「ポポーポポポポ、ポポーポポポポ、ポポポポポ」――。スーパーで買い物をしていると、このようなメロディーを聞いたことがある人は多いはず。あの音を流しているのは「呼び込み君」というアイテムで、群馬県にある「群馬電機」(みどり市)が開発している。2000年から販売していて、これまで4万台以上も売れている“ロングセラー”商品なのだ。

 「呼び込み君」の高さは20センチほど。それをギュっと小さくして、高さ5.3センチのミニトイが登場する(12月予定)。プラモデルメーカーの青島文化教材社(静岡市)が「スーパーサウンド『呼び込み君』ミニ」(以下「呼び込み君」ミニ、792円)という名称で販売すると発表したところ、SNS上で話題に。

 「呼び込み君が出世している」「スーパーで本物を見てくる」「これは絶対に買わなきゃ」といったコメントが相次ぎ、予約注文が殺到。想定を上回る注文が入ったので、現在(10月23日時点)は受け付けを中止している。発売1カ月前に「ヒット商品」確定となったわけだが、開発はどのように進んだのだろうか。青島文化教材社・企画開発部の金田辰也さんに話を聞いた。

●かわいらしい“働き者”を手元に

――「呼び込み君」のミニトイの反響がスゴいですね。開発はどのような経緯で進んだのでしょうか?

金田: スーパーに行くと、「ポポーポポポポ」と聞こえてきますよね。「どこから聞こえてくるのかなあ」「どんなアイテムから聞こえてくるのかなあ」といったことが気になっていました。音の発生源を追いかけていくと、かわいい筐体(呼び込み君)から流れていることが分かってきました。

 「ポポーポポポポ」のメロディーを聞いたことがある人は多いはず。日常の中で、「聞いてみたいなあ」というニーズがあるのではないかと考えて、企画会議で提案してみました。その会議に出席していた人から「あのかわいらしい“働き者”を手元に置いておきたい」「小さなサイズで販売すれば、ウケるのではないか」といった声があって、実物を製造されている群馬電機さんに提案したところ、快諾していただきまして。ミニサイズの商品として企画を進めることにしました。

●予約注文が殺到

――商品開発にあたって、こだわったポイントを教えてください。

金田: 実物の高さは20センチに対して、ミニトイは5.3センチ。小さくしても、実物と変わらないほどのかわいらしさを出さなければいけません。試作品をつくって、何度も形状を修正しました。

 そんな中で、最もこだわったのは音。「ポポーポポポポ」の音が不自然であれば、ユーザーは納得してくれません。「物足りないなあ」と思われないために、どうすればいいのか。実物の「呼び込み君」は長時間流せるように、メロディーをループさせているんですよね。延々と終わらない形にしているわけですが、ミニトイで同じようなことをしてもメリハリを感じにくくなるのではないかと考えました。

 「くどいなあ。もういいよ」と思われないように、音は何秒くらい流せばいいのか。いろいろと検討した結果、20秒ほどが適正ではないかという話になって、中央のボタンを押すと20秒ほどメロディーが鳴るように設計しました。

――商品は10月18日に発表して、SNS上でものすごく話題になりました。消費者の反応をどのように受け止めましたか?

金田: 2021年5月にホビーショーが開催されまして、そこで「呼び込み君」ミニを発表しました。そのときも反響が大きかったので、今回もそこそこウケるのではないかと思っていました。ただ、反応が気になって気になって、SNSのコメントを何度も読み返しました。ものすごい勢いで拡散されていって、リツイート数が1万を超えたときには、社内でも騒然としました。

 商品発表と同じタイミングで、予約受付を始めたのですが、リツイート数が増えていくスピードと連動するように、注文もどんどん増えていきまして。翌日、緊急会議を開きまして「このまま注文が増えていけば、どうすればいいのか」「増産はできるのか」など、さまざまなことを議論しました。

 その一方で、不安もありました。こうした商品は“ネタ扱い”されて、売り上げはいまひとつといったケースがあるんですよね。SNS上で落ち着きがでてくると、予約数も減るのではないか。このような事態も考えていたのですが、その後も衰えることなく、注文数はどんどん増えていきました。このまま受け付けると、お客さまに提供することができなくなるのではないか。想定を上回る反響が続いて、残念ながら21日の昼過ぎに予約受付を一旦中止することにしました。

●“体感温度”が下がる

――商品を発表して、4日もたたずに「完売」したわけですね。想定以上に売れた要因は、どのように分析していますか?

金田: スーパーや量販店の一角で「呼び込み君」のメロディーを聞くことができるので、多くの人が一度は聞いたことがあるはず。老若男女が耳にしているので全年齢層がターゲットになるかもしれませんが、やはり20〜30代でガジェット好きな男性がメインになるのではないかと考えていました。

 実際、予約を受け付けてみて、そうした層の購入者が多いのですが、小さな子どもがいる親御さんからの注文も多いんですよね。購入理由をみると「子どもと一緒にスーパーに行くと、ポポポーの音が気になるみたいで。音の発生源を見つけ出すために店内をウロウロしているので、家に一つあってもいいかな」といった声がありました。

 この商品の最大の特徴は、ボタンを押すと、まるで自分がスーパーにいるような感覚を味わうことができること。こうした感覚を味わいたい人から、予約が入ったのではないでしょうか。個人的には、生鮮食品コーナーで「ポポーポポポポ」の音が鳴っているイメージがあるので、“体感温度”が下がるような感じがするんですよね(笑)

(土肥義則)