※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!</B>
残暑が厳しいですね…。
夏の間の疲れが溜まっているこのタイミングこそバテてしまわないようスタミナのつく料理を食べて凌ぎたいところです。たとえば…スッポンとか!


というわけで今日は『あつ森』にも登場する生き物、「スッポン」についてお話します。

ご存知の方も多いでしょうが、スッポンは川や池に棲むカメの一種で、世界の温帯〜熱帯にかけて様々な種が分布しています。
日本には本州、四国、九州にニホンスッポンという種が分布しており、古くから食用に珍重されてきました(南西諸島にいるものは本土や大陸、台湾などから食用に持ち込まれたものの、養殖場から逃げ出し野生化したもの)。

▲釣り上げられたスッポン。あつ森を実写化するとこんな感じになるんですなぁ。
ただし、その他のカメとは身体のつくりが少々異なります。
まずなんと言っても甲羅!ふつうのカメなら背中もお腹もカチカチの甲羅に覆われていますが、スッポンのそれは触れると表面はプニプニ柔らかい。
板状に広がった肋骨を皮膚でコーティングしているわけです。

お腹側の甲羅(腹甲)はカバーされている面積も小さく、前後の脚と尻尾はちゃんと引っ込めることもできません。

▲スッポンのおなか。真っ白で、腰から後ろには甲羅がない。
そのため防御力に関しては一段落ちてしまうのですが、代わりに柔軟性と素早さに関しては他のカメより一枚上手です。特に!長〜く伸びる首の稼働範囲は要注意。

エサとなる小動物を襲う際、あるいは外敵に襲われた場合にはヘビが飛びかかるように素早く長く、首を伸ばしてターゲットに噛みつきます。
顎の力が強く、手などを噛まれると相当痛い目を見るので現実世界で捕まえる際は注意が必要です。

▲スッポンをはじめカメの仲間は爬虫類で唯一歯を持たない。歯のように見える白いものはケラチンでできたクチバシ!
スッポンにまつわる説話として「一度噛みつくと雷が鳴るまで離してくれない!」というものがあります。これは攻撃対象に対するスッポンの執念深さを表したもので、たしか食らいつかれるとその後の対処に難儀してしまうものです。

一度、実際のところはいったいどれくらいの時間がかかるものか、わざと自分の手を噛ませてみたことがあります。

▲超痛いので真似しないでください
結果、スッポンごと手を水に浸した状態で、ジッと動かず耐えていればおよそ5〜10分程度で開放してれることが判明しました。
彼らは僕たちと同じ肺呼吸ですから、息が苦しくなってしまうのかもしれません。

ただし、陸上では手を動かす、咳をする、風が吹くなどというちょっとした刺激が加わるだけで、そのたびにスッポンが驚き、顎を噛みしめ直すためいつまで経っても開放してもらえなかったりもします。重々注意しましょう。


ところで、スッポンは上質なダシが取れることから高級な食材として盛んに取引されています。しかし近年では生息環境の消失や乱獲により全国的にその数を減らしつつあります。2016年には国際自然保護連合によって絶滅危惧種にも指定されてしまいました。
そんな背景もあり、近年では食用に供されるスッポンのほとんどが養殖モノになりつつあります。

▲スッポン鍋、おいしいですよねぇ……。
なお、スッポンは他の爬虫類と同じく自力で体温調節ができない変温動物です。
そのため寒くなると体が冷えて動きが鈍くなり、冬の訪れとともに川底の砂泥に潜って冬眠に入ります。
この冬眠しているスッポンを「鋤簾(じょれん)」という大きな熊手のような道具を使って掘り出す漁法も存在します。
日本人のスッポンにかける熱意はつくづく凄まじいものですね。

ちなみに『あつ森』の北半球におけるスッポン出現期は8,9月のみなのだとか。ということはチャンスはあとわずか!
まだ捕まえていない人は急ぎましょう!

『あつ森』博物誌バックナンバー

■著者紹介:平坂寛
Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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