2020年7月1日にスタートしたレジ袋有料化。環境に悪影響を与えるプラスチックごみの削減が目的だ。環境省と経済産業省の「レジ袋チャレンジ」では、「レジ袋を使わない人を6割にする」のが目標だった。ところが、環境省が20年12月に発表した「令和2年11月レジ袋使用状況に関するWEB調査」(調査対象者「全国15〜79歳男女」、サンプル数2100)によれば、20年3月時点での1週間以内におけるレジ袋辞退率が30.4%だったのに対して、同年11月には71.9%に跳ね上がった。

 環境省によれば、業界団体の調査でもスーパーにおける辞退率は57%から80%へ、コンビニでも23%から75%に上昇。ドラッグストアではレジ袋の使用量が84%減少した。

 目標を上回る7割以上の人が、レジ袋を辞退しており、効果はてき面だった。

 一方、環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室の「レジ袋有料化について」(総務省公害等調整委員会機関誌「ちょうせい」第101号 令和2年5月)では、「日本から毎年排出される廃プラスチックのうち、レジ袋が占める割合は2%程度と言われており、プラスチックごみ全体の量から見ればごく僅(わず)かである」としている。レジ袋を有料化して、たとえゼロにまで削減しても、地球環境の改善にほとんど効果がないと認めている。

 しかし、「レジ袋有料化の真の目的は、レジ袋を有料化することではなく、そのレジ袋の有料化をきっかけに(レジ袋以外のものも含めて)使い捨てプラスチックに頼った国民のライフスタイル変革を促していくことである」と、国民の環境への意識を高める啓蒙(けいもう)の一歩だと主張している。

 小泉進次郎環境大臣も、レジ袋有料化に関して、各メディアで同様の発言を行っていた。

 果たして、レジ袋有料化は「ニューノーマル」に則した環境に良い政策だったのだろうか。

●エコバッグを使った万引きが増えた

 繰り返すが、レジ袋は日本では廃プラスチックの2%にすぎず、環境省が問題視する海洋汚染解決の本丸ではない。有料化は環境への意識を高めてもらうきっかけづくりだと、環境省自らが認めている。

 各家庭においてレジ袋には、ごみ箱の内袋、ごみ箱の代用、ごみ収集袋といった役割がある。それ以外には、冷蔵庫の中の食料保管、洗濯物の保管、犬の糞回収などとして95%以上が再利用され、リユース率が非常に高かった。実態としてワンウェイ、使い捨ての無駄な無料配布物ではなかったのだ。

 政府は国民のレジ袋活用の実態を見ようとせず、ワンウェイと決めつけて規制をした。

 その結果、レジ袋有料化によって、スーパーなどで取っ手付きのポリ袋の販売が伸びている。レジ袋の代わりに使うためで、余計な家計負担となっている。

 2月22日に放映された日本テレビ系の報道番組には、ポリ袋メーカー「日本サニパック」(東京都渋谷区)の井上充治社長が出演。同番組で「前年比で2〜3倍と売り上げが伸びている」と語った。しかし、同社に問い合わせると「市販のポリ袋は売れていても、レジ袋の売り上げは減っていて、相殺されている」という。会社として好調に推移して喜んでいるわけではない。

 一方、小売り側にしてみれば、レジ袋を提供していた分だけ経費削減になるので、喜んでいるのかと思ったら、必ずしもそうとも言えない。エコバッグを使った万引きが増えたからだ。

 東京・多摩地区を基盤とするスーパー「いなげや」では、「1階に集中レジを設置していると、2階の様子が見えにくくなる。そこで、2階の棚を低くする万引き防止対策を行った」という。見渡しを良くするため、商品の陳列数を犠牲にしてでも、棚を低くする施策に踏み切った。

 また、大阪・西成区のスーパー「越前屋」では「エコバッグを折りたたんで入店していただくルールを徹底するため、お店で呼びかけを続けたので、エコバッグによる万引きはなくなった」と、難題を克服した。しかし、コロナ禍で貧困に陥る人が増えたので、従来型のポケットに入れる万引きが増えた。まさに、一難去ってまた一難の様相だ。

●エコバッグからレジ袋に戻す動きも

 エコバッグはそもそもエコなのかという論議もある。日本LCA学会は09年3月、マイバッグ(エコバッグ)とレジ袋の原料、製造、輸送、処分を合計した二酸化炭素排出量を算出した。マイバッグを50回以上使用しなければ、レジ袋より二酸化炭素の負荷が高く、環境に優しくないと結論付けている。

 新型コロナの感染拡大を受けて、米国ではエコバッグを禁止して、レジ袋に戻す動きもある。

 カリフォルニア州では16年に禁止したレジ袋が20年4月に復活。オレゴン、マサチューセッツなどでも同様の動きがある。スーパーでも、独自にエコバッグの自粛を求めるチェーンもある。家庭から持ち込むエコバッグに接触すると、付着したウイルスから店内で感染するリスクがあり、お店で配布するレジ袋のほうが安全・安心だからだ。

 こうして見ると、レジ袋有料化は拙速で、立ち止まって考えたほうが良かったのではないか。

●レジ袋は海を汚染しているのか

 実際にレジ袋はどれほど海洋を汚染しているのだろうか。

 2010年の推計とやや古いが、18年7月に環境省がまとめた「海洋プラスチック問題について」によれば、陸上から海洋に流出したプラごみ発生量の最大値を国別で見ると、1位は中国の353万t/年、2位はインドネシアの129万t/年、3位はフィリピンの75万t/年、4位はベトナムの73万t/年、5位はスリランカの64万t/年の順であった。米国は20位で11万t/年、日本は30位で6万t/年であった。

 日本の6万t/年が無視できる範囲だとは言えないが、ダントツの1位である中国の60分の1だ。懸命にエコ運動をやっている欧米諸国の発生量もそれほど高くなく、中国をはじめとするアジア諸国に、環境意識を高めてもらわなければ、海洋汚染は解決しないのである。

 環境省が16年度に全国10地点(稚内、根室、函館、遊佐、串本、国東、対馬、五島、種子島、奄美)で海洋の漂着ごみのモニタリング調査を実施したところ、容積1位は「プラスチック」(48.4%)、2位は「自然物」(41.3%)、3位は「木材」(7.0%)の順だった。環境保護のために、量が断然多く分解されにくいプラスチックを規制する法律を施行するのは、理にかなっている。

 プラスチックの内訳はどうなっているのか。容積1位は「漁網、ロープ」(26.2%)、2位は「発泡スチロールブイ」(14.9%)、3位は「飲料用ボトル」(12.7%)となっていた。ポリ袋は0.3%にすぎなかった。

 また、大きなサイズで製造されたプラスチックが自然環境中で破砕・細分化されたマイクロプラスチックの主因がレジ袋だというエビデンスもなく、法規制するに当たって、レジ袋がスケープゴートにされた感が強い。

●レジ袋はエコ意識の高い製品

 根本的な問題提起として、そもそもレジ袋は余りものを活用したエコ意識の高い製品なので、「誤解されている」といった意見もある。

 ポリエチレン製レジ袋を主製品の1つとしてきた清水化学工業(東京都足立区)では、清水充社長が公式Webサイトの代表あいさつで「原油をガソリン、重油等に精製した残りもの・余りものから生成されるポリエチレンは、その観点ではそもそも省資源です」と、綴(つづ)っている。つまり、石油資源を無駄遣いしているのでなく、いわば廃棄物を有効活用した製品なのだ。資源循環的で安価で丈夫。むしろ万人に喜ばれる、今日的に言えば、SDGsで通用する製品ではないだろうか。

 一方、同社は「海洋プラスチックごみの問題は、ポリ袋・ポリ包装材がその全体量に占める割合は小さいとはいえ、乗り越えなければならない課題であり、海洋生分解性ポリエチレン袋の開発などの解決策に弊社も真摯(しんし)に取り組みたい」と、さらなる技術開発への決意を表明している。

 なお、政府も全てのレジ袋を有料化せよと命じていなくて、バイオマス素材(植物由来原料)を25%以上使用、海洋生分解性樹脂配合率100%、厚さ50ミクロン以上、いずれかの条件を満たしていれば無料で配れる例外規定を設けている。

●次はプラ製のスプーンやフォークが有料化か

 さて、レジ袋有料化の延長線上で、今度は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が3月9日に閣議決定され、国会に提出されている。この「プラスチック新法」によって、お店で無料で配布されている、プラスチック製のスプーン、フォーク、ストローなど、使い捨てのワンウェイプラスチックが有料化される公算が大きい。ホテルで提供される、プラスチック製のくし、歯ブラシ、髭そり用のカミソリなどのアメニティーも有料化されるだろう。

 こちらも環境改善効果は微々たるもので、啓蒙第2弾となる。小泉環境大臣は3月9日の記者会見で、「これは初めてプラスチックという素材に着目した法律。あまねくプラスチックに関しては、資源循環、サーキュラーエコノミーが進んでいく」と新法の狙いを述べ、プラスチック資源循環の実現に対する意気込みを見せた。

 ちなみに、前出の環境省漂着ごみ調査では、「カトラリー(ストロー、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー)」はプラスチックごみの0.5%を占めるにすぎなかった。

 レジ袋やプラスチック製スプーン、ホテルのアメニティーの有料化も、消費者にすれば痛い負担増だ。地球に良いことをしていると自らを納得させても、それと引き換えに今まで無料だったものが有料になれば、実際は値上げや消費増税と同じ効果を持つ。

 レジ袋の辞退が予想以上に急増したのは、数円の少額とはいえ、毎日の出費に響くからだ。「マイ箸」のような「マイスプーン」の持ち歩きが一般化するかは微妙。ホテル業界にとっては、コロナ禍で打撃を受けている上に、さらなる逆風になるだろう。

 こうした実効性が希薄なわりには国民生活への影響が大きい、生活必需品を狙い撃ちにした有料化政策が何度も繰り返されると、買物が楽しくなくなる。コロナ禍で収入が減っている人も多く、消費が不活発になって経済が落ち込むことが懸念される。

●感染防止にプラ製品は有効

 感染予防の観点から、「新しい生活様式」で欠かせないのは、レジ袋に限らず、非接触性が高い衛生的な使い捨てのプラスチック製品だ。

 例えば不織布のマスク。その原料は主にポリプロピレンというプラスチックなのだ。

 また、外食におけるテークアウトの包装や、スーパーなどで今まで大皿から好きなだけトングで取るセルフ形式だった総菜を小分けするのに、プラスチック容器が使われている。感染症予防に最適な素材として、ワンウェイのプラスチックが重宝されている。

 小泉大臣の意気込む「環境に良いこと」と、ニューノーマルの生活様式は矛盾している。アフターコロナでも次の感染症に襲われるリスクを鑑みれば、「環境に良いこと」が持続可能かどうか疑わしい。

 政府は、脱炭素社会を目指して将来的に「炭素税」の導入を考えているようだ。レジ袋有料化はその布石の可能性がある。

 レジ袋や使い捨てのスプーン、ストローの海洋流出を防ぎたいなら、ポイ捨てを徹底的に防止すべきだろう。

 ポリエステルやポリプロピレンは、きれいに燃えて有毒な物質を発生させない。高性能の焼却炉で漏れなく燃やし、排熱を発電などに利用するサーマルリサイクルを推進すれば、それで良いのではないかと思えるのだ。

(長浜淳之介)