僕が今回取材したのは東京のスイーツシティ、蔵前にあるen cafeという自由な風を感じるカフェだ。

建物一棟、すべてがカフェスペースであり、さまざまなカフェの楽しみ方ができる。

外観
一二三(ひふみ)パティシェ



「建物、一棟全部が、1〜3階、屋上まで。en cafeのお店のスペースになっていますが。都内で、しかも注目の蔵前で、一棟全体がカフェのお店をオープンさせたきっかけはなんでしょうか。」

うちの会社の本社が新潟にあって、JEJアステージという会社なんですけど。
プラスチック製品を主に生産している会社でして。そこで、新しく事業の一環として飲食部門が立ち上がりまして。東京に出張に来た時に、もっとゆっくりできるカフェなんかがあったらいいね、という発想から、このカフェ稼働プランが動き始めました。
場所は、東京地区を担当されている方が、ここ蔵前に決めました。
蔵前がもともとモノづくりの街であって。卸問屋も多くて。うちの本社も新潟のモノづくりの街にあるので。とても雰囲気が似ています。

「この建物全体をカフェにするというコンセプトは、どのように決めたのでしょうか。」

基本的に、時間を忘れて、ゆったりとくつろいでほしい、というコンセプトで作ったカフェです。
1階、2階、3階、屋上ともに、違うニュアンスで違う雰囲気を醸し出していて。
毎日、通っても、飽きがこなくて、安らげて、ラクになれるスペースを目指しました。

「各階の構成は、どのようになっていますか。」

構成は、カフェが多い蔵前に合わせて塾考しました。
まず1階は、テイクアウトメインのコーヒースタンドになっています。2階は、スタンドではなくて。くつろげるカフェスペースになっています。小上がりのゆったりとした空間も設けています。
次に3階。ここのスペースは、最初、コンセプトショップだったのですが、コロナ禍の関係で、席と席の空間をとらなくてはいけなくなり3階もカフェスペースがメインになりました。
最後の屋上は、オープンスペースになっています。持ち込みはNGですが。1階で購入したドリンク類などを、屋上で心地よく飲んでいただくというスタイルになっています。

「en cafeの多彩なスペースを、お客さまにどのように使っていただきたいですか。」

まず、ゆったりしていただけたら、いいなと思っています。
うちは、土日祝日も、時間制限を設けていないので。お客さまが来たいときに来て、帰りたいときに帰っていただくというカタチで、楽しんでいただければ、うれしいです。
店に通うのに飽きないように、メニューのドリンク数、フード、スイーツ数も充実させています。

「いまお店で、たいへんな人気のスイーツとなっている、クッキー&クリームチーズケーキは、どのようなことがヒントになって誕生したのでしょうか。」

商品開発は、私が全部やっているのですが。
これは私の考えなんですけど。基本的にカフェって、チーズケーキだったりとか、フルーツタルトとか、とてもシンプルなんですけど、けっこういい値段じゃないですか。それだったら、もっとケーキ屋さん寄りのケーキを作って。
他のカフェに行くより、うちへ来てより深いスイーツ感覚を楽しめる場にしたほうが正解だと思い、その深いスイーツ感覚をクッキー&クリームチーズケーキの商品開発に活かしています。

クッキー&クリームチーズケーキ

「クッキー&クリームチーズケーキは、クッキー自体を載せるという発想が大胆ですね。とてもクリエイティブですね。」

最初は、どういうカタチにしようかなと思って、ホール、まるいカタチにしようかなと、思ったのですが。おもしろいビジュアルが好きなので、四角い長方形にしました。それをカットして、中にもオレオクッキーを入れているので、ケーキの上にもオレオクッキーを載せてみようと感じまして。シンプルに載せてみました。


お店の方が、丁寧に、クッキー&クリームチーズケーキを、テーブルまで運んできてくれた。

チョコレートカラーのオレオクッキーが、大胆にケーキの上に載っている。
それだけで、このケーキを食べたくなってしまう。

まず、クッキーをお口にいれる、スマートな甘い味わいがゆっくりと広がる。

チョコレートチーズケーキを、お口に運ぶ、コクのあるやさしい甘さが、ファーとお口に沁みる。

繊細なクリーミーな味に、僕のこころも穏やかになる。

「これからは、ケーキのビジュアルもどのように変化していくと思いますか。」

パティシェは、ケーキの外観をみれば、中に何が入っているか、だいたいわかりますが。
これからは、お客さまも、ケーキの外観を見て、どんなケーキかなと予想ができるビジュアルのほうに手がのびていくと思っています。


「クッキー&クリームチーズケーキの美味しさの秘密は、どこにありますか。」

それは、味のバランスですね。

クッキー&クリームチーズケーキは、意外とクリームチーズの量が多く、砂糖は重くなってしまうので、そんなに使われていないんです。
そのかわりレモン果汁をいれて、酸味もプラスしているところがポイントになっています。チョコレートソースも甘そうに見えますけど。
パーセントの高い66%のカカオとカカオマスと言われる苦み成分を使っています。このクッキー&クリームチーズケーキは、甘さと苦さのバランスがとれているので。
甘いだけのケーキじゃないんです。甘さと苦さが絶妙に楽しめる、深い味わいが魅力なんです。



「クッキー&クリームチーズケーキを商品化するにあたって、たいへんだった点はどこでしょうか。」

やはり、ビジュアルですね。味自体は、けっこうすぐに決まったので、あとは、チョコレートソースや味のバランスをみながら。
ビジュアルのほうをより吟味しましたね。クッキーは、高さを出したほうがキレイに見えるので。寝かせているより、ちょっと立たせているほうがいいと思いました。

「新商品開発の点で、一二三パティシェが毎日の生活でこころがけていることはありますか。」

組み合わせが面白いものを、意識して見るようにしていますね。やはり、普通のチーズケーキやフルーツタルトなどの、見た感じでわかるものでもいいんですが。
せっかくお店に来て、食べていただくので。あっ、この組み合わせって美味しいんだな、とか、この組み合わせははじめて食べたな、とか。
そうした発見がお客さまに見つかればいいな、と、思いながら、いつもスイーツ作りをしています。
ただ見た目だけではなくて、お客さまが、あっこの組み合わせはおもしろいな、と、その部分を見つけてくれたらうれしいです。

「今後、どのようなスイーツの商品開発をしてみたいと思っていますか。」

見た目にインパクトがあるもの、目新しいものを作りたいと思っていますね。第二・第三のクッキー&クリームチーズケーキを開発していきたいですね。

「蔵前のお店は、これからどのように展開していくのでしょうか。」

うちは、もう一店舗、豊洲のほうにオープンする予定になっています。
飲食事業もどんどん拡げていっていきます。カフェというより、会社全体で、飲食業を盛りあげていきたいと考えています。

「一二三パティシェが、en cafeで叶えたい夢って、ありますか。」

いまはお店で全部作っているので、数に限りがあるんですね。
クッキー&クリームチーズケーキのお持ちかえりもないですし。並んでいただいたお客さまでも、全員の方に販売できなかったときもありますし。もっと大量生産で販売できたら、おもしろいかなと思っていますね。

「スイーツのバランスは、どうやって考えていますか。」

それは、感覚になってしまいますね。私は、食べて甘いなと思うのは、基本的にNGにしているので。
甘いだけのケーキは、あんまりおもしろくはないかなと思っています。私自身は、食べて、これ、いい、という感覚を大切にしていますね。
クッキー&クリームチーズケーキは、香りもあるし、食感もあるし、クッキーを食べたときにちょっと感じるしょっぱさもあり。
そういう全体のバランスを一番重要視して作っています。ケーキって、基本、甘いものじゃないですか。
でも、甘いだけじゃ、だめだと思うんです。

「新しい感性ですね。甘いだけにこだわらない、というのは、新しい感覚だと思います。」



僕には、一二三パティシェの言葉が、こころの奥深くまで響いた。

ケーキは甘い、というのは、誰が決めたのか。甘くなくても、いいはずだ。

甘さだけでなく、もっと多彩な味覚を感じるケーキがあってもいいと思う。

今までは、序曲で。
スイーツは、これからが、本当のクリエイティブな時代に入っていくのではないのだろうか。味も。ビジュアルも。食感も。スイーツに、まだまだ希望を感じる。

僕は、そう信じる。想像できない、どんなスイーツが誕生するのか。

熱く、火傷しそうな夢を追いかける、パティシェの方に期待したい。

著者:いろはめぐり編集部