●仕事に役立つ調査データ:

消費者の傾向、若者の価値観、働き方の変化――このコーナーでは、ビジネスパーソンの働き方や企業の戦略立案に役立つようなさまざまな調査データを紹介していく。

 住まいを探す際、「おとり物件」に遭遇する人が絶えない。

 おとり物件とは、実際には存在しない物件、または成約済みにもかかわらず、不動産会社のWebサイトなどに情報が掲載され続けている物件のことだ。

 近年は取り締まりも強化され、集客のために架空物件の広告を掲載するような悪質な業者は減少傾向にある。とはいえ、成約情報の入力ミス、更新遅延の結果として、おとり物件の広告が掲載されているケースは後を絶たない。首都圏不動産公正取引協議会の調査(2022年1月)によると、調査対象物件のうち1割以上がおとり物件だったという。

●4人に1人が、おとり物件に遭遇した可能性

 生活者側から見たおとり物件の問題点は、問い合わせや内見にかけた時間と労力、費用が無駄になってしまうことだ。LIFULLの調査によれば、おとり物件に遭遇した可能性がある人は4人に1人。おとり物件に引っ掛かった人が、不動産屋に訪れたり内見をしたりするために使った交通費の総額を試算すると、年間約30億円にも上ることが分かった。

 おとり物件の広告が掲載され続ける原因は、不動産流通機構が運営する不動産流通標準情報システム「REINS(Real Estate Information Network System、レインズ)」の仕組みにある。

 不動産会社は、レインズ上の物件情報を参照して自社のWebサイトなどに広告を掲載しているのだが、レインズに登録されている物件情報が間違っていたり、最新でなかったりする可能性がある。また、レインズ上で成約情報が更新されていても、不動産会社のWebサイトが更新されていないと、結果としておとり物件となってしまう。

●「おとり物件かどうか」確認は難しい

 おとり物件に遭遇した可能性がある人の81.6%が「残念な気持ちはあったが、仕方がないと納得した」答えたのは、その物件がおとり物件だったかどうかを確認する方法がないからだ。

 一方、物件を探す際にかかる時間は平均8時間。不動産会社や物件のある現地まで実際に足を運ぶ人は約57%いる。また物件探しにかかる費用は平均で3600円。数値には表れないものの、おとり物件に引っ掛かってしまった際は「良い物件を見つけたと思ったのに成約済みだった」という落胆、「不動産会社や現地まで出向いたのに無駄足になった」という徒労感も大きく、住まい探しの負担になっている。

 調査では20代女性から「住宅情報サイトのアプリで内見予約を済ませ、不動産会社を訪ねたら『その物件は先週のうちに決まってしまった』とのこと。1週間もあったのなら連絡の1本くらいあっても良かったのでは? と思いながらも、仕方がないので別の物件を紹介してもらった」との声が出ている。

 また「子供の進学に当たり、一人暮らしの物件を探していた。『ここはいいな』と思って問い合わせたところ、『同じ学校へ進学する予定の人に決まってしまった』との回答。仕方ないと思っていたのだが、その物件は1カ月以上も情報サイトから削除されなかった。進学後に分かったことだが、子供の同級生にその物件を借りた人はいなかった」とコメントした40代女性もいる。

●「初めての住まい探し」で被害多数

 「募集終了物件の遭遇経験あり」と答えた人の割合を見ると、若年層が特に被害を受けていることが分かる。「おとり物件に引っかかってしまった可能性がある」と回答した人のうち、36.1%が「初めての住まい探しにおいて」の経験だったと回答している。

 また、18〜29歳(n=450)に限れば、直近3年間で住宅総合検索サイトを利用した人のうち、半数を超える52.5%がおとり物件に遭遇した可能性がある。全年齢を対象とした際の遭遇率(46.8%)と比較すると5.7ポイント高い。

 22年4月の改正民法施行により18歳以上は成人となった。不動産の貸借契約を結ぶ際、従来は保護者の同意が必要だったが、いまは自己判断で契約できるようになった。調査を実施したLIFULLでは「若者が貸借契約のトラブルに巻き込まれるリスクも懸念される。『早すぎる決断』に泣くことのないよう、家族でよく話し合う、学校で教育の機会を設けるといった対策が求められる」としている。

 本調査は、22年1月15〜16日にかけてインターネットで実施した。調査対象は全国18〜69歳の男女9104人(男性4446人、女性4658人)。また物件探しに関する調査をインターネットで実施したのは2022年2月5〜6日で、調査対象は全国18〜69歳の男女1000人(男性502人、女性498人)。