自然な風を送る扇風機「The GreenFan」、スチームでおいしいトーストが焼ける「BALMUDA The Toaster」など、シンプルでスタイリッシュかつ高性能な製品を送り出し、生活家電市場で独自の立ち位置を築いたバルミューダ。そのバルミューダがIT機器関連の新ブランド「BALMUDA Technologies」を立ちあげ、第1弾製品としてスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表した。

 BALMUDA Phoneは、4.9型フルHD(1080×1920ピクセル)液晶ディスプレイを搭載した小型の5G対応Android端末だ。カメラは背面に4800万画素、フロントに800万画素が1つずつ。バッテリーは2500mAhで、CPUはクアルコムのSnapdragon 765、RAMが6GB、ストレージは128GBだ。おサイフケータイに対応し、IPX4(生活防水)の性能を備える。

 CPUなどのスペック的にはミッドハイレンジの端末だ。カメラは超広角も望遠もない。手にすっぽり収まるサイズ感は心地よいが、ディスプレイは小さくバッテリー容量も少ない。価格はバルミューダ自ら販売するSIMフリーモデルが10万4800円。国内キャリア版はソフトバンク独占販売で14万3280円だが、購入補助プログラム「新トクするサポート」対象機種なので、48回払いで購入し、端末をソフトバンクに返却すると最大24回の支払いが免除され、実質負担額7万1640円で購入できる。

●「大きさ、デザイン、中身が違う」

 価格が発表されたとき、正直、このスペックでこの価格は高いと感じた。ただ、BALMUDA Phoneはバルミューダの社長 兼 チーフデザイナーである寺尾 玄氏が「一番やりたかったことをするときが来た」と発起し、自らデザインした。現在のスマートフォンとは「大きさ、デザイン、中身が違う」(寺尾氏)。

 コンパクトサイズは、初代iPhone以降、毎年拡大しつづけるディスプレイや多機能化に対する違和感を示している。「画面のサイズが大きくなるほど人間の顔は大きくなっていない」「スマホの画面を見るために人は生まれてきたのではない」「すてきないい人生のための補助道具がパソコン、今はスマートフォン」という考えからコンパクトにしたという。

 寺尾氏は当初、4.8型を最適なディスプレイサイズと決め、デザインしたそうだ。しかしソフトバンクからの「5Gに対応させるべき」とのアドバイスを受け入れると、どうしても4.8型のボディーでは収まらず、やむなく4.9型に変更したという。

 デザインは曲線で構成されている。フラットで直線的なスマートフォンが多い中、「直線のない人間にふさわしい形」(寺尾氏)を追求したBALMUDA Phoneは、曲線だけで構成された唯一のスマートフォンとしている。頻繁に触れる背面はもちろん、正面から見た形状、ディスプレイの辺さえも曲線になっている。

 質感も注力した部分だという。寺尾氏は「背面のざらつきで目指したのは、河原に落ちている石です。現在のスマートフォンの最初はキラキラと輝いていても、時が経つにつれて劣化していく質感に不満がありました」と話す。

 BALMUDA Phoneは特殊な仕上げを施しているため、半年、1年と使っていくと、革製品や木材のように味わい深くなっていくという。

●こだわりが詰まった独自アプリ

 そして中身。Android 11を搭載するが、バルミューダ独自のアプリを複数開発した。これらはBALMUDA Phoneだけに搭載される。

 ホーム画面は色や表示する情報を好みにカスタマイズでき、左右にフリックすることで、基本アプリの画面を素早く表示できる。2本のストライプをなぞることで、設定したアプリを呼び出すことも可能だ。

 スケジュールアプリは、一般的なアプリとは異なり、カレンダーの枠がない。ピンチイン/アウトで過去から現在まで表示範囲が伸縮する。時計アプリは目覚まし設定の簡単さやアラームの音にこだわり、計算機アプリは、三桁カンマ表示のほか、日本人になじみやすい4桁区切りの漢字表記も利用できるようにした。

 現在のレートで為替計算も可能で、「大人のための計算機」と発表会で紹介されていた。こうした工夫は「スマートフォンに費やす時間を短くする」(寺尾氏)ためだ。

●端末やアプリの使い勝手には好感触

 BALMUDA Phoneの製品発表会で寺尾氏は、ソフトバンク 常務執行役員の菅野圭吾氏とのトークセッションも含め1時間に渡って、バルミューダの成り立ちからBALMUDA Phoneのこだわり、今後の事業展開まで熱心に語った。

 「人はスマートフォンにとらわれすぎている」「人はスマホの画面を見るために生まれてきたのではない」といった寺尾氏の指摘には納得でき、実際にBALMUDA Phoneに触れてみると、その持ちやすさ、確認や操作が素早くできることを重視したアプリの使い勝手も好感触だった。ただ、それでも値段が高いと思ってしまう筆者は、スマートフォン業界を取材するライターとしての意識が強すぎるのかもしれない。

 スマートフォンに求める価値観は、人それぞれだ。寺尾氏は画一的と見ているスマートフォンだが、Android端末には、いわゆる“ガラケー”っぽい折り畳みケータイもあれば、ディスプレイ自体を折りたためるフォルダブルもある。カメラを3つも搭載しているのに5万円台で購入できる中国製スマートフォンもあれば、レンズは1つなのに1インチセンサーを積んで20万円近くする高級端末もあり、さまざまな価値を求める人たちに多彩な選択肢が用意されている。

 BALMUDA Phoneもその選択肢の1つというだけだ。あえて機能を抑えたコンパクトなスマホ、しかもあのバルミューダが作ったとなれば選ぶ人もいるだろう。実際、バルミューダの直販サイトでは、ホワイトモデルの初回出荷分がすでにさばけたようで、12月出荷予定となっている(2021年11月下旬現在)。

●“バルミューダらしさ”の確立を

 一方、全体の出荷台数は、2021年度の売上予想の上方修正額と端末代から計算して、約3万台とみられている。これは決して多くない。バルミューダ自身、最初からたくさん売れる商品だとは思っていないのだろう。とはいえ、IT機器を販売していくことになるので、OSアップデートや独自アプリの更新などはしっかりやっていく必要がある。独自アプリを提供していたメーカーが、OSアップデートに対応させる難しさから提供を止め、Android標準アプリが主流になっているのが現状だが、この辺りは端末の製造を担当した京セラやソフトバンクもサポートするのだろう。

 筆者自身は、時を経て味わい深くなっていくBALMUDA Phoneに期待したい。かつてのケータイは筐体が樹脂製で、キズが付くと途端に古くさくなった。ガラスや金属になったスマートフォンも、キズが付くとがっかりするのは変わらない。それが革小物やジーンズのように、長く使うことでキズすらも味わいになっていくのであれば、端末を2年、3年、それ以上使う現在の利用スタイルにマッチする。

 また、BALMUDA TechnologiesはこのBALMUDA Phoneを皮切りに、今後も製品を増やしていくことを明らかにしている。複数の製品がそろうことでIT機器業界にも、バルミューダが目立ってくるかもしれない。日本メーカーの携帯電話ブランドが減ってしまった中で、バルミューダは新しい立ち位置を確立できるか、期待したい。