日本のキャンピングカー市場が拡大しています。

 キャンプやアウトドア市場が拡大するに従って、関連する商品やサービスがよく売れるようになっています。中でも、アウトドアの代名詞ともいえるキャンピングカー市場が盛り上がっています。市場の拡大と共に細分化が始まり、まったく新しいコンセプトの車が登場して注目されています。

 販売単価が大きく、これからの成長が確実なキャンピングカー市場について、小売り・サービス業のコンサルティングを30年間続けてきたムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸が分析していきます。

●市場への新規参入が相次ぐ

 コロナ禍によりプライベートな空間で過ごす時間が長くなり、働く場所を見直す人が増えています。また、自然豊かな環境への移住・移動に対する関心が急速に高まっています。

 日本のアウトドア市場はここ数年拡大が続き、2019年には5169億円となりました。20年の予測値はコロナの影響もありマイナス予測(アウトドア用品の卸・小売りなどの数値が落ちるため)ですが、21年以降は順調に拡大していくと推測されます。特に「ライトアウトドア」分野といわれる、キャンプやBBQ、釣りやボートなど海・川・山でのレジャー、スポーツは注目分野です。どちらかというと、気軽に楽しめるアウトドア市場が拡大しているのです。

 20年にはビックカメラが都内にアウトドアの大型専門店「ビックアウトドア立川店」を開発したり、フランスのアウトドアSPAブランド「デカトロン」の大型店が日本に進出するといったように、店舗の開発が増加しています。また、ワークマンがアウトドアウェアを開発するなど、異業種からの参入も相次いでいます。

 市場は異業種参入をきっかけに拡大します。アウトドア市場が本格的に成長するのは22年以降であると筆者は予測しています。

 特に私が注目しているのが「キャンピングカー市場」です。特に「移動」に制限のかかった20〜21年に、他人との接触が比較的少なく、自由に移動できるキャンピングカーやトレーラーハウスに注目が集まりました。この市場はどのような変化を遂げているのでしょうか。

●伸びる日本のキャンピングカー市場

 キャンピングカー・ビルダーやディーラーが加盟する日本RV協会の「キャンピングカー白書2021」によると、20年における日本のキャンピングカー保有台数は12万7400台で、前年比106.7%と増加しています。保有台数は16年に10万台を突破し、12年以降は右肩上がりで増加しています。

 この市場は通常、特殊用途自動車となる8ナンバーの新車・中古車のいわゆる中・大型キャンピングカーと、軽自動車などをベースにした8ナンバー以外の新車・中古車の小型キャンピングカーで構成されています。データには含まれていませんが、けん引するタイプのトレーラーハウスも、アウトドア市場を支える「移動する車」として注目されています。米国では、モノを持たないミニマルな生活を実現できる小さな家を「タイニーハウス」と呼んでおり、その家をけん引して、移動しながら暮らす人達も増えています。

 キャンピングカー全体では20年の総売上高は582億円。前年比110%と保有台数以上の伸長率です。キャンピングカー・ユーザーがここにきて新たに買い替えたりしていることで、新規ユーザーと共に購入が増えているということです。特に8ナンバーの新車、8ナンバー以外の新車が伸びており、1台当たりの単価も上昇しています。キャンピングカーは、そのサイズや車種などが、市場拡大に伴って細分化・多様化し始めているのです。

●移動・移住によって遊びや暮らしの多様化が進む

 コロナ禍によりリモートワークが増え、他の人と接触せずに移動できる自分たちだけの空間を持ちたいと考える人が増加しています。これを「プライベート空間市場」と名付けます。この市場は、次のようなポジショニングマップで表せます。

 プライベート空間市場にはさまざまなものが混在しています。

 「自分だけの時間・空間を楽しむことができる固定あるいは移動式の空間」と定義すると、その市場には大きく分けて、住宅と車の2種類が存在します。

 住宅では一般住宅を基本に、中古や空き家のリノベーション、別荘や二拠点居住などの移住用の住宅があります。また、増築による空間もプライベート空間と呼べるでしょう。

 しかし、いずれも高額であるというのが特徴です。中にはサブスク型の多居住サービスを提供する「ADDres」や「airbnb」があります。これらの宿泊サービスを活用するアドレスホッパー(定住先を持たずに場所を転々とする人)も出現していますが、そうしたノマド生活ができるだけの安定した資産や仕事を持っている人はまだ少ないのが実態です。

 安価なものではプレハブ小屋やコンテナハウスなどもありますので、デザインにこだわらなければ、プライベート空間を確保することはそれほど難しくありません。

 一方、移動するための手段である車には、さまざまな企業が参入し始めています。

 正確には、自走できるキャンピングカーと、けん引車があれば移動できるトレーラーハウスです。今、特に注目されているのがトレーラーハウスです。けん引するクルマの後ろに、プライベートな空間をもった部屋がくっついていることになります。スノーピークや無印良品などもこの市場に商品を投入していますが、最近、まったく新しい商品がこの市場に登場しました。

 それが、走るログ小屋「IMAGO」です。れっきとしたログでできた小屋ですが、なんと、車輪がついている可動式ログ小屋なのです。

 日本でもっとも多くのログハウスを販売してきている住宅メーカーのアールシーコア(東京都目黒区)が企画開発した「車」です。9月末にプレス発表して以降、各メディアから取材が相次ぎ、10月16日の発売前から予約が相次ぐヒット商品となっています。

 実は、同社では走るIMAGOの原型となる商品を16年から販売してきました(現在も販売中)。累計550台以上販売されてきた固定式のログ小屋ですが、21年4〜8月は売り上げが前年比221%です。このような動きが20年から見られたため、同社では「アウトドア好きな当社のユーザーが、この小屋を外に連れ出せるようにしたら、予想外の暮らし方や楽しみ方が生まれ、面白がってくれるのではないか」(同社・永井聖悟専務)と考え、車輪付きの可動式ログハウスを開発したのです。市場があるから作ったわけではなく、新しく市場を作るという発想で生まれた商品である点が最大の特徴です。

 IMAGOは2種類あり、両タイプ共に重量が2000キロを超えるため、動かすためにはけん引車とけん引第一種免許が必要です。また、車であるため、車検費用やナンバープレートの交付、自動車税の納付なども必要になります。一方、建物ではないので、建築確認申請が不要です。基本的に、自由に移動したり、設置したりすることができるようにしています。海沿いに移動してそこで釣りを楽しんだり、野原の真ん中でターフを張って家族でBBQを楽しむなど、さまざまな用途が想定されます。

 また、20フィートタイプの「IMAGO X」は企業からの問い合わせが殺到しています。広さが11平米ほどある室内を利用して、POP UP店舗やショールーム、移動販売店舗として活用したいと考える企業が多いようです。好きな時に好きな場所で商売できる移動販売は20〜21年にかけて増加しました。この流れは今後も続くと思われます。そのような中、デザイン性に優れて、自然派の同商品は法人利用も一気に増えていくでしょう。

 同社では22年度に年間1000台の販売を予定しています。デザイン性が高く、リーズナブルな同商品はこれからさまざまな場所で見かけるようになるかもしれません。

 固定された自分だけの空間を持っている人は多くいます。また、自家用車のように自分だけの移動手段を持っている人もいます。しかし、「移動可能なプライベート空間」を持っている人はまだ多くはありません。日本のキャンピングカー保有台数は12万台なので、日本人のおよそ1000人に1人しか持っていないということを意味します。これにトレーラーハウスを加えても状況は大きく変わらないでしょう。しかし、移動できるプライベート空間の価値を知ったら、保有したい人はさらに増えるのではないかと思います。キャンピングカーなどは、災害時にシェルターとしての役割も果たします。最近、この機能が見直されています。単に移動するだけの車はこれからは淘汰されていくのです。

●異業種だからこそ作れた車の価値

 著作家の山口周さんにお会いした際に、「これからの社会では、役に立つことより意味があることのほうが価値がある」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。また、「自動車業界が提供する価値の市場」として、「役に立つ/立たない」「意味がある/ない」という4象限で自動車の価値を表現されていました。そのフレームワークに落としこむと、キャンピングカーや可動式IMAGOという商品は、次のように位置付けられると考えます。

 先の可動式IMAGOはけん引免許が必要であり、定期的に車検を通さなければなりません。自分で色を塗ったり、定期的なメンテナンスも必要です。手間がかかる、面倒な車です。

 しかし、この商品を欲しい人が殺到している状況を見ると、役に立つだけでなく、その車に「意味」を感じている人が多くいることが分かります。意味を感じるとそこに希少性が生まれ、新しい商品として認知されやすくなります。それが成熟した市場の中で勝ち残るためのポイントとなります。

 これは住宅メーカーのアールシーコアのような会社だからこそ作りだせた価値といえるかもしれません。

 役に立つより、意味のある商品を作る。

 成熟市場で商品を売るためのヒントがここにあります。

(岩崎 剛幸)