長引くコロナ禍によって、国民の生活インフラの一つにまでなったと言っても差し支えないウーバーイーツ(Uber Eats)に「ルール整備」を求める声が上がっている

 まず、一部の配達員が交通ルールを守らず危険運転をする問題が増えていることで、東京都議会では配達員の「背番号制」が提唱され、大きな論争を呼んでいる。

 導入反対派は、配達員に対する個人的な恨みなどから、SNSで悪評がさらされ、ハラスメントや人権侵害につながる恐れがあると主張。確かに、そんな未来を予感させるような出来事も起きている。

 配達員がピックアップ先の大手ラーメン店の店員から暴行を受けたことを告発したのだ。胸を思いっきり押されたうえ、店主から土下座を求められたという。一方、テレビ局の取材を受けた店側は胸を押した事実は認めて謝罪をしたものの、配達員側の態度にも問題があったと主張していた。

 このように店や利用者とのトラブルが日常的に発生していることを踏まえれば、配達員にとって背番号制の導入が、配達員イジメをする際の個人特定に悪用されるだけ、というのは容易に想像できよう。

 一方、一部の配達員からはウーバージャパン(UberJapan)に対して、団体交渉ができるよう、労働者としての権利を認めるような主張も出てきている。3月16日、英国のウーバーが世界で初めて、配車サービスの運転手7万人以上を個人事業主ではなく従業員扱いとすると発表したが、日本もあのような対応をしてほしいというわけだ。

 もし「従業員化」が進めば、今問題になっていることの多くが解決するかもしれない。例えば、配達員の危険運転やマナーの悪さは、ウーバー側から競争心を過度にあおられているからだという指摘がある。昼食、夕食などのピーク時にたくさん運ぶことや、配達依頼がきたら即座に回答することなどでインセンティブが付くシステムの弊害で、配達時の安全やコミュニケーションがおざなりになっているというのだ。

●ウーバーとセブンは同じ匂い

 このように個人事業主の人たちにニンジンをぶら下げて、競い合わせるシステムに問題があるのならば、英国のように配達員の立場の見直しも必要だ。ただ、現時点でウーバージャパンにはそういう考えはないようだ。

 「配達パートナーは個人事業主。雇用関係や業務委託関係はなく、団交応諾義務もない」(日本経済新聞 4月18日)

 要するに、ウチは配車アプリや支払いのシステムを提供しているだけなので、労働環境改善だなんだと面倒なことを言うのならやめてくださっても結構ですよ、というスタンスなのだ。

 もちろん、法律的にはそういうことになるのだろうし、そもそも最初からこのようなビジネスモデルなんですけど、と言ってしまえばそれまでの話だ。が、個人的には、配達員トラブルが多発している問題が出てきたのも事実なので、原理原則を振りかざすだけではなく、もうちょっと柔軟な対応をしてもいいのではないかと思っている。

 ウーバー同様、多くの個人事業主とのパートナーとなることで成長してきたものの、個人事業主からの不満や現場でのトラブルが発生して大炎上してしまった大企業と同じ匂いが漂ってきているからだ。

 その大企業とは、セブン‐イレブン・ジャパンだ。

 コロナ禍ですっかり忘れられた感もあるが、実は近年、セブンではコンビニオーナーからの不満や現場でのトラブルが多発している。

 人手不足から時短営業を決断したオーナーに対してFC本部が違約金1700万円を請求して契約解除を求めた、いわゆる「24時間営業問題」。さらに、FC本部の社員が売上確保のため、オーナーに無断でおでんなどを発注した問題、そこに加えて、全国のオーナーから、消費期限が迫った弁当などを値引きする「見切り販売」をしないよう本部が圧力をかけているなどと公正取引委員会に訴えられ、パートナーとの関係がギクシャクしている。

 また、現場のトラブルも多い。売り物のおでんを口に入れて吐き出す不適切動画や、店舗バイトへの賃金未払い、オーナーによる客へのセクハラなどが発生。昨年も店員同士が取っ組み合いのケンカをした動画が拡散されて話題になった。

●ウーバーの仕組みに「問題」

 このように問題多発のセブンだが、スタンスは終始一貫変わらない。それは、「セブンオーナーは独立した個人事業主」というものだ。自分たちはフランチャイズの本部として、パートナーであるコンビニオーナーに対して商品やサービスを提供しているだけなので、店舗で起きている数々の問題についてもその責任はオーナーにあって、セブンとしてはオーナーの手助けをする立場ですよ、というわけだ。

 いかがだろう、ウーバーの配達員に対するスタンスとよく似ていないだろうか。

 似ていて当然で、セブンに代表されるコンビニのビジネスモデルは、実はウーバーと共通点が多い。コンビニオーナーも配達員も、ブランドのロゴがデカデカと入った制服やカバンなどを渡されるが、そこに雇用契約はなく、独立した個人事業主である。だから、コンビニオーナーが開業資金は自分で用意しなくてはいけないように、ウーバー配達員も自転車やバイク、ガソリン代などはすべて自分で用意しなくてはいけない。

 システムによって、仲間同士の厳しい競争があおられるのもよく似ている。先ほど、ウーバー配達員がより多くの報酬を得るために、配達依頼の奪い合いになっている現状に触れたが、セブンのオーナーも環境はよく似ている。

 成長の根幹と位置付けるドミナント戦略のせいで、セブンのオーナーは苦労して開業した自分の店のすぐ近くに開業したセブンの店とも競い合わなければいけない。FC本部は、同一地域内にたくさん店ができれば地域のロイヤリティが上がって、売り上げも伸びるというが、実際はコンビニの数が増えるのでバイトの確保が難しくなり、人手不足で現場が疲弊する。このような「カニバリ」が、2019年に問題になった24時間営業問題や、オーナー過労死問題の遠因となっていたのは、多くのメディアが指摘している。

●配達員は個人事業主

 このような数々の共通点を踏まえれば、ウーバーはセブンを「他山の石」とすべきではないだろうか。つまり、配達員を「個人事業主」と他人面していても、事態は何も好転せず、さらなる不満やトラブルを引き起こす現実と向き合うべきではないか。

 19年3月15日、中央労働委員会は、セブンなど大手コンビニと加盟店契約を結んでいるオーナーらが「会社側が団体交渉に応じなかったことは不当労働行為だ」と救済を申し立てたことを棄却する命令を出した。労働争議を調整する中労委が、コンビニオーナーは「労働組合法上の労働者に当たると評価することはできない」と判断した意味は大きい。

 しかし、このようにオーナーと本部の関係が明確にされた後も、セブンの現場ではトラブルが続いている。法的に関係をクリアにすることは、現場のトラブル解決に大した影響を与えないのだ。

 「コンビニは生活インフラ」だと胸を張っていたセブンは、まだまだコンビニは出店の余地はいくらでもあると主張してドミナント戦略や、新規出店を続けたが、オーナーとの対立や現場のトラブルが注目を集めてから、その勢いは明らかに落ちている。もちろん、今はコロナの影響も大きいが、19年10月の時点で既に「1000店舗閉店・移転」を発表するなど、コロナ以前からイケイケドンドンの拡大路線に陰りが見えてきているのだ。

 ウーバーも今のまま配達員との対立やトラブルを「配達員は個人事業主」で押し切れば、同じような道をたどるのではないか。日本は世界で最も早く少子高齢化が進行する人口減国家である。現場からも不満噴出、トラブルも多発なんてサービスは、どんなに便利なものであっても拡大路線にブレーキがかかってしまうものだ。

●ルールの整備が必要

 ウーバー最高経営責任者であるダラ・コスロシャヒ氏は、「人や物の動きを担う企業であるウーバーの目標は、物理的にも、経済的にも、社会的にも、誰もが自由で安全に移動できるようにすることです」(公式Webサイト)とおっしゃっている。

 もし本当にこの「目標」を大切に思っているのなら、多くのトラブルの遠因となっている「配達パートナーは個人事業主」という従来の方針は見直さざるを得ないのではないか。

 ビジネスモデルというのは「時代の変化」を無視して、ガンコに執着してもロクなことにならない。人口が右肩上がりで増えていた時代に登場した、コンビニの拡大路線やドミナント戦略を、人口が急速に減っている今、かたくなに続けてもいい結果を招いていないのがその証左である。

 それと同じで、ウーバーの「配達パートナーは個人事業主」というビジネスモデルも、フードテリバリーサービスがここまで急速に普及した今、時代に合わせた形に変えていく必要があるのではないか。ウーバージャパンには、法律論などに執着することなく、ぜひとも自社の「目標」に沿う形の柔軟な対応をお願いしたい。

(窪田順生)