緊急事態宣言が明けて早1カ月が過ぎようとしている。段階的な規制緩和のおかげかワクチン接種率の向上からか、新規感染者数は日に日に減少し始めた。いよいよ経済活動の復活による消費活性化を期待したい。

 アパレル企業各社の業績を見ると、企業によって明暗が分かれている。2020年のはじめから続くコロナ禍で、人流に変化がおきて生活者のライフスタイルも変わった。生活者のライフスタイルの変化に、いち早く対応できた企業と、できなかった、あるいは出遅れた企業とでは業績に差が生まれたように思う。

 そこで今回は、ユニクロと洋服の青山の業績を見ながら、それぞれの企業が抱える現状打破しなければならない課題について考えてみたいと思う。

●宣言解除でビジネスウェア市場は回復するのか

 緊急事態宣言が解除され、リモートワークを実施してきた都内のビジネスパーソンにも“出勤命令”が出始めている。慌ててクローゼットの中からスーツを引っ張り出してみたところ、カビが大量に付着していて着られない……。急いでクリーニング店に駆け込んだり新たにスーツを購入しようとしたりする動きもあるようだ。

 しかし、全体的にみるとそうした動きは少数派のようで、一度カジュアルダウンさせたビジネススタイルをドレスアップさせていくのは、開放的な着用感を味わってしまったが故にそれ相応の理由がないかぎり、なかなか元へは戻らない。

 そこで、紳士服最大手「洋服の青山」を展開する青山商事の業績について触れてみたい。20年4月〜21年3月期の売上高は1614億円(前年比25.9%減)、営業損益144億円の赤字(前期は8億円の黒字)、純損益は388億円の赤字(前期は169億円の赤字)という厳しい決算となった。

 今期のビジネスウェア事業は、コロナ前の売り上げ(18年実績売上高1821億円)から、約37%減となる1150億円を想定。その減少分を、DX戦略と成長分野(オーダー、レディス、フォーマル、制服レンタル、その他)の拡大で補っていく考えだ。これらを2年がかりで成長させ、23年の売上高を1400億円にする計画。

 本業のビジネスウェア事業に関しては、リブランディングを図っていくようだが、これらの施策が現実に起きている客離れの防止策となっているのか。今まで買い上げてくれていたお客が、どこに移っているのか。もう少し分析を進めていく必要があるのではないかと思う。

●ユニクロは巣ごもり需要の獲得も“税込表記”が影響

 一方のカジュアルウェアはどうか。ファーストリテイリングが発表した20年9月〜21年8月の国内ユニクロ事業の売上収益は8426億円(前年比4.4%増)、営業利益1232億円(同17.7%増)の増収増益だった。上期(20年9月〜21年2月)は、コロナ禍の巣ごもり需要にマッチしたラウンジウエアやヒートテック毛布などの販売が好調だったが、下期(21年3〜8月)は、4月から消費税を本体価格に含めた施策からつまずきが始まり、販売不振による売価変更も影響した。

 22年8月期通期の業績予想では減収減益を見込む。上期は、前年の業績が好調だったことに加え、生産遅延なども含め大幅な減収減益を見込む。下期は、若干の増収、営業利益は大幅な増益を予想している。

 ユニクロのようなベーシック商品指向型企業となると、規模があまりに大きくなってしまっているせいで、動きがどうしても鈍くなっているようだ。

 10%の消費税を本体価格に吸収させた上で例年並みの売り上げを出すには、売上数を大幅に増やす必要がある。また、例年並みに利益を確保するには相応に安く仕入れなければならない。展開する商品には、2〜3年継続して販売する商品も含まれていて、商品の入れ替え自体にも時間を擁していることが影響しているのだと分析する。

●気候変動がアパレル業界に与えるリスク

 ユニクロも含め、アパレル関連企業は9〜2月の秋冬商戦でしっかりと稼いでいくのが定石。アパレル企業の倒産が、冷夏よりも暖冬の方が圧倒的に多いのもそのためだ。

 気候変動がビジネスリスクに与える影響はますます大きくなっている。実際に9月後半頃まで続いた高気温の中で、長そでを始めとした秋物の商品の売れ行きは鈍かったが、寒気が入り込み気温が低くなった途端に商品が動き出す。

 もはやこれは、温暖化とか暖冬といった次元の話ではなく、気象現象が極端に振れる極端現象によるものだ。この極端現象とは日最高気温が35度以上の猛暑日や1時間降水量が50ミリ以上の強い雨などが特定の指標を超えて頻発することを指す。

 今年の冬は、熱帯太平洋の海面水温分布が“ラニーニャ”の特徴を示しつつあるようだ。ラニーニャとは、南米沖などで水温が低く日本南海上などで高めになる現象。そうすると、上空の風の流れに影響を及ぼし日本付近では寒気が南下しやすくなる事が多くなる。ラニーニャ現象のピークは、21年11月〜22年1月で、今年は20年並みに厳しい冬になる可能性があるとの予想が出ている。

 今年の冬にラニーニャ現象が現れれば昨年並みの寒さが期待できるが、中国工場の停電、東南アジア地域によるロックダウンによる商品の納期遅れが懸念材料になっている。そこに原綿、ポリエステル含めた原料高、更に円安傾向と、供給サイドにとっては、悪条件ばかりが目立つ。

 緊急事態宣言が解除され、生活者のライフスタイルがまた変わる。以前起こったようなリベンジ消費は、給付金支給タイミング次第といったところか。いずれにせよ、ライフスタイルの変化には必ず商機が生まれてくる。そこを見逃さず俊敏に対応できる企業姿勢を望んで止まない。

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)