米国では、決済、送金、銀行(ネオバンク)などの領域においてさまざまなFintech企業が大きく成長し、加えてUber(ウーバー)やApple(アップル)のような他業界のメガテック企業からもFintech領域への事業進出が加速しています。

 個々のサービスの説明は省略しますが、以下の企業はその代表的なプレイヤーです。

・個人間送金:Venmo(ベンモ、PayPalの子会社)、Cash App(キャッシュアップ、Square)

・給与早払い:Earnin(アーニン)

・デビット/プリペイドカード:ウーバー、Doordash(ドアダッシュ)、affirm(アファーム)

 どれもが、従来は銀行などの伝統的な金融機関によるサービスがメインであった領域に、モバイルとインターネットの力を武器に優れたユーザー体験(使いやすさ、価格、品質)を提供することで市場を席巻しています。

 これらのサービスには、一つの重要な共通点があります。それは、すべて伝統的な銀行との連携サービスであるということです。

 過去からずっと銀行界が培ってきたネットワーク、インフラ、信用力は、Fintech企業にとってぜひとも活用したいアセットです。具体的には、銀行の持つアカウント管理機能、本人確認(KYC)、送金インフラ、国際ブランド(Visa/Master Card)カード発行などのインフラがその典型です。

 上述したプレイヤーたちは、銀行のアセットを利用しつつも、自社サービスとして統一感あるUI/UXを徹底しているため、ユーザーはその裏にいる銀行を強く意識することはありません。

●Fintechサービスの裏側

 では、これらのFintechサービスの仕組みの裏側はどうなっているのでしょうか?

 これらのFintechサービスと銀行システムの間はAPIでデータ連携されています。インターネットを通じてFintechサービスが、銀行側が用意したAPIを経由してそれぞれの事業に必要なデータを取得しているのです。これだけ聞くとシンプルな仕組みに思えるかもしれません。

 しかし、米国内には1万を超える金融機関が存在するため、広いユーザー層にサービスを提供しようと思うと、これらの金融機関とそれぞれシステム接続しなければなりません。事業スピードが何よりも大事なFIntech企業にとって、これは非常に大きな課題です。

 この課題を解決しているのが、Plaid(プレイド)という会社です。昨年にVisaが買収計画を公表(その後、撤回)したことで一躍有名になりました。プレイドは銀行などの金融機関の提供するさまざまなAPIを束ねてワンストップで提供しています。Fintechサービスは時間と工数をかけて1万もの金融機関に接続するのではなく、プレイドシステムのみに接続するだけで、同社が束ねている金融機関のAPIを利用することが可能になります。

 米国で生活していると、ほとんどのFintechサービスでプレイドが登場します。ユーザーは各サービス(その多くはスマートフォンのアプリ)を利用する際に、そのサービスを通じたプレイドへの個人データ連携許可を求められるのです。これを許諾することで、プレイドにひも付けている自分の銀行口座の情報が各Fintechサービスに連携されることになります。

 プレイドの存在はユーザーにとっても大きな価値があります。自分の銀行口座とのデータ連携を許諾する際には認証行為が必要となりますが、さまざまなサービスにプレイドが導入されているので、ユーザーはどのサービスにおいても統一的なUX/IXで認証を行うことができるのです。

●事業戦略に注目

 プレイドが銀行とFintechサービスを結びつけることで、米国ではさまざまな革新的なプロダクトが生まれています。Visaがプレイドの買収を目論んだように、プレイドは次世代のFintech経済圏の中で、中心となりうる立ち位置にあります。

 また、プレイドだけでなく、銀行サービスのAPIハブという新しい立ち位置を狙う企業はほかにもあります。例えばGalileo(ガリレオ)は20以上の銀行とAPI接続しており、プレイドと同じように銀行口座開設、カード発行、ACH/Wire送金(米国国内外への送金)などを行えます。

 Marqeta(マルケタ)はデビットカード/プリペイドカードを発行することのできるAPIを提供しています。さまざまな新興企業がマルケタのAPIを利用することで、ユーザーに簡単にカード発行をすることが可能となります。

 マルケタは21年6月にナスダック上場し、その財務状態が明らかになりました。売り上げは順調に伸びているように見えるものの、Fintechサービスの重要KPIであるTake Rate(決済取扱金額から得られる売上比率)は下降傾向にあることが分かります。顧客であるFintechサービスが成長すればAPIゲートウェイとしても規模が拡大する。しかし、同時に強大化するFintechプレイヤーからの値下げ圧力が強くなるというビジネス構造であることが分かります。

 APIゲートウェイはこの顧客成長に伴う収益率圧縮のトレンドの中、どのような形で成長をしていくのか。今後のFintechトレンドを考える上でも彼らの事業戦略は注目です。

(中山悠介)