マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原清志副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。

・CASEは「独自部分だけでも、クルマ1台分の開発費がかかってます」 マツダ藤原副社長インタビュー(1)

・為替は「北米に工場を造っても、ほとんど変わらない」 マツダ藤原副社長インタビュー(2)

・ラージの遅れは「7世代の技術を現行世代に入れる。もうそれをするしかない」 藤原副社長インタビュー(3)

・「マイルドハイブリッドの効果はちゃんと出てます」 マツダ藤原副社長インタビュー(4)

・第7世代への要望を不躾に言ってみる マツダ藤原副社長インタビュー(5)

池田 さて、これで、ほぼほぼ用意してきた質問には答えていただきました。まだ時間があるようなので、ここからはクルマ談義で(笑)。

●みんなすべてが「人間中心とは何ぞや」から

池田 第7世代は本当にすごくいいですね。昨冬、確か剣淵(マツダの冬期テストコース)でマツダのどなたかに言われたんですけど、「認知・判断・操作」のもう一つ上位概念を見つけましたっていう言葉にすごく驚いたんです。「認知・判断・操作」って素数みたいなものだと思っていたわけですよ。これ以上はもう開けないと。そしたら、実はその上に「人間中心」があるんだって言われて、衝撃でしたね。

藤原 (笑)

池田 確かに人間中心があっての認知だし、人間中心があっての判断だし、人間中心があっての操作じゃないですか。あれって、いったいどのタイミングでどなたが思いついたんですか。

藤原 人間中心っていうのは、2013年ぐらいから言い続けてたんですよ。でも、みんなが同じ思いを持ち始めたのは、多分ここ2、3年ぐらいの話ですね。みんな口では言うんですけど、自分の仕事になかなか落ちてないんですよ。

池田 ほーう。そういうもんですか?

藤原 最近はもう、みんなすべてが「人間中心とは何ぞや」から始まっていきます。一番強く反応したのは、多分エンジンの親分の中井(パワートレイン開発本部長:中井英二氏)なんですよね。それが多分3、4年前かな。彼が、ベルシェイブの動き(リニアに感じる速度変化)だとか、人間はこうだとかって言い始めて、それから、みんなが、「あ、全部それで言えるんじゃん」って、ガタガタガタって全部が変わっていったというか、一つにまとまっていったんですね。出発点は中井だと思いますが、それをサポートした人間がたくさん、部門ごとにいるんですけど、スタートは彼なんじゃないかな。誰かということよりも、多分彼のその一言で変わったんじゃないかと思うんですけどね。

●ミネラルウォーターみたいなのが欲しい

池田 中井さんといえば、MAZDA3の時はいまひとつだったディーゼルエンジンの初期応答が、CX-30では見事に直ってましたね。

藤原 あれは池田さんが書くから(笑)。もう意地で直してましたよ。

池田 いや、こんな短期間で直るものなの? って思いましたけど、すごい大変だったんじゃないですか。

藤原 いや、大変だったと思いますよ。でも、私も知らなかったんです。乗ってみて何かすごい良くなったんだけどって中井に聞いたら、「いや、エンジニアが意地になって直してました。池田さんに絶対に負けたくなかった」とか言って(笑)。

池田 いや、びっくりしました。

藤原 いいんですよ、池田さんみたいに厳しいことを書いてもらうと、みんな頑張ろうとして直っていくんで、今回ご指摘いただいたADASとかマツダコネクトも直そうと思って。

池田 (笑)。クルマってつくづく微妙のモノだなと思います。第6世代のときは、なかったとはいいませんけど、あそこまでは気にならなかったのに、他がグッとレベルが上がると、一気にそれが気になるんですよね。

藤原 だから、自分たちでハードルを上げているんですよ。改良していくと、今まで隠れていたのが全部出てきて、またそれをたたきにいく、直していくという。デザインもそうですけどね。今回の第7世代のあのデザインやったら、どうすんだこの先、みたいな(笑)。

池田 これは批判ではなくて、ちょっと気がついたことが一つあるんです。今マツダが目指しているハードウェアとしてのクルマは、素直で自然で、いってみればミネラルウォーターのようなものを目指しているじゃないですか? でも、デザインはミネラルウォーターの方向じゃないですよね?

藤原 全然違いますね。

池田 そのギャップが面白いなぁと。世の中がそのギャップをどう受け取るのかなと。そういう目でみると、この間モーターショーに出したMX-30のデザインは、とてもミネラルウォーターっぽいんですよね。

藤原 そうなんです、そうなんです(笑)。

池田 だから、おっ、これはもしかしてマツダの中でも同じことを思っている人が、いるのかと思っているんですけど。

藤原 社内の、特にああいう新しいものを作っている連中、プランニングやっている連中とかデザイナーとか、ああいう連中は、MX-30みたいな味も欲しいっていうんです。だから、多分ミネラルウォーターみたいなのが欲しいやつがいっぱいいるんですよ、モデラーも含めて。うわ、こっちのが、落ち着くと(笑)。デザインのボスの前田さん(常務執行役員:前田育男氏)のような色気のあるデザインじゃないほうが落ち着くっていう人もやっぱりいるんです。

池田 ピシッとスーツで決めなくちゃならないみたいで大変だと。

藤原 大変だと。あれはあれで、すごくいいんですけどね。

池田 まあ、そうです。すごいと思います。

藤原 だから、エンジニアリングとデザインのギャップのところは、だいぶんまた議論をし始めてて、あまりにも純粋にやりすぎたかなと。もうちょっと色気のある方向に持っていくのも一つの選択肢だし。今ちょっとやらせているんですけど、ある意味、違う色気のあるものも必要なんじゃないのと。

●「らしさ」がないところはブランドが作れない

池田 世の中の高額商品って、絶対「ヨコシマ成分」が入っているんですよね。そのヨコシマ成分を全部抜いちゃうのはよくなくて、そういう意味では、第7世代のヨコシマ部分は今、デザインが担保している感じもするんですよ。ただ、藤原さんが気にされているところは、エンジニアリング部分でもヨコシマが足りないんじゃないかってことですよね? 端的にいえばすげえ速えーよとか、マフラーからいい音がしてさ、みたいな。

藤原 ねっ(笑)。

池田 まあクルマには法律とか社会とかいろんな制約があるから、できることとできないことがあるんですけど、ただ、そもそもヨコシマって非合理なものなので、それを今のマツダの論理的なクルマ作りにどう織り込むかっていうのは、結構大変な、いうなれば哲学的な(笑)、テーマに突入してますよね。

藤原 まあ、なるんですけどね。でも、今、指示をしているのは、われわれの新しいオーディオも、1人の場合と、全席って2つモードがあるよねと。クルマに乗るときに、1人で乗っているときと何人かで乗っているときって違うよねと。それって求めるものが複数あるんじゃないの? っていうことも言っているんですよ。

池田 そう言われると、それは本当にそのとおりです。この間、ヤリスの試乗会に行ってだいぶ驚きました。いわゆる操作系のフィールを統一して整えてきたんですよ。ベルカーブ的にリニアで正確でっていうことを相当やってきたんですが、ブレーキだけちょっと違うんです。ブレーキは若干オーバーサーボが残っている。ただし、これは良いとも悪いともいえないと。私個人の評価だったら、絶対MAZDA3みたいなリニアなブレーキを推すわけですよ、ああなるべきだと。実はMAZDA3に乗って、生まれて初めてブレーキ踏むのが楽しみだったんです。郊外のバイパスとかでちょっと信号赤にならないかなって。

藤原 (笑)

池田 この速度から信号赤になったときに、キレイな減速コントロールを楽しみたいなみたいな。そんなのは、特殊なスポーツカーを除けば初めてですよ。それぐらいブレーキが面白かったんです。

藤原 今の書いてくださいね(笑)。ブレーキのエンジニアは、もう涙流して喜ぶと思うわ、今のは。

池田 書きます、書きます。ホントのことだから。

藤原 (笑)

池田 ところが、ヤリスはそうなってない。ブレーキだけリニアではないっていうと、トヨタの人たちはまじめだから、ものすごいメモ取りながら聞くわけですよ。で、もうちょっと深く質問してきて、当然MAZDA3のブレーキの話になって。ただ、これを国内で4割もシェアを持っているトヨタがやったら、「ブレーキが効かない」っていう苦情が山のように出てきますよ。実際は効かないんじゃなくて踏力に比例させているんだから、踏めばもっと効くわけですけど、普通のドライバーは、その「踏む」の基準がオーバーサーボのブレーキになってしまっている。だからいつものつもりでは踏力が足りなくなりますよね。

藤原 (笑)

池田 だから、そこは難しいですね。ただ、トヨタらしさっていうことでは、実はこれから2種類に分かれるんじゃないかと。これからEVの時代に向けてトヨタらしさをどうやって作ってくのか。ジャガーとかポルシェとかが、もうそれぞれのメーカーらしいEVを作って、マツダも今回MX-30でそれを作った。これから先、EV化していけばEV化していくほど、そのブランドらしい走りっていうのが必要になってくるんですね。

藤原 そうなってきます。

●リニアを求める層と自動運転を求める層

池田 「らしさ」が空白で何にもないところはブランドが作れない。そのときにトヨタらしさって何なのかっていうのは、トヨタの人たちは多分意識して相当探さなきゃダメですよねって話をしました。ただ、トヨタの場合は、トヨタらしさは1つじゃないかもしれませんねと。最初は、エンジニアの人が、「らしさ」ってセグメントで分けるんですかねとかっていうから、いや、それは作る側の都合ですよねと(笑)。そうじゃないですよね、お客さんのニーズですよねと。

藤原 うーん。

池田 リニアなものを突き詰めてった側の、ファン・トゥ・ドライブを望む側のリニアがあって、反対側には、できれば自動運転にいきたい人たちの安楽な運転がある。これは2つとも多分存在する。そこに操作系のデリケートさを求めるような人に向けた商品と、そうじゃなくて、できる限り運転なんか本当はしたくないんだっていう人の商品は全然違ってくるはずです。ヤリスのブレーキはその狭間で、どっちに行くか今はまだ決められない。だから何が正しいとは今は言えないんです。

藤原 なるほど。

池田 だから、そういう意味でいうと、マツダが今、志している方向で、ああいうブレーキを仕立てたっていうのは、私はすばらしいと思っていて、すごく勇気が必要だっただろうと思うんですよね。

藤原 本当はすべてのクルマがあの世界になると、多分交通の流れはすごいきれいになるんですよ。今は交通の流れ、全然きれいじゃないので。カックンブレーキのクルマが前を走ると、もう本当に車間距離を空けないといけない。いつキュッとやられるんだと思うと、もう怖くてつけないっていう状態なんですから。だから、みんながリニアなブレーキだと、きれいに行けて、それが本当の渋滞対策でもあるはずなんです。だから、私は本当は皆さんにそっちへいってほしいと思ってます。一気にそこにいかないまでも少しずつでも変えていきたいと思うんですけどね。

池田 理想的にはそうですよねぇ。

藤原 自動運転志向の人は、逆にいったら、それを機械で助けてやるっていうところがあるので、先ほど言われたような、運転者にフィードバックしながら、ちゃんとゆっくり止めるからねっていうようにしてあげることは十分可能性があると思うので、その辺に目標を置きたいんですよね。全部のクルマが正しくスムーズにブレーキがかかるように持っていく2つの道がある。お客様によって違って。でも、ここに持っていきたいってことが、みんなができればと思うんですけどね。

池田 しかし、そこは難しくて、クルマ好きな人に限っても、でっかいディスクブレーキほど偉いとか思ってたりするじゃないですか。

藤原 (笑)

池田 だけど、でっかいディスクブレーキって、特に低速域のリニアリティ精度って全然ダメじゃないですか。なのにロードスターのブレーキを、もっとごついのにつけ替えたいみたいな人、いっぱいいますよね。でも、それは分かってないなって話じゃないですか(笑)、本当は。

藤原 ロードスターのブレーキはものすごく良いと思ってます。大きければ良いってものではないんですけどね、本当に。いや、分かります。すごくよく分かります。

●マツダの最大の課題は、自動車偏差値が高い人じゃないと理解できないこと

池田 今だからマツダの最大の課題は、自動車偏差値が高い人じゃないとやっていることが理解できないということだと思っています。

藤原 考えます。

池田 例えば、サーキット試乗でインプレッション書くじゃないですか? そりゃ確かに公道では出さないスピードの話ですけど、厳しい状況で舵(かじ)抜けしないこと、最後まで舵が利いてくれることがすごく大事だとか、例えば下り坂で曲がりながら急にブレーキ踏まなきゃならなくなったとき、リヤタイヤが踏ん張ってくれることは大事だとかっていうのは、それは、いわゆる緊急回避の領域での安全性の話をしているんですけど(笑)、そんな速度の話は無意味だといわれたりするわけです(笑)。

藤原 いや、でも路上で本当に緊急回避をやる場面ってありますよね。だから、本当はそこはすごく大事なとこなんですけどね。

池田 そういうことが起きなかったら事故は起きないんですから。

藤原 そうそうそう。私も若くて自動車の知識も少ないときに、1989年ぐらいですけど、W124型のベンツに乗っていてドイツで事故しそうになったんですよ、山岳路で、対向車がはみ出してきたんです。「あ、こりゃ死んだな」と。そのときの、あのW124の緊急回避性。もうこんなに吸いつくように走ってくれるんかみたいな、ブレーキ踏んでもびくともせずにコントロールできたんですね。もうあれ以来ずっとW124みたいなクルマを作りたいと思っているんですけど、ああいうことを考えると、やっぱり高機動域の性能が最後の最後に生きてきます。自動車の持っているポテンシャルを大事にしておかないと、事故を起こしているよねっていう。

池田 大事ですね。

藤原 大事ですよね、本当にね。今回のヤリスは、ぜひ乗ってみたいなと思いました。

池田 いや、あれちょっとびっくりしました。っていうか、アクアと同じメーカーが作っているクルマとは、本当に思えないですよ。アクアは早く引っ込めろとか酷いことを書いてるんですけど、トヨタは怒らないですよ(笑)。

藤原 怒らないんですか? ウチも怒らないな(笑)。

池田 っていうか、私、怒られたことないですよ。どこにも怒られたことないんじゃないかな。

藤原 それは、記事に愛があるからですよ。大丈夫です。

●静粛性とシートと、オーディオ、この3つは自信があります

藤原 カローラもヤリスも凄そうですよね。本当にトヨタはすごい。

池田 あの規模でとんでもない黒字を出しながら危機感の塊ですからね。

藤原 だからわれわれなんてトヨタ以上に危機感を持って、常識を壊していかなくちゃいけないんです。

池田 でもそれをやってきてますよね? シートだって本当にモノになるまでは、すごい時間かかったじゃないですか。だけどモノにしてきたわけですから。

藤原 すんごい時間かかったんです。あれはシート屋さんの持っている常識を変えささないといけなかったんです。理論は分かっても、シートを作る側に、こり固まったものがあるので。結局ずっと長いことやっている連中の常識がなかなか変わらない。これが正しい、これが当たり前なんだと思っているところを、どうやって変えるか。これ静粛性も同じだったんです。

池田 良くなりましたねえ。

藤原 変わったでしょう? すごく。

池田 いや、静粛性素晴らしいですよ。

藤原 でしょ? これも、もう半年ぐらいケンカして(笑)。

池田 Cセグって何なのかを考え直しちゃいましたよ。確かに、ああやって静かになってみると、日本国内に限っていえば、今のスタンダードはBセグなのかと。Cセグはもうプレミアムなのかもしれないですよね。そう考えると、あの静粛性がいると。ただ、それを世界のCセグ全部のスタンダードだっていうのは、ちょっと世の中的にはかわいそうかなっていう気もするんですよ。グローバルのスタンダードは今でもCセグなので。

藤原 それはそうですね。静粛性とシートと、オーディオ、この3つは自信があります。全部、半年間ケンカしたから(笑)。評価のやり方から変えろって。ずっと変わらないっていうことは何か間違ってんだぞ、それを変えない限り変わらないよって。染みついているんですよ、もう長いことやっていると。それを解きほぐして変えていく作業がとにかく大変でした。上からの号令ではなくて、理解するまで議論するんですが、あ、分かりましたって言ってきてからは、もう何も言ってこなくなって、たーっとできるんですよ。

池田 ほお。

藤原 そこまでの間はもうすごく、毎週毎週会議やって、ダメだろう、違うだろうってやってきて、「分かった」って瞬間から何も言ってこないです。もう熱中してやりますから(笑)。

●日本の自動車生産を維持している自負はある

池田 いやあ、でも、あとは本当に利益だけですね。

藤原 利益だけです。本当に申し訳ないです。

池田 ただ、クルマがこれだけよくできている以上、本当に成功してもらいたいんですよね。さっきの変わらないことをどうやって変えさせるかが大変って話は、トヨタの友山さん(副社長:友山茂樹氏)が面白いことをおっしゃっていて、「うちは自分たちがやっていることは絶対間違っているんだ」と。「間違っているからカイゼンができる。われわれはカイゼンができるってことが絶対正義だから」(笑)。

藤原 素晴らしいですね。

池田 自分がやっていることが「間違ってない」ってことは、カイゼンしないってことです。

藤原 今の話は、すっごく面白い話ですねぇ。

池田 面白い(笑)。

藤原 カイゼンという言葉は、トヨタの用語ですから、普通の言葉にすると、変革なんですよね。悪いと思っていたら変えるってことは。それをずっと徹底的にやる会社なので、すごいと思うんです。

池田 「カイゼン後はカイゼン前」って言葉がセットですから。

藤原 最近、トヨタとおつき合いしていて、あのカイゼンの徹底度は怖くて怖くて、あれは絶対すごい会社です、あそこは。

池田 すごいですね。

藤原 はい、すごいです、本当に。怖いです。でもあともう一つだけ言わせていただくと、トヨタには全く及びませんが、マツダとしては日本の自動車生産を維持している自負はあるんです。まあ為替に弱いんですけど、国内生産が日本の(自動車メーカーの)中で2番目なんで、生産量は(笑)。これだけは私、逆に自慢なんですよ。軽自動車も作っていないのに、日本の生産量はトヨタに次いで2番目で、スズキよりも多いし、ホンダよりも多いし、日産よりも多いって。これは何かというと、日本の経済を何とかしたいという思いもあるし、そこまで大きなことを言えないとしても、広島、山口の経済は、支えているんだと。

池田 それはそうですね。

藤原 海外に出ていけば為替の安定は図れるんですけど、やっぱりそこは絶対やっちゃいけないと思っています。広島、山口と一緒に、共に作ってきているのもありますし、かつて助けられているので、広島にいなかったら多分今はないんですよ。住友銀行から多分見放されてたんですけど、「おまえらがもしやめたら、広島経済はおかしくなる」ってフォードの資本を入れて残してくれた。私は広島に助けられているブランドだと思っているので、そこは安易に外に出てはいけないというのはあるんですよね。

池田 そこは責任なんですね。

藤原 まあ、そう。責任です。世界各地で一緒にやってくれている連中にも同じく責任があります。北米でずっと50年頑張ってくれている販売店の人たち。その人たちのためには、米国にちゃんと工場を造ってやらないかんっていう覚悟もあるし、よく豊田章男さん(トヨタ自動車社長)が言う、出ていったところは自分のホームタウンだから、そこをちゃんと大事に、切ることなく、ともに生きていこうというところはやっていかなければと。まあ自動車業界って利益追求型じゃなくて、どっちかっていったら、みんなと共に経済をというところしか、ないんじゃないかと思うんですよ。

広報 そろそろお時間です。

池田 いや、藤原さんお忙しいところ大変ありがとうございました。マツダの今がとてもよく分かりました。これからも頑張って下さい。

●インタビューを終えて

 インタビューを受けていただいていたときから危惧していた通り、藤原副社長は「それ大丈夫ですか?」の発言だらけで本当に面白い取材ができた。

 けれど記事に仕立てるのは大変だった。タイアップではないし、金銭は1円も発生していないので、もちろん校正なんて見せていない。それは当然なのだけれど、会話を読みやすく調えるために手を加えた部分で藤原副社長が誤解を受けるようなことがあれば、それは筆者の責任だ。マツダの広報からは「ドキドキします」とメールが届いていたが、こっちだって同じだ。無論本人の言葉通りで、広報が止めなかった部分は、知ったことではない。むしろ堂々と書ける(笑)。

 そういうあたりが、記名記事で自分の名前において好き勝手を書くのと、ちょっと違う大変さだったけれど、仕事として本当に面白かったし勉強になった。もし、校正チェックなしでインタビューに応じるよ、という自動車メーカーの方、そして勇気ある広報の方は編集部あてにご連絡をいただけると幸いだ。

 きっと多くの読者が、日本の自動車メーカーがどんなことを考えて、何にトライしているかもっともっと知りたいのだと思う。

(池田直渡)