売れ残った有名ファッションブランドの洋服や靴を買い取って、最低でも希望小売価格の30%オフで販売する「オフプライスストア」が増殖している。毎日、新品をセール価格で提供しており、中には50%オフ、90%オフもの超激安価格の商品すら存在する。

 2019年頃から、次々と新しいチェーンが誕生。大手アパレルのワールドとアパレルの在庫管理にノウハウを持つゴードン・ブラザーズ・ジャパン(東京都千代田区)が共同で出資した「アンドブリッジ」、リユースショップの「セカンドストリート」がヒットしているゲオホールディングスが開発した「ラック・ラック クリアランス マーケット」、オンワードホールディングスの「オンワード・グリーン・ストア」などが立ち上がった。

 1年前から、小田急百貨店や東武百貨店などに、期間限定のイベントスペースにて、 オフプライスストアがしばしば出店している。

 よく似たコンセプトの業態に「アウトレット」がある。アウトレットが1つのブランドの商品をオフプライスで販売するのに対して、オフプライスストアは複数のブランドの商品を独自の視点で集めたセレクトショップ的な業態となっている点が異なる。

●背景に構造的なアパレル不況

 オフプライスストアが台頭する背景には、構造的なアパレル不況がある。例えば、日本百貨店協会が発表した「全国百貨店売上高概況」によれば、09年12月の衣料品売上は約2106億円だった。しかし、19年12月には約1595億円と、4分の3程度にまで縮小。

 コロナ禍に見舞われた20年12月にはさらに2割ほど減って、約1267億円となった。

 つまり、アパレルがユニクロのようなファストファッションと高級ブランドに二極化する傾向が進み、百貨店やファッションビルなどの店頭で中級アパレルが売れなくなっていた。そして、コロナ禍の外出自粛によって高級ブランドも売れなくなってしまった。過剰在庫を抱える企業が増え、処分方法の選択肢としてオフプライスストアが浮上した。

 しかし、「企業も生産調整をするので、コロナ禍で在庫が膨らむとは限らない」(ワールド・広報)といった指摘もある。新型コロナの前から準備していたオフプライスストアの立ち上がりと、コロナ禍がたまたま重なったと見るべきだろう。

●売れ残った商品を焼却

 アパレルの廃棄が大きな問題となったのは、18年にイギリスのバーバリーが年間約40億円もの売れ残りを処分したことが判明したことだ。BBCをはじめ多くの欧米メディアが批判的に報じた。それに対して、バーバリーは今後売れ残った商品を焼却しないと表明した。

 バーゲンやアウトレットでも売れなかった余剰在庫の焼却処分を行っているアパレル企業は、バーバリーだけではない。日本のアパレル業界でも、余計な温室効果ガスの排出を減らすSDGs(持続可能な開発目標)の考え方を取り入れて、売れ残った商品を安価で流通させるオフプライスストアの開発が必要という機運が高まった。そして、1〜2年の準備期間を経て、一斉に立ち上がってきたのだ。

 一方で、消費者にも以前に買った商品を着まわす考え方が定着。かつてのように皆で流行を追わなくなり、1〜2年前のアパレル商品でも販売できる市場に変わってきた面もある。

 欧米、特に米国では年商で4兆円を超える企業も生まれており、オフプライスストアの注目度は高い。

●有名ブランドの1点物も多い

 ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合弁会社アンドブリッジ(東京都港区)は、3月13日、5店舗目となる「ニューポートひたちなか店」(茨城県ひたちなか市)をオープンした。

 アンドブリッジの出資比率は、ワールド50%、ゴードン・ブラザーズ・ジャパン50%で、19年に設立。ワールドが店舗を運営するが、アンドブリッジで販売するワールド商品の割合は10%以内にすぎない。ワールドにとってライバル会社である約250社からの商品も買い付けている。その買い付けをゴードン・ブラザーズが担当している。

 同店は、アンドブリッジ最大の450坪を有し、レディース、メンズ、キッズといったアパレル商品のみならず、靴、食器、キッチン用品まで幅広く取りそろえている。国内外の人気ブランド約1万5000点を販売するが、有名ブランドの1点物も多く、いつ来ても違う商品があって、宝探しのような体験ができる面白さを訴求している。

 「靴はサイズで1足しかないものもあり、スニーカー、ビジネスシューズなどが、すぐに売れてしまうケースも多い」(ワールド・広報)とのことだ。

 希望小売価格の40〜70%オフの価格で提供するが、スペシャル・プライスとして90%オフもある。

 ニューポートひたちなかは、国営ひたち海浜公園に隣接する、リゾート的な雰囲気を持つ商業施設。同店の他にはホームセンターのジョイフル本田、ユニクロ、はま寿司、TOHOシネマズなども出店している。無料駐車場は5000台を完備している。

 集客力の高い商業施設内にあり、同店は好調なスタートを切った。

●環境問題も意識

 アンドブリッジのコンセプトは、「サステナブル(持続可能)な環境社会の実現のため、ファッション業界の廃棄ロス削減を目指し、価値あるブランドの余剰在庫を再編集してお手頃価格でお届けする」こと。

 顧客の不要になった服を回収するリサイクルボックスを店内に常設。古着を再利用したアートも配置するといったように、循環型の取り組みを進めている。

 なお、回収した衣類はリサイクルメーカーに販売。収益金は子どもたちの教育のために寄付をしている。

 また、アート作品でもあるデザイナーズ公共ベンチを店内5カ所に配置している。

 アンドブリッジは19年9月、さいたま市の西大宮に1号店を出店。以降、神奈川県相模原市にニトリモール相模原店、東京都台東区に浅草ROX店、京都市南区にイオンモールKYOTO店、そしてニューポートひたちなか店と出店を重ねている。4月24日には埼玉県蕨市にビバモール蕨錦町店が320坪でオープンする。

 10年後には20〜30店の展開を目標にしている。

●ゲオグループも展開

 ゲオグループのゲオクリア(名古屋市)が経営する「ラック・ラック クリアランス マーケット」は3月26日、千葉県習志野市に「ミーナ津田沼店」をオープンした。

 面積は155坪で、商業施設ミーナ津田沼の3階にある。レディース・メンズ・キッズ衣料品、バッグ・靴・アクセサリーといった服飾品、化粧品などを販売している。商品点数は約2万点で、インポート、カジュアルなど約300ブランドをラインアップしている。

 ラック・ラックではメーカー希望小売価格の30〜80%オフをメインに販売している。店舗オープン時に、商品を3点以上を買うとさらに20%オフになるといった特典が付くケースもある。

 「宝探しのようなショッピング体験」がコンセプト。リアル店舗の強みである友人や家族との買物体験を楽しめる空間を提供。内装はシンプルなデザインで、アイテムやテイストをまとめて陳列することで欲しい商品がすぐに見つけられるように工夫している。

 こうした商品選びや店づくりのノウハウは、ゲオが誇るリユースショップ「セカンドストリート」のノウハウが生きている。

 ラック・ラックは、19年4月、横浜市港北区に1号店のコーナン港北インター店をオープン。以降、大阪府八尾市にリノアス八尾店、埼玉県本庄市にビバモール本庄店、埼玉県所沢市に新所沢パルコ店、大阪府岸和田市に岸和田カンカンベイサイドモール店、東京都町田市にミーナ町田店を次々に出店。百貨店にも展開しており、名古屋名鉄百貨店、松坂屋静岡店を出店している。現在、津田沼店を含め9店となっている。

 期間限定のポップアップストアも、高知市の高知大丸店(2月19日から3カ月限定)が出店中。さらに、さいたま市に浦和パルコ店(4月23日〜6月10日)がオープンする。

 ラック・ラックに並ぶ商品は、同社の趣旨に賛同するメーカーの特別提供品、1年以上前の商品も含めた在庫余剰品、軽度のほつれや擦れ・サンプル品といった規格外の商品、季節外商品など。それらをバイヤーがメーカーに営業して、安価で買い付けて販売している。

 同社では、順調な売り上げを背景に24年までに全国50店の出店を計画している。

●ポップアップストアが各地の百貨店に

 1年前から、オフプライスストアが期間限定で出店するポップアップストアが各地の百貨店で見られるようになった。大半が催事場ではなく、婦人服売場のイベントスペースで展開しているのが特徴。コロナ禍で撤退したブランドショップが目立つ中で、百貨店が生き残りのため、何とか次の流行を見極めようと試験的に導入しているようだ。

 百貨店での期間限定の展開に熱心なのは、ショーイチ(大阪市)というアパレルなどの在庫処分を専門とする会社。取引法人数は約4000社で、そのうちアパレル関連は2347社(18年1月1日現在)となっている。

 ショーイチでは、20年9月1〜29日に、小田急百貨店新宿店(東京都新宿区)の6階婦人服売場にて、百貨店業界初のオフプライスストアを出店。好評だったため、同年11月11日〜12月15日、第2弾として秋冬物の商品を販売した。

 さらに、第3弾として、21年2月24日〜6月1日、「COLORS PLUS」の店舗名で、取り扱いブランドと期間を拡大して出店。商品はヤングミセスからミセスを対象としているが、希望小売価格の30%オフ、50%オフは当たり前で、中には90%オフというケースもある。

 小田急百貨店・広報によると「かつて百貨店で販売していて、メーカーが廃止してしまったブランドの商品も販売している」とのこと。百貨店らしいオフプライスストアの在り方を確立しようと懸命だ。

 ショーイチは、3月2〜17日、東武百貨店池袋店(東京都豊島区)でも4階婦人服売場のイベントスペースにて、約10坪のオフプライスストアを出店した。ミセスの国内3ブランドで展開している。

 しかし、東武百貨店・広報によれば、「緊急事態で外出自粛傾向にあり、売り上げは厳しく、次回以降の出店の予定は現在のところない」とのこと。

 激安商品を並べても、時期と展開方法を考えないと、必ず成果が出るとは限らないのだ。

 この他にもショーイチは、2月27日〜3月22日に、近鉄百貨店奈良店(奈良市)に「Colorsu(カラス)」を出店。レディースアパレルを中心に、雑貨も多く取りそろえたオフプライスストアで、同社としても奈良県初出店だった。なお、売り上げの一部は、アジア諸国の孤児院への支援を行うボランティア「TASUKEAI 0 プロジェクト」に寄付している。

 同社は常設、一部ポップアップも含めてオフプライスストアのカラーズやカラスを国内26店にまで拡大している。期間限定ショップを通じて、百貨店におけるオフプライスストア定着へと積極的に動いている。

●日本でも有望な分野

 日本には、これまで在庫処分品を販売するという意味でのオフプライスストアがなかったわけではない。「バッタ屋」と呼ばれる、偽物も紛れていそうな怪しいイメージの店が存在した。恒常的な激安を前面に出したプライス訴求の店であった。

 ところが今日のオフプライスストアには、産業廃棄物による焼却ごみを減らすエコロジー、SDGsの思想が背景にある。これは、飲食業界で食品ロスが問題視されているのと類似している。オフプライスストアの経営者は、恵まれない子どもたちのための支援に収益の一部を寄付するなど、社会貢献への意識が強いのも特徴だ。

 オフプライスストアは、欧米では既に巨大なマーケットになっていて、日本でも有望な分野であることは間違いない。

 ただし、年間15億着が売れ残るというアパレルの膨大な余剰在庫から、売れる商品を見つけ出すには、バイヤーの目利き力が欠かせない。有能なバイヤーの育成に成功した企業が最終的に勝ち残るだろう。

(長浜淳之介)