人気VTuber〜バーチャルタレント・渋谷ハルさん主催の『Apex Legends』コミュニティ大会「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS Season5」が4月15日に開催されることになり、3月13日に出場チームが発表され、各チームともそれぞれのペースで練習をスタートしはじめています。

約1年ぶりとなる大型大会の復活ということもあり、出場者・リスナーともに並々ならぬ気持ちで活動・視聴している方も多いでしょう。

「バーチャルタレント名鑑」を冠している本連載では、出場チーム発表から10日ほど経過したなかで、出場チームらがどのように動いているのか?をザックリと追いかけつつ、注目ポイントや現段階で知っておくべきことに触れていきます。

まず、今回の使用されるマップは「ワールズエッジ」であり、これまでV最協に限らず、多くの『Apex Legends』コミュニティ大会で使用されてきたなじみ深いマップとあって、『Apex Legends』をあまりプレイしていなくても「見慣れた風景」のように感じるリスナーも多いかもしれません。

ですが、1年ほど前に開催されたころから『Apex Legends』も大きな仕様変更を重ねてきており、プレイヤーのみならず視聴者もまたこの点を知っておくべきでしょう。既にプレイしている方には当たり前……かもしれませんが、大きな変化をまとめてみます。


■レジェンドクラスが大幅変更・新たなクラスパークが加わった
これまで選択できたレジェンドをクラス別に分類し、新たなクラスパークが付与されました。これまでの固有アビリティに加えて使用でき、全キャラクターに関わる大きな変化ポイントです。

アサルト

専用の武器サプライボックスを開けられ、武器に合うアタッチメントが入っている
1スタック分の弾薬所持数が大幅に増加
対象レジェンドはバンガロール、レヴナント、ヒューズ、アッシュ、マッドマギー


リコン

改良型調査ビーコンをスキャンすると、周囲にいる敵の位置が30秒表示される。
対象レジェンドはブラッドハウンド、クリプト、シア、ヴァンテージ


スカーミッシャー

遠くにあるケアパッケージを発見でき、開封前から中に入っている武器がわかる。
対象レジェンドはパスファインダー、レイス、ミラージュ、オクタン、ホライゾン、ヴァルキリー


コントロール

リングコンソールをスキャンし、次のリングの場所を特定する。
対象レジェンドはコースティック、ワットソン、ランパート、カタリスト


サポート

拡張サプライボックスの拡張部分を開封できる。
レプリケーターで味方のバナーをクラフトでき、回収期限切れでも関係なくバナーを回収・蘇生することが可能
対象レジェンドはライフライン、ジブラルタル、ローバ、ニューキャッスル



プレイしている方ならお分かりのように、これまで調査ビーコンを読めていたキャラが外されていたり、味方バナーをクラフトして蘇生できたり、そもそも持てる弾薬数が大幅に増えたりと、プレイの根幹を担っていた部分に大きく変化がありました。

■新武器「ネメシス」が衝撃的なほど強い
エネルギーアモのアサルト武器として「大狂宴」から実装された新武器ネメシス。搭載初日から多くのストリーマーやVTuberが口々に「こいつはヤバイ」「すぐにナーフされる」というほどの圧倒的な力を持っています。


4連バースト射撃ながら「射撃するたびに少しずつ速くなる」という異色な武器で、さらに反動が他の銃に比べてコントロールしやすくて抑えやすい。弾速・弾道もかなり遠くまで真っすぐに飛び、おまけに1発当たりのダメージもかなり高め……なんなんだこの強力すぎる武器は!

この影響もあって、ここひと月ほどは新武器ネメシスが猛威を振るっている状態となっており、ランクバトルでは会う相手会う相手全員がネメシスを持っていた!なんてことも。同じく大きな調整があったライトアモ武器「R-99」とともに一緒に使うプレイヤーが増加しており、いわゆる「環境武器」とまで言われています。

「使用キャラの大幅変化」「環境武器の登場」という大きな変化が見られるなかで、新シーズン「大狂宴」初日にはSteam同時接続が61万人突破し、なんと過去最高記録を更新しました。

SteamDBのチャートを見てみると、瞬間の盛り上がりだけでなくその後も平日・休日関わらずピーク時には50万人前後のプレイヤーがプレイしているのが分かります。あくまでSteam同時接続に限ってみてみれば、『Apex Legends』は一時期の人気を取り戻したといえるほどに賑わっている状態です。

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『Apex Legends』とVTuberとの距離感 どのような変化があったのか?
ここまでは『Apex Legends』のゲームに関する大きな変化についてまとめてきましたが、ここからはそれをプレイするVTuber〜バーチャルタレントの視点から、『Apex Legends』との距離感・関係性について書いていきます。

「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS」が始めて開催されたのが2020年8月2日。2020年8月29日には「Crazy Raccoon Cup Apex Legends」が開催され、2つの大会はその後に大きな影響を与えていきました。

人気タイトルに人気ストリーマーが集まるという構造のため、2020年夏から1年ほどは多くのVTuberが配信するようになっています。大小さまざまなカジュアル大会が開催されており、現在でも同様の企画大会が継続的に開催されている状態です。

コロナ禍のなかでゲーム配信に励んでいたVTuberらにとって、『Apex Legends』をプレイするかどうかは人気を獲得できるかという点において一つの分かれ目になったといっても過言ではないでしょう。

特に「ぶいすぽっ!」「にじさんじ」に所属するメンバーらは、ほとんど毎日のように『Apex Legends』をプレイしていた時期があったほどです。

ですが、2022年に入ってから大会の数が減ったわけではないものの、配信でプレイするVTuberが徐々に減っていくようになります。

VTuber側に立ってみましょう。多種多彩にあるゲームのなかから、数年に渡って1つのゲームをプレイしつづければ、一般の視聴者からはいわゆる「専門VTuber」として認識されやすくなりまう。

しかも『Apex Legends』のみをプレイしてゲームファンはついたとしても、その他の活動でついてきてくれるとは限りません。事実、他ゲームをプレイしたり歌活動などに注力していると、心無いファンから「そんなことをするなら『Apex Legends』をやってくれ」とメッセージが届いたという声も少なくないほどです。

加えて、自分自身の興味・関心がその他のゲームやFPSゲームへと移っていくのも当然のこと。『VALORANT』『オーバーウォッチ2』などの注目作がリリースされ、日本チームが世界大会で活躍して大きな盛り上がりを見せるのと同じくして、多くのVTuberがさまざまなゲームタイトルをプレイするようになっていきました。

このような思惑や活動方針などの影響もあり、『Apex Legends』はVTuberのゲーム配信から存在感が薄くなっていったように見えます。

そんな折に開催されることになった「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS Season5」
「ド定番ゲームとしてプレイ人口がある」「多くの視聴者にとって見慣れていて安心感ある」「多くのひとを魅了したゲーム性」といった部分に加えて、先に述べたような大幅なアップデートもあり、同ゲームから長期間離れてしまっていた出場者・リスナーにとっては、「見慣れているけど何かちがう!」とかなり新鮮に見えるかもしれません。



気になる出場者は?『Apex Legends』人気復活の嚆矢となるか?
最後に本大会の出場者・大会にスポット当てていきましょう。今大会で特に多く出場しているのは「ぶいすぽっ!」「にじさんじ」の面々です。

改めて両グループの参加者を一覧にしてみました。

「ぶいすぽっ!」参加メンバー
猫汰つな
八雲べに
英リサ
一ノ瀬うるは
小森めと
花芽なずな
空澄セナ
橘ひなの
胡桃のあ
兎咲ミミ
紫宮るな
神成きゅぴ
藍沢エマ
花芽すみれ

「にじさんじ」参加メンバー
星川サラ
本間ひまわり
椎名唯華
風楽奏斗
魔界ノりりむ
イブラヒム
アルス・アルマル
渡会雲雀
卯月コウ
樋口楓
える
セレン龍月(NIJISANJI EN所属)
勇気ちひろ

ローレン・イロアス
夕陽リリ
ハユン
ヤン・ナリ
雪城眞尋
瀬戸美夜子
ラトナ・プティ
奈羅花
成瀬鳴
葛葉
エクス・アルビオ
不破湊

「ぶいすぽっ!」からは14名、「にじさんじ」からは海外事務所に参加している方も含めて26名が参加、計60名の出場者の過半数を締める40名ものメンバーが参加しており、両事務所を合わせた人数は過去最多となりました。

ですが先にも述べたように、『Apex Legends』をほとんどプレイしなくなり、『VALORANT』『オーバーウォッチ2』などのチーム対戦型シューターに注力したり、そもそもFPSそのものをプレイしなくなった出場者も少なくありません。

主催を務める渋谷ハルさんは配信の中で、「いちどやり込んで高いランクまでいったひとなら、ふたたびやりはじめても力を取り戻すまで時間がかからない」といったお話しをされていました。

そこに今回の大改編が加わり、現在の環境に慣れなければいけなくなります。「元来あった実力のうち、どのくらい取り戻せるか?」は人それぞれ、もしかすれば大会までに思ったようなプレイングができないかもしれない…そんな不安感も作用してか、メンバー公開当日から早速メンバーが集まり、出場者は連日のようにプレイしている状況です。

弊メディアでもピックアップしたにじさんじ・葛葉さん、エクス・アルビオさん、不破湊さんによるチーム「AQF Burn」は、渋谷さんが出場メンバー発表した3月13日からさっそく練習を開始。


実は今年1月11日のアップデートで、『Apex Legends』プレイヤーの誰もがカスタムマッチ(プライベートマッチ)を作成することができるようになり、無理にランクマッチに行くことや公式による練習カスタムを待たずとも、自前でカスタムマッチを組むことができるようになりました。(こちらもまた大改変ともいえるでしょう)

これまでカスタムマッチといえば一部の権限を持つ者によるスペシャルマッチ感がありましたが、この変更によって大会出場チームが気軽にメンバー同士で練習できるようになりました。大会用に運営しているDiscordを通じて大会出場者からの参加を募り、余った枠にリスナーを入れることで60名でのマッチングをしています。

出場者はV最協への練習をこなすことができつつ、リスナーにとっては「憧れのVTuberらが多数いるなかでゲームプレイできる」という夢のような空間に参加できる、そんな状況をとても簡単に生みだせるようになったのです。

13日からAQFメンバーが連日のようにカスタムを開いていましたが、AQF Burnのメンバーがカスタムを開かないと気づくと、別のチームがカスタムマッチを代わりに開いています。

夜の20時か21時から始まって5〜6時間ほど、日によっては10時間近くカスタムマッチが開かれ続けていることもあるほど。まさに「連日連夜のカスタム練習(お祭り状態)」が続いています。

この仕様変更と運用により、「リスナー」がより深く参加することを可能にし、「最も協力」とかいて最協(さいきょう)とする大会コンセプトがより体現されました。「配信を見る」「応援コメントを書く」といったリスナー側の応援に、「同じ空間・カスタムで戦うこと」という形が花開いたともいえます。

参加するリスナーも『Apex Legends』を長くプレイしている者が多く、しかもレベルが高いことも盛り上がりの一因といえるでしょう。「Apex Legends Global Series」などの国際大会を見ていて実践するような猛者もいるので、現在流行している編成「シア&カタリスト」でのプレイングで出場者らを圧倒する場面も散見されます。

この1年ほどで登場した新キャラクターへの対応に苦戦する大会出場メンバーもチラホラとおり、あらゆる意味で「慣れる」タームとなっていたのがここまでの約10日間でした。

「チームの動きを固めたい」という狙いもありつつ、先に述べたように「ブランクを埋める」「ネメシスやR-99といった環境武器に慣れる」といった部分。なにより素晴らしい戦いをリスナーやファンに見せたいという気持ちが、ここまでの盛り上がりを支えているといえます。

20チーム中かなり多くのチームがカスタムマッチに参加・チーム練習をしていますが、まだ本格的に始動していないチームがいるのも確か。20チーム分のドラマがすでに描かれ始めている今大会、そのエンディングにはどんな風景が待っているでしょうか?

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