eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】。前回の連載では、神奈川県横須賀市が2019年12月にスタートしたeスポーツ事業「Yokosuka e-Sports Project」にフォーカス。この事業は、eスポーツに関わる人々による地域コミュニティの活性化や新たな文化が定着することを目指すもので、多くのeスポーツ関連事業者やプロチームなどと連携しながら、部活動の支援や独自大会の開催などに取り組んでいます。そんな先進的な取組みを推進する神奈川県横須賀市観光課より、小山田絵里子氏、関山篤氏のおふたりにお話を伺いました。

第43回目となる今回は、今年6月でリリースから8年を迎える『シャドウバース(Shadowverse)』を運営するCygames のeスポーツ室 マネージャー 川上尚樹氏(以下:川上)へインタビューを実施。6年目に突入するCygames自らが主催となり開催している唯一の学生リーグ『Shadowverse University League』(以下:大学生リーグ)の、このタイミングでのルール変更に踏み切った狙いや今後のeスポーツの展開、Cygamesが描く学生とeスポーツの在り方について、その裏側を伺いました。

[インタビュアー:森 元行]

Shadowverse University League 特設サイト【シャドバ大学生リーグ】|Cygamesーー川上さんの自己紹介をお願いします

川上Cygamesでeスポーツの統括をしています。2017 年にCygamesに入社し、当時はテレビ番組の制作やRAGEさんと一緒に運営している『シャドウバース』のプロリーグ、世界大会の企画・運営などの担当をしていました。現在は統括という立場でいろいろな案件を見ながら、現場の皆さんと一緒に企画や大会を進めています。

ーー2017年からeスポーツに携わっているとのことですがどのような変化を感じますか

川上やはり一番変化があったのは、コロナが挟まったタイミングだと感じています。『シャドウバース』はオフラインというものがベースにあって、RAGEも関東のみならず関西でも開催し、地方での大会やイベントも数多く開催されていました。毎回、プレイヤーのみなさまがそこに集まって、終わったらオフ会を楽しんで帰る。そういったオフラインイベントを軸にずっと展開していたのですが、コロナになってからオンラインの需要が一気に高まって、今はオンラインとオフラインのハイブリッドで開催をしていく形がスタンダードになったかなと感じています。コミュニティの場としてのオフラインも求められている一方で、単純にイベントだけを開催するのではなく、オンラインでもうまくユーザーさん同士を繋いでいくという部分の施策も重要になってきています。

ーー『シャドウバース』のプレイヤーの属性の変化は感じますか

川上2017年の当時だと学生くらいの年齢層が一番のボリュームゾーンだったという印象で、そこから8年経過しているというところで、その人たちが社会人になっていて20代前半から25歳前後くらいまでのユーザーさんが多いです。ただ、まだまだ新しいユーザーも遊んでくれていて学生さんたちもどんどん新規で入ってきてくれています。

ーー2023年に本連載でもインタビューをした『Shadowverse University League』。 大学生リーグの実施の経緯を教えてください

川上『シャドウバース』は昔からカテゴライズした大会を多く開催していました。一番古い大会でいくと、2017 年に開催した高校生向けの大会(全国シャドバ甲子園)がありました。その後、女性限定の「クイーンズカップ」などの大会も開催していたのですが、その中でも当時のボリュームゾーンのユーザーであった大学生のみなさまから「大学生向けの大会を開催してほしい」という要望を多く頂いていました。

弊社としても大学生のコミュニティを活性化できるようなきっかけを作ってあげたいと考えていたときで、「どういう形が一番ベストなのか」という部分を時間をかけて調査をした結果「やはり大学生向けのリーグがあった方がいいよね」という形になり、2019年に第1回目の大学生リーグをスタートしました。

ーー第1回目から大会の運営に学生さんも一緒に加わっていたのですか

川上最初はCygamesが主体で開催をしました。その後「大学生リーグ広報部」というものを作り、大学生の方にも実際に運営に入ってもらい、学生視点で意見をしてもらいました。「大学生間でもっと盛り上げたいよね」という学生さんたちの声もあったので、当初はいきなり運営に入るというよりは広報活動的な部分から入ってもらい、PRや大学生リーグの盛り上げの方法を考えてもらっていました。「広報部」(現、学生実行委員会)のみなさまは日々勉学や学生生活などで本当に忙しい中、運営に入ってくれていて且つすごく高いモチベーションを持って活動してくれています。我々も一緒にやっていて刺激になる部分や学ぶべき部分もとても多いです。

ーー大学生リーグの発表や開催した際の反響は

川上やはり大学生の方々からすごく要望が強かったので、発表した時は大学生ユーザーの方々はとても喜んでくれていました。

また当時の大会は個人戦がメインだったのですが、大学生リーグでは「5 vs 5の勝ち抜けルール」という特殊なルールを採用しました。このルールを適用した際に「どう盛り上がっていくのだろう…」と想像ができない部分もあったのですが、実際にリーグが始まると「とても学生らしいルールだな」と感じました。自分が負け続けてしまうと他の4人が勝っていても結局最後負けてしまうというルールのため、選手たちにとってはすごくプレッシャーのかかるルールではあるのですが、チームが勝った時に全員で泣いて喜んでいる姿などは、個人戦がメインだった『シャドウバース』の大会に新しい風を吹かせてくれました。他の大会とも差別化して、ひとつのコンテンツとして大会を見ているユーザーさんにも楽しめる大会になっていると思います。

当時は、ゲームメーカーが大学生だけのために主催をして大会の運用も含めてまるっとやっているeスポーツリーグの学生リーグという事例はなかなか無かったので、一部の学生さんからは「自分たちのためにこれだけの環境を用意してくれてありがとうございます」という声も頂きました。「大学でなかなか友達ができなかったけれど、シャドウバースと大学生リーグがきっかけで友達ができました」や「自分でサークルを立ち上げて活動できるようになりました」など、いろいろな良い声を頂くことができ、とても嬉しかったです。

ーー大学生リーグの現在の参画数、参加人数は

川上通年でシーズンを合わせると100チームは超えていて、500人以上は毎回参加して頂いています。

週末の試合に向けてサークルメンバーみんなで練習をできるように我々も試合スケジュールを上手く調整できるように心がけています。当然その間にRAGEなどの他の大会も入ってくるので、そことは被らないように日程を外したり、ゲームのアップデートがあるタイミングは避けたり、ということもあるのですが、頻繁に試合ができるような形にはしていて、継続的にサークルやチームで『シャドウバース』に触ってもらえるような環境作りを心掛けています。年に一度の大会だけだと「そのタイミングだけ集まればいいや」と思うのですが、年間を通して試合があるのであれば、メンバーが継続的に集まってくれるのかな、と。その流れから「じゃあRAGEも一緒に行こう!」とか「他の大会も一緒に出よう」みたいな流れになっていくので、大学生リーグを軸に一つのコミュニケーションが生まれて、そこからいろいろな繋がりがついてくる、というのが理想ではあります。

ーー今シーズンから「5 vs 5」から「3 vs 3」にルールが変更されます。その意図は

川上なぜ「5 vs 5」から「3 vs 3」に変更したかという部分なのですが、大学生たちにおけるeスポーツサークルの考え方や関わり方がすごく変わってきたという部分が大きいと考えています。

私自身も大学生の時、一緒に集まって遊ぶ、何か活動をするということをサークルに求めていましたし、軸にありました。しかし今では、コロナ禍のピークから比べるとだいぶオフラインも増えてきましたが、オンラインでの関わり(ネット上やZOOMなどのビデオでの関わり)も学生間の繋がりというところでは重要なものになってきています。そもそも同じ学校の中だけで完結する必要が無くなりましたし、いろいろな人たちと繋がりながら一緒にサークル活動を行っていくという形が増えたかなと。その上で、同じ大学のメンバーで5人という数字自体が参加のハードルになるのかなと思ったので、3人という形に変更しました。

他の『シャドウバース』公式大会もチーム戦は基本的には3人チームが前提としてありますので、この形にすれば他のチーム戦大会なども出やすいのかな?と思っていたりします。「サークルに6人いるけれど、5人しかでれない…」という状況だったチームも同じサークルで2つのチームを作ることができるようになりますし、「5人だったところをあと1人サークルに誘えればチームを作れる!」といったように出場の機会も増やすことができると考えています。サークル間での活動がさらに滑らかになるといいなと。

ーー参加するチーム数や人数は増える可能性が高そうですね。実際の反響はどうですかね?

川上「参加しやすくなった」という声が一番強いと感じています。ただ、これからいろいろ反応があるかなとは思っているので、この時点でははっきりとは分かりません。5人チーム制の良い所もすごくあったと思いますし、3人チーム制にしたことでの良い所、悪い所も出てくるかなと思っています。我々も初めてこういう形を取らせて頂くので、一度この形で実施をして、必要に応じてルール変更等は検討していきたいです。

ーー3人制になることでデッキの構成などは変わりそうですか

川上デッキの考え方は変わってくると考えています。デッキ5つだと、強いデッキに対してメタ(環境)デッキが刺さったりすることがあるのですが、デッキ3つだと持ち込んだデッキが相手のデッキに刺さらなかった場合、他のデッキに勝てずに残ってしまう可能性も強くなってきますので、なかなかメタが張れなかったりするかもしれない。その時々の環境次第では、デッキの選び方をかなり慎重に選ばないと他のデッキでサポートすることがなかなかしづらくなってくると思います。シンプルに使いやすいデッキや自分の得意デッキ、その環境におけるベスト3のデッキを使う、といった側面が今までよりも少し強くなるかもしれないなと。間違いなく5つデッキが使えたときと3つしか使えないときでは、戦略やチームの考え方は変わると思います。リーグのルールも新しくなったので、初めての学生さんたちにも参加してほしいなと思いますし、これまで人数が足りなくて出たくても出られなかった人たちにも、この機会にぜひチャレンジしてほしいなと思います。我々としては一人でも多くの学生さんに参加してもらえるのが一番嬉しいので。参加してもらう以上は、やっぱり本当に楽しいリーグにしたいなと考えています。

ーー大学生リーグが目指している姿を教えてください

川上大学リーグを立ち上げたのは、ただ大会を開催するのではなく『シャドウバース』をきっかけに友達を見つけたり、いろいろなチームとの関係を広げたりしてほしい、というのが一番の想いとしてありました。例えば、対戦した大学生の子たちと繋がって「じゃあ一緒に何かイベント行こうよ」とか。そういうものが広がってくれるといいなと思いますし、自分たちの大学でサークルのその子たちが学園祭などで『シャドウバース』のイベントや大会を開催するなどして、各大学にいる学生のみなさんが『シャドウバース』を使って自分たちの周りのコミュニティを盛り上げてくれるのが、僕らとしては理想です。

ーーここ数年で日本のeスポーツの注目度はいろいろな変化をしてきました。この変化をどのように捉えていますか

川上私自身『シャドウバース』を中心にeスポーツに関わらせていただいている中で、やはりコロナ前は参加するものだったものが、今は大会などを視聴する文化がすごく根付いてきたかなと感じています。それはeスポーツの選手たちが自分で配信できる機会などがすごく多くなったので、自分の力で自身にファンをつけていける環境ができてきたからだと思います。一昔前の様に「ゲームが好きな人だけがゴリゴリに参加する競技の場」というよりは「みんなで自分の好きな人を応援するための場」にeスポーツというものが変化してきていると考えています。実際に大学生リーグの大会の現場でも、チームのメンバーだけでなく「自身はゲームをプレイしていないけれど、チームの応援に来た」という同じ学校の友達、保護者の方々も多く見受けられました。

ーー『シャドウバース』およびCygamesとしてeスポーツシーンをどの様に盛り上げていきたいですか

川上『シャドウバース』は基本的に、反射神経などは必要なく頭脳を使うeスポーツなので、きちんとルールを理解すれば誰でもすぐに戦えるようになりプレイハードルは比較的低いと思っています。「大会に参加する」ところや「ゲームに興味を持ってもらう」ところのきっかけの1つとして、プレイハードルの低い『シャドウバース』でまずはゲームに興味をもってもらい、それをきっかけにeスポーツに興味をもち『シャドウバース』以外のゲームもプレイして、そのゲームのコミュニティにも参加してみたいな人が増えるとeスポーツシーンの盛り上げ貢献になるのかなと思っています。ただ、あくまでも我々としては『シャドウバース』ユーザーの皆さんに楽しんでいただける環境をしっかりと作っていくことが一番大事だと思っていますので、まずはそこにしっかりと注力していきたいと思っています。

ーー最後に読者に向けてメッセージをお願いします

川上新ルールの大学生リーグのエントリーも受付開始していますので、本当に一人でも多くの方々に参加いただけると嬉しいなと思っています。

また『シャドウバース』に関しては、新しいタイトル『シャドウバース ワールズビヨンド』の登場も控えています。ぜひ今後の『シャドウバース』の動きに注目してもらえると嬉しいです。

Shadowverse University League 特設サイト【シャドバ大学生リーグ】|Cygames