えた。

 

冊子について最初に報じた、ゲイでライターの松岡宗嗣さんは、2021年の5月にも自民党本部前で『LGBTは種の保存に背く』という発言に対するデモに参加したといい、 「あれから1年。社会は大きく変わってきました。政治の領域はどうでしょうか。何も変わっていません。むしろ悪くなっているのではないでしょうか。いつまでこんなに非論理的な考えによって、私たちは差別され続けなければならないのでしょうか」と思いを語った。

LGBTの自殺率が高いのは、差別が原因ではなく、本人が抱えている悩みのせいだと書かれていたことについて、自分自身が数年前に当事者の友人を自死で亡くした経験を吐露し、こう訴えた。

「自殺は本人のせいではありません。社会に性的マイノリティに対する差別や偏見があるから、死にたいと思ってしまうほど当事者は追い込まれるんです」

「差別は人を殺すんです。差別で人は死ぬんです。ただ平等な権利を、人権を保障してください」

「どうか、もう差別はやめてください」

 

 <取材=佐藤雄(@takeruc10)、坪池順(@juntsuboike)/ハフポスト日本版>