たこ焼きを食べるシーンといえば、大きくわけて3つある。お店で食べる、家でつくる、冷凍を買ってくる、だ。その3つの中で、どのたこ焼きがおいしいか? と聞かれると、1位「お店」、2位「家」、3位「冷凍」と答える人が多いかもしれない。

 「いやいやいや、そんなことはないで。ウチの家でつくるたこ焼きはサイコーや」と関西在住の人からツッコミが入りそうだが、その気持ちはよーく分かる。筆者も大阪で生まれ、大阪で育った人間である。天かすをあまり入れない店に出会うと、「むむ、この店は分かってないなあ」とうずうずしてしまうほど。おいしいたこ焼きは「店か、家か」の議論はわかれるところだが、3位の「冷凍」は不動である。

 ……と思っていたが、とある商品がじわじわ売れていることをご存じだろうか。テーブルマークの冷凍食品「ごっつ旨い大粒たこ焼」(以下、大粒たこ焼)だ。

 同商品は2009年3月に発売し、その後の売り上げは右肩上がり。20年は前年比130%を達成し、21年も前年を上回るペースで推移しているのだ。「冷凍たこ焼き」カテゴリーのシェア3割を占める同商品は、どのように開発して、なぜ売れているのか。その秘密を探ってみた。

●開発担当者は大阪のたこ焼きを参考に

 大粒たこ焼の開発にあたって、担当者は単身世帯のデータに注目した。総務省統計局の調査によると、1980年の単身世帯は19.8%だったが、2005年は29.5%に上昇している。商品担当の福本真之さんは「単身世帯が増えていたので、一人暮らしの人をターゲットにして、個食タイプの6個入りを販売しました」(18個入り、40個入りも販売)とのこと。

 それまでの冷凍たこ焼きといえば、20個ほど入った中袋、40個ほど入った大袋がよく売れていたが、一人暮らしの人が「おつまみ」「スナック」として楽しんでもらうために、6個入りの商品を販売することに。また、当時の重さは1個20グラムが多かったが、1個30グラムにして食べ応えがあるモノとした。

 そして、売れている最大の要因として、個人的には形状を変えたことが大きいと思っている。

 10年以上前の話になるが、それまでの冷凍たこ焼きといえば、「釣り鐘状」の形をしたモノが多かった。テーブルマークも釣り鐘状の商品を展開していたが、大粒たこ焼シリーズを販売するにあたって、たこ焼き本来の形である「球体状」にしたのだ。

 冒頭の話に戻るが、どのたこ焼きがおいしいか? と聞かれ、以前の「冷凍」であれば不動の3位だったわけだが、球体状にして「外はカリっ、中はトロリ」を実現。食べた人からは「あれ? 以前のモノは食感がフニャフニャしていたのに、コレはお店の味に近くなったなあ」「家でつくるモノよりも、おいしいかも」などと感じ、リピーターが増えていったのではないかと思っている。

 そして、巷(ちまた)では「どのたこ焼きがおいしいか?」論争が繰り広げられ、不動の3位だった「冷凍」の地位が上昇しているかもしれない。

●消費者の“胃袋”をつかむ

 では、その球体状のたこ焼きは、どのようにして開発したのだろうか。当時、開発チームは大阪中のたこ焼き店を駆け回って、職人さんのワザを徹底的に研究したそうだ。くるくる回してつくるにはどうすればいいのか。人件費の安い海外でつくることはできるが、スーパーで購入する人たちは「国産嗜好(しこう)」が強い。ということもあって、国内でつくりたいが、人件費がネックになっていた。この課題を解決するためには、どうしても工場に機械を導入しなければいけなかったのだ。

 ちなみに、いまは自動でたこ焼きをつくってくれるロボットがある。例えば、調理ロボットを展開しているコネクテッドロボティックスは、世界初のたこ焼きロボットを開発し、2018年には長崎のハウステンボスに導入した。その後も、さまざまなところで導入が進んでいるわけだが、当時のテーブルマークは職人ワザを再現した機械を導入したのだ。

 熱した半円状の型に生地を流し込んで、そこにタコを入れ、じっくりと表面を焼く。表面がカリっとしてきたら、2つの型を合わせて丸い形をつくる。最後に、表面が焦げ付かないように、型全体を揺らしながらくるくると転がして、まん丸のたこ焼きを完成させている。

 工程をこのように書いても、読者には伝わらない部分があるかもしれない。商品を完成させるまで、試行錯誤が続いたからだ。

 「外はカリっ、中はトロリ」を実現するのに、試練が待っていた。火加減がうまくいったと思ったら、配合を変えなければいけない。配合を変えれば、火加減を変えなければいけない。といった感じで、バランスをとるのがとにかく難しかったのだ。

 このほかにも、野菜の収穫時期によって水分量は違ってくるし、季節によって工場の湿度が変わってくる。そのたびに、バランスを調整して、うまくいかなければ、また調整して……。何度も何度も繰り返すことで、やっと「外はカリっ、中はトロリ」とした商品が完成し、あとは消費者の“胃袋”をつかむだけになったのだ。

●“熱い”状態が続く

 商品は完成したものの、ターゲットとなる単身世帯に食べてもらわなければいけない。先ほどの単身世帯のデータを見ると、05年は29.5%だったのに対し、15年には32.4%と2.9ポイントの増加だ。と、ここまで書いて「じゃあ、2020年はなぜ前年比130%だったの? ちょっと伸びすぎなのでは?」と感じられたかもしれないが、この商品は新型コロナの影響を強く受けたのだ。

 在宅勤務の人が増えて、「今日の昼は冷凍のたこ焼きにしようかな」といった人がどんどん増えて、そうした層を取り込むことに成功した。また、外出を控えた人たちは、スーパーに足を運ぶ回数を減らし、たまに行ったときには40個入りを購入する。結果、売り上げが伸びていったわけだが、こうした流れは、今年も続いているといった具合なのである。

 ちなみに、たこ焼きは「関西人のソウルフード」といった言葉を聞いたことがあるが、「大粒たこ焼」の売り上げもやはり関西圏が圧倒しているのだろうか。1店舗当たりの販売数をみると、首都圏に比べて関西圏は1.5倍ほど売れているようで。この数字が「高い」のか「低い」のか判断することが難しいが、17年のデータと比べると、首都圏の販売数が10%ほど伸びている。ということは、たこ焼きを食べる文化は、東で暮らす人々の間でもじわじわ広がりつつあるようだ。

 さて、気になるのは今後のことである。総務省のデータをみると、単身世帯は15年の34.5%から、40年には39.3%になるのではないかと予測している。市場はまだまだ拡大するようで、冷凍たこ焼きは“売り上げという坂”をコロコロ昇っていきそうである。

(土肥義則)