手元のスマホで多くの情報にアクセスでき、YouTube、SNSといったあらゆるツールで手軽に世界へ情報発信ができる。社会の変化に伴い、人生の選択肢は多様になった。さらにコロナ禍で社会の変化は加速している。

 そんななかで自分の中にブレない芯を立て、それを「やりきる」にはどうすべきか。ホリエモンこと堀江貴文氏が自身の経験から経営者に必要な「やりきる力」を語る。

 時間・お金の使い方、人間関係など日常生活に関わる事柄から、退路を断つ、のめり込む、頭を使う、熱中するといったビジネスマインドまで。自身が起こした宇宙事業や、過去の失敗エピソードを交えて経営者としてのメッセージを贈った近刊『やりきる力』(学研プラス)から堀江氏が考える「経営者に必要な能力」について語ってもらった。

●他人への投資こそ、一番賢いお金の使い方

 40代も後半になって、あらためて気づいたことがある。「こいつとは馬が合わない」とか「なんか嫌だな」と思ったら、付き合いをすっぱりやめるようになった。以前もそうだったが、それにも増して、割り切り方がハッキリしたものになってきたのだ。こうした変化も、あまたの経験を積み重ねた結果と考えている。

 一方で、前にも述べたように、無数の出会いを通じて気に入った人間に対しては、割と手厚くサポートしている。特に、若くてお金がない人がそうだ。人生の指針がしっかり定まっていない、けれど取り組み次第ではちゃんと突破できそうな人がいれば、目を掛けている。

 支援したところで大した見返りがあるわけではなく、後ろ足で砂を掛けられることも、しばしばだ。しかし、何かの道を見つけて羽ばたいてくれることもあって、支援のしがいがある。寺田有希さんは、そのひとりだ。

 知り合って間もない頃、彼女は所属していた大手芸能事務所を辞めた。売れないまま事務所から放り出されて、フリーになるしかなかった。20代そこそこでキャリアもまだ浅い彼女に仕事があるわけがない。そこで、僕は彼女に「僕の公式動画チャンネルのMCをやってみないか?」 と声を掛けた。

●批判の声もあった

 寺田さんの才能を特別に買っていたわけではない。知り合いの中で、彼女以上に芝居がうまく、売れる芽のあるタレントさんは他に何人もいた。そんななか、寺田さんを支援しようと思ったのは、「なんとなく」だ。

 彼女はとにかく、人柄がよかった。話していてストレスを感じない地頭のよさも好印象だった。「将来この人は売れる。だから、恩を売ろう!」なんていう打算は、一切ない。勢いというか、そのときのノリに任せて、名もなき若手俳優である寺田さんをサポートしようと決めたわけだ。

 寺田さんをMCに起用して、おおむね僕の周辺では好評だったが、批判の声もあった。「何であんな嚙みまくる人にMCをさせているんだ?」とか、「もっと堀江さんに興味がある人を使ってほしい」とか、いろいろと言われた。

 しかし、全然気にしなかった。公式動画のMC起用は、寺田さんがやろうとしている芸能の仕事を少しでもサポートしようと始めたので、他の人が入る余地はない。そもそもMCとしてのクオリティーを求めるなら、最初から寺田さんに声を掛けていないだろう。

 最初は知識が足りなかったり、思考が古かったりと、“まだまだ”の部分が目立っていたが、寺田さんは彼女なりに数年間、勉強を積んできた。次第に芸能の仕事のオファーが増え、活動の幅が広がってきた。そして、ついには初のビジネス書『対峙力』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))を発表した。これがよくまとまっている本で、感心した。

 かつて仕事がなく苦しんでいた寺田さんが、自分の工夫でやれることをやりきり、作家デビューまで果たしたのだ。そこまで粘れる根性は、なかなかのものだ。支援してきた身としても、彼女の成長は喜ばしい。

●他人にお金を使うのは「確実」

 寺田さんに限らず、無名の若者の支援は同時に行っている。

 芸人の「みのるチャチャチャ♪」も、そのひとりだ。僕のミュージカルやイベントに彼を呼べば、MC的に便利に動いてくれる。芸人としての知名度は低いが、フットワークのよさは彼の魅力だ。人狼チャレンジの動画配信も頑張っているので、何かのきっかけで大きく世に出るかもしれない。

 堀江貴文というマージンが利く場面で、若い仲間たちのサポートをするのは当たり前の行為だと思っている。彼らに感謝されたいわけではない。篤志家を気取りたいわけでもない。僕はマージンが他の著名人よりも大きいので、多くの若者を支援できる余裕がある。 余裕があるから、やっているだけ。気分が乗ったときに「お前、手伝うか?」と、若い人に声を掛けているような感じだ。

 こうして、いろいろな若者をサポートしていると、新たに見えてくることも多い。僕のフィルターを通しては出会えない、若い人たちの面白空間や、目新しい思考を体験できたりもする。たえず情報のシャワーを浴び続けている毎日の中で、僕の興味が動く瞬間。それが、投資に対するリターンの1つといえるかもしれない。

●他人にお金を使いまくれ!

 そもそも僕は、「自分への投資」という言葉があまり好きではない。未熟な能力を伸ばすために自分に投資することは悪いことではないけれど、そのリターンなんて、たかが知れている。それより投資すべきは「他人」に対してだ。

 賢いお金の使い先を聞かれたら、「他人に金を使いまくれ!」と答えたい。

 他人にお金を使えば、自分の力では手に入らない“未知のリターン”が返ってくる。だから、ビジネスで大きく儲(もう)けている人はみんな、若い人や有能なスタッフにガンガンお金を投じている。お金持ちほど、自分の収入が増えることには無頓着なのだ。

 自分への投資と言いながら、目的が定まらないまま、英語や法律の勉強をしている若者がたくさんいる。それが楽しいのならいいけれど、つらいことを無理やり続けて何になるのだろうか。それよりも、英語がペラペラの通訳や、弁護士を雇ったほうが早いんじゃないか? アウトプットのレベルも確実に高いだろう。

 まず、自分が本当に目指すべき目標が何なのか、それを明確にするべきだ。それでこそ、あなたの中にやりきるエネルギーが生まれてくるだろう。そしてその目標の延長線上に英語や法律がないのなら、その勉強は投資とは呼べない。

 豊かな人生を過ごしたい。誰でもそう思う。でも多くの人は、思い付きで底の浅い自己投資で、お金を枯渇させている。

 他人の能力にお金を払って、やりたいことを手伝ってもらったり、そこから仲間になって一緒に遊ぶ。それが、一番確実なリターンの見込める投資ではないだろうか。