コロナ禍がもたらしたもの、それは働き方の分散だ。このことにより組織運営において悪影響を受けたもの、逆に促進されたものがそれぞれある。

 悪影響を受けたものとしては、気軽なコミュニケーションがとれなくなったことが代表例である。それにより、特に若手メンバーを中心にメンタル不全の可能性が高まったことに悩む企業も多い。

 気軽なコミュニケーションが取れないことは多方面に影響を及ぼす。まず、会社とのつながり感の希薄化を生む。オフィスに出社していたころは、自然に顔を合わせることで生まれていたコミュニケーションが、希薄化していく。会社らしさの体感ができなくなり、同一の空気感に触れることも少なくなっていく。

 その結果、モチベーション、さらにエンゲージメントに課題があると感じる企業が増えている。単に個人の「さびしい」「不安」といった気持だけでなく、それらが積み重なり、集合体としての組織における文化や風土の弱体化という課題が浮上してきているようだ。

●「可視化」の観点からDXが加速

 一方で、コロナ禍により促進されたものがある。いわずもがな「DX(デジタルトランスフォーメーション)」である。働く場所が分散し、テレワークを推し進めていくのに必要となるデジタルツールの活用が一挙に進んだ。テレワークそのものもそうだが、DXもコロナ禍の前から少しずつ促進されていた。それが、ここにきて一挙に進み出したことはコロナ禍における「けがの功名」といえるかもしれない。

 働く場の分散により、各自の健康状態、仕事の成果や状況が見えなくなってきたことも追い風となっている。DXの一つの側面は可視化であり、その観点からデジタルツールの導入が進んでいるからだ。デジタルツールを使うことで、ログが残りデータ化される。それにより動きや状況が見えるようになるのだ。データとなれば瞬時に取得・共有が可能となる。

 とはいえ、取得できるデータは膨大なものだ。その中で、総務が注目すべきデータはどういったものなのだろうか。

 あるIT系企業の総務課長は、Zoomで行う会議の「接続状況」に注目するという。例えば、メンバーによっては会議の開始前に余裕をもって接続する人、あるいは会議直前に接続する人、もしくは開始後になってようやく接続するなど、それぞれ違いがある。

 その総務課長によると、余裕をもって接続する人ほど仕事へのモチベーションが高く、開始後に接続するような人はモチベーションが低い傾向にあるとのことだ。もし、後者のようなメンバーがいる場合には、その上長にさりげなく伝達し、仕事の取り組み姿勢に問題はないか確認することもあるのだという。

 また、ある通信系企業の健康経営担当者は、チャットの利用量に注目している。あるメンバーのチャットとの利用量が突然増えたり、減ったりといった異常値が表れると、場合によってはメンタル不全の可能性があるのだという。こちらも、先ほどと同様に異常値を発見した場合には上長に伝え、対応を依頼している。

 つまり、日々の行動がデジタルツールを使うことで把握でき、そのデータの異常値から何らかの兆候をつかめるのだ。加えて、そのデータと、健康状況、エンゲージメント調査、業績、パフォーマンスなどのデータを掛け合わせることで、さらに確度の高い前兆が読み取れるのではないだろうか。

 このように、デジタルツールの活用、DXが進展すればするほど、さまざまなものがログ、データとなって把握できるようになる。今後、総務としては、そのようなデータを収集し、そして掛け合わせながら、顔の見えないメンバー、組織、会社の状況を把握していく必要がある。そうして状況、前兆を早めに察知できれば、先回りして仕掛けを打っていくことができる。そして、その結果がどのようにデータとして現れるか、定点観測していくことで、総務の仕掛けの効果検証もしやすくなるはずだ。

●総務がこれまで以上に評価されるためには?

 これまで総務がなかなか評価されにくかったのは、行った仕掛けの効果検証が難しかったからだ。

 データが把握できるようになれば、総務でもPDCAがしっかりと回せるようにもなるし、営業部門と同様に、定量的な評価をすることが可能となる。心強い武器を持てた半面、定量評価されるというプレッシャーも増えてくることだろう。まさに「攻める総務」としての姿が求められてくるということだ。

 攻める総務を推進する上で知っておきたいのが、筆者も副理事長として参画している、一般社団法人FOSCで理事長を務めるクレイグ・カックス氏が提唱している「総務白書」という概念だ。

 総務白書とは、総務で管轄している全てのデータを集約したレポートを指す。

 総務が関係する予算は「総務財布」とも呼ばれるが、これは人件費に次ぐ大きな規模のものである。総務財布に含まれるのは、総務部管轄のPLに反映される総務直接予算だけではない。総務は契約締結を担当することも多く、各部門のPLに反映される営業車両のリース料、営業所の賃借料や、総務に購入先のアドバイスを仰ぎ、結果現場部門が購入するようなコストなども総務財布に含まれてくる。

 このようなコストとして現れるデータ、そして総務への問い合わせの数、建物の耐用年数、備品の数やコピー機の稼働実績、保有営業車の数から走行距離、事故の件数――そうしたデータを集約して、今の会社の状況が把握できる総務白書を作成してみるのはどうだろう。

 日々、経営サイドで把握できるのはあくまで営業的な数字であり、その数字を作り上げている現場の状況については、口頭や体感値で報告されるくらいのケースがほとんどだ。そのため、定性的な情報しか上がってこない。そこを総務として、定量的に全社の動きが把握できる総務白書で状況を説明するのだ。

 現場の状況に即した打ち手を展開でき、そしてPDCAサイクルを回していければ、重要な経営情報として評価されるはずだ。一方で、総務としても、現場に即した施策を立案するためには、現場の状況を知らなければならない。総務自身のためにも総務白書を作成することは大変重要なのである。

 総務白書の作成、その前のデータの収集と分析。総務の今後の役割として考えられるのが、こうしたデータアナリストとしての役割である。DXが進展すればするほど、それが実現できる素地が出来上がってくるのだ。

 ただ、そもそもの話として「テクノロジーの導入」が必要であることは意識しておこう。総務がテクノロジーを嫌っていては仕事にならない時代となっている。テクノロジーの使い手としての総務、そしてその結果生まれるさまざまな情報の使い手であるデータアナリストとしての総務。ニューノーマルにおいてはぜひ目指したい姿である。

(豊田健一)