天井に取り付ける照明器具、シーリングライトにプロジェクターとスピーカーを搭載した「popIn Aladdin(ポップイン アラジン)」シリーズが、コロナ禍でヒットしている。2020年4月に発売した「popIn Aladdin 2(ポップイン アラジン 2)」は1年半で10万台、シリーズ累計で15万台を突破した。

 同製品を開発したのは、東大発ベンチャーとして08年に誕生したpopIn(ポップイン)。15年の経営統合により、中国のバイドゥの100%子会社となったが、事業は独立して行っているそうだ。

 ポップインは、21年9月に据え置き型プロジェクター「Aladdin Vase(アラジン ベース)」を発表し、予約を開始した。同社が据え置き型を開発した背景、ハードウェア事業の戦略を中国出身の程 涛(テイ・トウ)社長に聞いた。

●邪魔にならないライト一体型プロジェクター

 ポップインは、18年に初代の「ポップイン アラジン」を発売(現在は終売)。20年に進化モデルとなる「ポップイン アラジン 2」と安価タイプの「ポップイン アラジン SE」が発売され、21年12月下旬から新製品の「アラジン ベース」を発売予定だ。

 「ポップイン アラジン 2」および「ポップイン アラジン SE」は、いずれもシーリングライト一体型で、家庭用の引掛シーリングに取り付けて使用する。ライトを点灯させつつ、同時にプロジェクターとしても使えるというワケだ。このような形状にした理由は、「市販のプロジェクターは日常利用に不向きだったから」とのこと。

 「自宅で子どもの教育コンテンツを映す目的で、市販のプロジェクターを購入したところ、とても置き場所に困ってしまって。十分な投影距離を取るために生活の導線に機材を置く必要があったのですが、大きくて邪魔になるし、子どもが落としたり、光源をのぞいてしまったりする危険性も。日常的に使うには、邪魔にならない仕様が必要だと感じました」

 プロジェクターには天吊りできるタイプも多いが、専用の金具で固定したり、落下を防ぐワイヤーを取り付けたりする必要があり、基本的に業者に依頼しなければならない。一方、「ポップイン アラジン」は工事不要で取り付けられ、ライトとして併用可能。これが、同製品の最大の特徴になる。

 程氏は「機能では勝負していない」と話しており、プロジェクターとしての機能は家庭で不満なく使える程度。ただ、「ポップイン アラジン 2」には専用の短焦点レンズを搭載し、短い設置距離でも大画面でフルHDの画質を鑑賞できるようにした。また、ネットフリックスやアマゾンプライム、ユーチューブといった動画サービスのほか、独自の教育コンテンツや世界の風景なども搭載する。

 いずれもライトを落とした寝室での使用を想定しており、最大の明るさは「ポップイン アラジン 2」で700ルーメンと高くない。ただ「明るい部屋でも見える」という口コミもあり、実際に取材中に明るい部屋で映した画面を見せてもらったところ、思いの外しっかり見えるという印象だった。

●低価格で販売し、コンテンツ課金を狙う戦略

 発売価格は「ポップイン アラジン 2」が9万9800円、「ポップイン アラジン SE」が7万4800円、「アラジン ベース」が6万9800円(いずれも送料込み)。発売中の2製品は、一般企業の通販サイトで2万円ほど安く販売されている。

 プロジェクターの価格帯はピンキリで、1万円を切る安価な製品から10万円以上の高スペックの製品までさまざま。1万円前後でも、そこそこのスペックの製品が手に入る。そう考えると「ポップイン アラジン」は決して手頃な価格とはいえないが、程氏いわく「短焦点レンズを使用している製品では、価格設定が安い」とのこと。

 短焦点レンズを採用したプロジェクターに絞って調べてみると、多くは10万円前後の価格帯だ。高いものだと20万円、30万円を超えるものも。確かに、ライト一体型と考えれば高くはないのかもしれない。価格設定を抑えられる理由は、同社のビジネスモデルにあった。

 「当社は、『サイト内検索機能』をはじめとしたソフトウェアから事業をスタートしています。そもそもハードウェアだけで利益を得ようと考えておらず、薄利を承知のうえで台数を売り、それらに搭載したコンテンツの課金を利益につなげたいという狙いがあります」

 上述した通り、「ポップイン アラジン」には同社が開発した教育系アプリが多数搭載されており、課金につながるケースがあるのかもしれない。「今後も購入後のマーケットポイントを増やしたい」と程氏は話しており、ハードウェアの販売に特化しているメーカーとは戦略が異なるようだ。

●クラファンで上半期1位を獲得し、人気が加速

 ハードウェアメーカーとしては無名のところから、累計15万台を販売できた背景には、クラウドファンディングを通じたマーケティングの成功がある。17年にキックスターターにて、初めてのクラウドファンディングを実施したところ、「シーリングライト一体型」というコンセプトが受け入れられ、1700万円ほどの支援が集まった。

 この結果に手応えを得た同社は、要望が多かった各種動画サービスとの連携を実現し、18年にマクアケを通じて再び支援を募った。すると約7000万円の支援金が集まり、マクアケのランキングで上半期1位を獲得した。

 「この反響を受けて、テレビや雑誌などメディアの取材依頼が多くありました。世界初のシーリングライト一体型というユニークさが、大きな引きになったのだと思います。20年9月から楽天やアマゾンといった大手通販サイトと家電量販店にも販路を広げたことで、初代モデルは約4万台を販売しました」

 さらに、進化モデル「ポップイン アラジン 2」の発売が1回目の緊急事態宣言の発令タイミングと重なり、巣ごもり需要が急増したことで、1日3000台ペースで売れるように。当時の売上記録は過去最高で、20年末には日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2020年ヒット商品ベスト30」で15位にランクイン。さらなるメディア露出、販売増につながった。

 「8割の方がオンラインで購入しており、購入者層は66%が既婚者、50%が子どもがいる世帯です。年齢層でいうと、20代が17%、30代が40%、40代が30%。利用シーンとしては、50%のユーザーがポップイン アラジン経由でテレビ番組を視聴し、20%が毎日利用しています」

●据え置き型の新製品を開発した狙い

 18年の発売依頼、「シーリングライト一体型」の特徴を打ち出してきたポップインだが、21年9月に新製品となる据え置き型のプロジェクター「アラジン ベース」を発表。同製品は名前のとおり花瓶のようなフォルムで、置型のライトとしても使用できる。

 搭載されたスマートライトには、音楽に合わせて光を演出するサウンドモードや入眠効果を促すスリープモードなど5つのモードが備わる。プロジェクターの機能は、「ポップイン アラジン 2」と「ポップイン アラジン SE」よりも劣り、画質はHD、最大の明るさは200ルーメンとなる。そのぶん、発売中の2製品より安価だ。

 「邪魔にならないプロジェクター」でユーザーの支持を得てきた同社が、なぜライバルの多い据え置き型の市場に参入したのだろうか。

 「幅広い層の方に、さまざまな生活シーンで利用してほしいとの思いから、アラジン ベースを開発しました。近年は、天井に引掛シーリングがない住宅も増えていますし、自宅以外の場所で使いたいという需要もある。また、天井から吊るすタイプは気軽に店頭で試しづらい。そういった方々の声を反映した製品です」

 こだわったのは、機能性よりもデザイン性。「存在自体を喜びに変える」をコンセプトとして、使用するときも、使用しないときも美しいたたずまいでインテリアとなるようなデザイン目指した。ペットボトルと同サイズの大きさながら、最大100インチを実現するという。これまでは子どもがいる世帯をターゲットとしてきたが、「アラジン ベース」のメインターゲットはインテリアにこだわりを持つ女性だ。

 「これまではオンライン販売がメインでしたが、新製品は店頭販売を強化するつもりです。据え置きタイプで気軽に店頭で試すことができるので、購入前に実物を見て試したいという需要に応えやすいためです。また、インテリア媒体の取材獲得やインテリアを得意とするインフルエンサーを活用したマーケティングにも注力しています」

 現状、1000台の事前予約が完売、追加の1000台の予約を受け付けている。まずは、「22年3月までに1万台を達成したい」と程氏は意気込みを見せた。ポップインの事業は、ニュース記事などのレコメンドサービス、ECサイトのレコメンドサービス、そしてライト一体型のプロジェクターの3つが柱となっている。しかし、程氏はほとんどの時間と労力をハードウェア事業につぎ込んでいるそうだ。

 「プロジェクターの事業を始めて、ハードウェアの可能性を大いに感じています。自宅時間の充実をテーマに、プロジェクターの進化モデルや付属製品はもちろん、それ以外の製品にもチャレンジしたいですね」

(小林香織)