『週刊少年ジャンプ』で連載し、大ヒットとなった『鬼滅の刃』。2019年4月に深夜に放送されたテレビアニメが社会現象と呼べるほどヒットし、それまでシリーズ累計約350万部だった単行本の発行部数が、2020年10月には累計1億部を突破。約29倍もの伸び率となっている。

 10月16日に公開された劇場アニメ「劇場版『鬼滅の刃』 無限列車編」は、公開3日間で興行収入が46億円を超え、日本映画史上でも類を見ない勢いだ。

 また「ゴールデンタイム」と呼ばれる、午後7時から午後10時の時間帯へのアニメの放送復活も1年ぶりに果たしている。実は19年10月に「ドラえもん」が金曜午後7時枠から土曜午後5時枠に、「クレヨンしんちゃん」が金曜午後7時30分の枠から土曜4時30分の枠に移動したことで、ゴールデンタイムのアニメは姿を消していた。

 その中で、フジテレビが2週連続でゴールデンタイムに『鬼滅の刃』総集編を放送。1年ぶりのゴールデン時間帯の放送を“復活”させ、これに続く形で同じくフジテレビ系列の準キー局・関西テレビも、10月23日から『鬼滅の刃』のゴールデンタイムでの地上波放送を決定している。

 “リアル”への経済効果もすさまじい。劇場アニメの「無限列車」にあやかり、JR九州では臨時列車「SL鬼滅の刃」を熊本〜博多で運行。『鬼滅の刃』原作者・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏の出身地とされる福岡県を走り抜ける。また辛子明太子や、宮崎牛のすきやきなど、九州の特産品を使った駅弁を販売し、その駅弁にキャラクターのクリアカード(全5種類)のうち1枚をつけている。

●JR東日本もコラボ

 JR東日本も「鬼滅の刃×SLぐんま〜無限列車大作戦〜」と題するコラボイベントを10月9日から12月31日にかけて実施。駅弁「峠の釜めし」で知られる群馬県安中市にある企業「おぎのや」と、同じく安中市にある体験型鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」、そしてJTBと協働し、一大観光プロモーションが展開中だ。JR東日本では、特別仕様のSLや団体専用列車を走らせている。JR九州では切符が“1秒”で完売するなど、「鬼滅」の社会現象ぶりがうかがえる。

 こうしたコラボ展開は、お菓子にも及んでいる。大手菓子メーカーのロッテは、同社の40年以上の看板商品となっているチョコレート菓子「ビックリマンチョコ」と、『鬼滅の刃』とのコラボ商品を出すと10月22日発表した。商品名は「鬼滅の刃マンチョコ」で、11月3日(火)から販売する予定だ。全国のコンビニエンスストアで数量限定で先行販売し、想定小売価格は税別100円(オープン価格)となっている。

●コラボ展開の意図は?

 「ビックリマンチョコ」はウエハースに挟まれたチョコと一緒にシールが入っているのも特徴だ。このシールは「ビックリマンシール」とも呼ばれ、中にはオークションなどで100万円以上のプレミアで取引されることもある。「ビックリマンチョコ」の代名詞の1つだ。

 「鬼滅の刃マンチョコ」でもシールが同封され、長年「ビックリマンシール」を手掛けてきたイラストレーターによるオリジナルイラストになっている。『鬼滅の刃』のキャラクターが描かれた景品シールは全24種類。中には「シークレットシール」として往年のビックリマンキャラと『鬼滅の刃』キャラが共演するシールも登場する予定だ。

 パッケージは主人公の竃門炭治郎(かまどたんじろう)と妹の禰豆子(ねずこ、「禰」は「ネ+爾」が正しい表記)、我妻善逸(あがつまぜんいつ)の3人が描かれたものと、冨岡義勇、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)、嘴平伊之助(はしびらいのすけ)の3人が描かれたバージョンの2パターンで展開する。

 実は、ロッテが『鬼滅の刃』とコラボするのはこれが初めてではない。9月15日からは、『鬼滅の刃』のキャラクターがパッケージに描かれたボトルガム「鬼滅の刃デザインボトル」が発売されている。

 また、「ビックリマンチョコ」自体も、これまで「ONE PIECE(ワンピース)」や「DRAGON BALL(ドラゴンボール)」といったアニメや、「AKB48」や「ももいろクローバーZ」などといったアイドルグループとのコラボも展開している。10月には羽生結弦選手オリジナルクオカード1万円分など総額3000万円以上の景品を抽選で提供する「GUM&GOキャンペーン」も実施した。

 その中でも「ワンピース」とコラボした「ワンピースマンチョコ」は900万個以上、「ドラゴンボール」とコラボした「ドラゴンボールマンチョコ」は700万個以上を売り上げるミリオンヒットとなっている。

●30〜40代をターゲット

 こうした他社コンテンツとのコラボの狙いについて、ロッテ広報部に取材した。

 「ビックリマンは1980年代の大ヒット時に子どもだった、30〜40代の方々を中心に支えられているブランドです。さらに広い層に愛されるために、若年層の方々や、昔は買っていたけど買わなくなってしまったお客さまに向け、これまで『ドラゴンボール』や『ワンピース』などといったコンテンツとのコラボを実施してきました。今回の『鬼滅の刃』とのコラボも同様の狙いです」

 さらに『鬼滅の刃』の幅広い年代への訴求力にもこう期待する。

 「いま社会現象になっている『鬼滅の刃』は、大人から子どもまで幅広く愛されているコンテンツと考えております。ビックリマンを支えてくださる方達の中には今やお子さんをお持ちの方も珍しくありません。『鬼滅の刃マンチョコ』を通じてビックリマンに興味を持っていただき、お子さんにもビックリマンを好きになってもらえれば幸いです。引き続き幅広い世代にアプローチできるビックリマンを展開してまいります」

 アニメのゴールデンタイムの再放送や、特別仕様のSL列車の運行など、今や社会現象と言って間違いない『鬼滅の刃』。ロッテが戦略として捉えるように、老若男女幅広い年代から愛されるコンテンツなのが特徴だ。各企業がこうしたプロモーションを展開するのは、何よりアニメが親子で楽しめるハイカルチャーに成長しつつあるのも大きいだろう。こうした展開は、まだアニメが子どもたちのものだけだった「ドラゴンボール」の時代にはあまり見られない光景だった。

 「鬼滅」ブームが日本のアニメビジネスをさらに一段押し上げるのは間違いない。今後もより多くの企業との「鬼滅」コラボがまだまだ続くだろう。(フリーライター河嶌太郎)

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

©LOTTE/ビックリマンプロジェクト

©バードスタジオ/集英社Ⓒ「2018 ドラゴンボール超」製作委員会