全国に広がっている住みます芸人の笑いあふれる地域協力活動にフィーチャーした、「47都道府県エリアプロジェクト(あなたの街に“住みます”プロジェクト)」をレポートする本連載。

 今回は、「よしもと男前・ブサイク芸人ランキング 2019(漫才劇場内のランキング)」でブサイク芸人の2位に輝き、「R-1ぐらんぷり2014」や「第36回 ABCお笑いグランプリ」で決勝に進出するなど、賞レースの舞台でも活躍しているピン芸人・中山女子短期大学さんの“徳島県応援芸人”の活動をクローズアップ! 大阪府に住みながら徳島県の耕作放棄地の再生をテーマに「木頭(きとう)ゆず」の栽培や、自身が立ち上げた「トリキるプロジェクト」に力を入れて活動しています。

徳島県応援芸人の中山女子短期大学

徳島県応援芸人
中山女子短期大学

なかやまじょしたんきだいがく|1986年10月6日生まれ。徳島県徳島市出身。ピン芸人。NSC大阪校28期生。芸歴14年。2014年「R‐1ぐらんぷり」決勝進出。よしもと漫才劇場2019ブサイク芸人2位。クイズが得意で「パネルクイズアタック25」で優勝経験あり。趣味はスポーツ観戦、歴史、洋楽、早押しクイズ。特技は飲食店掛け持ちで10年以上働いたので料理が得意なのと、八百屋バイト経験があって野菜に詳しい。同期は、稲田直樹(アインシュタイン)、すゑひろがりず など。

徳島県応援芸人歴:2018年4月〜
活動拠点:徳島県那賀町(応援芸人のため、住居は大阪府)
主な活動:地域イベント各種出演、野球独立リーグ徳島インディゴソックススタジアムDJ、那賀町木頭ゆず畑耕作放棄地再生、すだち収穫体験開催、木頭ゆず・すだち収穫店舗卸販売。

TVレギュラー:「ゴジカル!」(JRT四国放送)

X(旧Twitter):@joshinaka
Instagram:nakayama.joshi.td
YouTube:中山パワフル女子短期大学

【徳島県】

徳島県は四国地方の東部に位置していて、とにかく水辺が多い印象です。全国的に有名な鳴門(なると)の渦潮、大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)などの景勝地に加えて、徳島市内にも吉野川が流れ、繁華街にも水辺があり市民の憩いの場になっています。僕は徳島市出身で、子どもの頃には近所に遊べる川や海水浴場があって、夏になると大自然に遊びに出かけていたものです。近年では海辺はサーフスポット、釣りのポイントとして、吉野川の上流ではラフティングの世界大会が開かれるなど、水辺を活かしたレジャーが楽しめる県となりました。また、徳島ラーメンは個人的には、もっと主流のご当地ラーメンとして日本中に知られるべき存在だと思っております」(中山女子短期大学さん。以下、省略)

大阪と徳島を行き来する応援芸人の生活

中山女子短期大学さんは、ほかの住みます芸人さんとは少し違い、大阪に住みながら地元徳島へ行き来し、お仕事をされているとのこと。つまり、徳島県を応援する芸人=徳島県応援芸人として活動しています。早速ですが、お話を聞いてみました。

芸人を志した当初から、地元に貢献したいという思いは強かったので、前任者が退任するタイミングで大阪に住みながらにはなりますが、住みます芸人に手を挙げさしてもらいました」。地元への強い愛情と貢献心が感じられます。

地方の子どもたちには、初めて触れ合う芸人になるということも多いので子どもたちにしっかり楽しんでもらえるようにしています。また大阪と行き来しているという特性を活かして関西圏の皆さんに徳島の良さを伝え興味を持っていただくことを大事にしています

| 徳島での特徴的なお仕事

 具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

大阪で芸人として活動しながら、ネタでも全国レベルで勝負できるように大阪で研鑽を積んでいます。その一方で、徳島での活動にも力を入れており、地元の魅力を発信することに努めています。

 僕の徳島での特徴的なお仕事は2つで野球独立リーグのスタジアムDJすだちとゆずを収穫し大阪に出荷していることです

| 野球独立リーグの熱い戦いをアナウンスで盛り上げる

 まず、野球独立リーグのスタジアムDJとしてのお仕事について詳しく伺いました。

野球の独立リーグ『徳島インディゴソックス』のスタジアムDJとして、試合中のアナウンスと盛り上げを担当させていただいてます。独立リーグ、特に徳島が属する四国アイランドリーグプラスはNPB、いわゆる“プロ野球選手”を目指す選手が集まり、研鑽を積むリーグで、スカウトの目に留まれば、秋のドラフト指名のチャンスを得る仕組みです。様々な境遇の選手が集まり、満足な環境とはいえない地方球場での熱い戦いは、ほかのカテゴリーにはない独特の魅力があります

 スタジアムDJを始めた初年度から衝撃的な選手たちとの出会いがあったそうです。

中卒で土木作業員として働きながらプロ野球選手を夢見た選手や、各年代で日本代表を経験したがドラフト指名を逃し、最後のチャンスを求めて来た選手、高校野球のスターなのに大学を中退し一度野球を諦めかけた“消えた天才”、ミャンマー人初のプロ野球選手、劇団四季の俳優として活動していた選手まで多様なバックグラウンドを持つ選手が徳島に集い、一つのボールを追う姿は心にブッ刺さりました。

 徳島球団は11年連続ドラフト指名の実績を誇り、昨年は史上最多の6人が指名され、独立リーグ最高の2位指名選手も輩出しました。地方での球団の運営は苦労が絶えないでしょうが、スタッフが選手の成長を信じて取り組んでいる結果が、このような実績に繋がっているのでしょう」

独立リーグ「徳島インディゴソックス」のスタジアムDJとして子どもたちに野球の素晴らしさを伝えている徳島県応援芸人の中山女子短期大学さん

「球場にはNPBのような演出の派手さもないので、僕の役目は球場に来た少年少女に楽しんでもらえるよう声で試合を盛り上げることです。

 子どものなかには、初めての野球観戦になるという子も多いので、野球場の原風景として心に残る1試合をなんとか盛り上げられるように心がけているんですが、職業病なのか、最近では、プロ野球中継を見ていても、アナウンスや球場イベントに目が向くようになりました(笑)。

 僕も幼い頃野球選手を夢見た少年の1人として、仕事の枠を超えた体験となっています」と、熱く語ってくれました。

| 柑橘王国徳島:特産品のすだちとゆずの収穫と出荷

 そのほかにも、すだちとゆずに関するお仕事もされている中山女子短期大学さん。すだちもゆずも栽培の担い手不足で様々な問題を抱えており、それを解消すべく奮闘中とのこと。そして、大きく前進するために事業化に向けてスタートしたそうです。

徳島は、全国9割以上のシェアを誇る“すだち”、全国2位の収穫量である“ゆず”が栽培されている『酸っぱい柑橘王国』です。しかし、ほかの地方と同様、担い手不足でどちらの作物とも様々な問題を抱えているんですよね……。

 僕がお手伝いしている那賀町(なかちょう)で栽培されるブランドゆず『木頭(きとう)ゆず』も担い手不足は深刻で、耕作放棄地が点在する状況……。かつて農家さんがきれいに植えた樹は、たくましく秋には黄金の実をつけますが、収穫や管理ができる人は年々減っている状態です……

徳島県応援芸人の中山女子短期大学さんが かつて耕作放棄地だった木頭ゆず畑を再生させ 収穫の時を迎えました

| 農業と若者をつなぐ

最初は番組の企画として“ちょっと手伝い”くらいの軽い気持ちで、那賀町の木頭地区に行って収穫の作業などを体験していたんですが、自分がもぎ取った穫れたてのゆずの美味しさに惹かれ、『この美味しさは、もっと伝え広げないといけない! 耕作放棄地をなんとか再生させて、担い手を絶やさず、逆に増やしていきたい!』って思いまして、木頭ゆずのPRや地域の問題解決を継続して事業化して対応していくように頑張っています

大阪と徳島市内の往復は慣れましたが、ゆず畑のある木頭地区は山道で大阪から車で5時間ほどかかるので苦労しています。それでも、大阪の芸人さんや飲食店の皆さんにもすだちやゆずの魅力がダイレクトに伝わるようになったので苦労して往復している甲斐はあるのかなと思います

| 耕作放棄地の再生と若手農家の支援

 具体的には、那賀町でどのような取り組みに励んでいるのでしょうか?

耕作放棄地の再生に取り組んでいる若手農家さんのサポートができるよう、年に4、5度ほど木頭に赴き、畑の手入れや収穫を行い、大阪に住んでいる強みを活かして、繋がりのある飲食店さんに収穫したゆずを直送するという活動を行って利益を得ております。ゆずの果汁やジャムは通年ありますが、採れたての“生の果実”を丸ごと使うことは限られた期間しかできないので、まる絞りでチューハイに入れたり、お店によっては皮だけをチューハイに浮かべて絶妙なゆずの風味を楽しんでもらうなど、生の美味しさを堪能できる様々なメニューに使っていただき大変好評をいただいております

徳島県応援芸人の中山女子短期大学さんは深刻な耕作放棄地問題に奮闘中。写真右から中山女子短期大学さん、木頭ゆず農家の立川さん、徳島県住みます芸人のみっとしーさん。
写真右から中山女子短期大学さん、木頭ゆず農家の立川さん、徳島県住みます芸人のみっとしーさん。

徳島の柑橘を全国へ

| 「トリキるプロジェクト」の発足と未来への展望

 徳島の柑橘を全国へと羽ばたかせるため、中山女子短期大学さんはその一歩となる「トリキるプロジェクト」を始動させました。このプロジェクトは、徳島の豊かな土地で育った柑橘を全国に広めるという壮大なビジョンを持っています。一体、どういったプロジェクトなんでしょうか。

ゆず同様、すだちも担い手不足、さらに収穫時期の猛暑(露地すだちの収穫は8月中頃から9月末ごろまで)で、農家さん一人当たりにかかる負担が年々増している状態です。

 こちらはゆずと同じように収穫のお手伝いと出荷をしていますが、それに加え、畑が徳島の中心部から比較的近いことを活かし、吉本の芸人とお客さんを呼んで収穫体験を実施しております

徳島県応援芸人の中山女子短期大学さんが取り組んでいる「トリキるプロジェクト」でのすだち収穫体験の様子

県外からお越しくださる方や、芸人目当てで来たけど収穫が楽しかったので個人的に農家さんと連絡をとってまた別の日に収穫に来てくださる方などもいて、今後続けていくのが楽しみなコンテンツになりました。

 また、この一連の柑橘のプロジェクトを『トリキるプロジェクト』と名づけ、継続して徳島の柑橘の魅力を発信していけるよう張り切って取り組んでいます。フードロスなどの観点から、すべての果実を穫りきって、しっかり活用したいという願いも含まれています。

 徳島県応援芸人ですが、たとえ県外にいても、ふるさとと関わりを持ち、事業をおこしていけるという前例を作って、僕よりビジネスセンスに溢れた方が後に続いてくれれば、徳島にしかない魅力も持続していけるのかなと思います。

 すだち、ゆずのトリキるプロジェクトを通して、農業の困りごと解決のために、興味がある若者をつなげていきたいですね!

 また、芸人であるからには全国区で活躍してこそ、徳島の皆さんにも喜んでいただけると思うので、R−1ぐらんぷりなどでも結果を残せるように頑張っていきます!

農業と若者をつなぐ:未来への展望

すだち、ゆずのトリキるプロジェクトを通して、農業の担い手となる若者を増やしていきたいという中山女子短期大学さん。芸人としても全国で勝って、徳島の皆さんに喜んでほしいと考えており、R-1ぐらんぷりなどの全国大会に向けてネタづくりに励んでいます


 徳島県応援芸人として、地元への貢献を胸高らかに掲げる中山女子短期大学さん。これからも、地元徳島の魅力を伝え、地元の人々に喜んでいただけるような活動を続けていくことでしょう。挑戦はこれからも続きます。今後の展開が気になります。