2020年11月、個室サウナの先駆けとして「ソロサウナtune(チューン)」が神楽坂にオープン。一時は予約が取れないほどの人気を見せた。それから、わずか1年半の間に1人やグループで利用できる「個室サウナ」が一気に増えた。

 この春夏にも続々とオープンが予定されており、サウナ愛好家さえも「情報収集が追いつかないほど」だとか。1時間数千円と気軽に利用できる施設から、年会費が100万円を超える超高級施設までさまざまあり、かなり選択肢が広がっている印象だ。

 今回は、個室サウナの中でも新しいジャンルといわれる超高級の会員制プライベートサウナ「LOCA THE CLASS(ロカ・ザ・クラス)」を体験取材。さらに、コクヨのサウナ部 部長、兼JAPAN SAUNA-BU ALLIANC(ジャパン サウナ部アライアンス)の共同代表を務める川田直樹氏に、「プライベートサウナの需要や期待」を聞いた。

●主流は1時間4000円前後の1人用サウナ

 ビジネスパーソンを中心に、今やサウナは「身近なリラクゼーション」として生活に定着しつつある。日常的に通う場合は、銭湯やスパ施設内のサウナを利用するのが一般的だったが、ソロサウナチューンのオープン以来、「個室サウナ」という新たなジャンルが加わった。

 「これまでもホテル内のプライベートサウナなどはありましたが、チューンはそれを大衆化させて個人向けに展開した日本初の施設です。他人を気にせずサウナに入れるのは、コロナ禍において斬新であり、大きなインパクトがありました」(川田氏)

 ソロサウナチューンは、シングルルームが60分3800円、80分4800円、最大3人まで利用できるグループルームは、80分1万1400円となる。内装は落ち着いた雰囲気になっていて、横になることもできる2メートルのサウナベンチがある。

 ホステル「UNPLAN(アンプラン)」内に併設されており、サウナ後のカフェ利用や宿泊も可能だ。オープンからしばらくは予約が殺到していたようだが、現在も午後6時以降は予約がほぼ埋まっており、土日曜日は終日満席状態。この様子を見ると、リピーターが多いのかもしれない。

 都内の個室サウナは、ソロサウナチューンに似た設備、料金体系の施設が多い。例えば、大井町の「LESSS(レス)」は80分4000円、恵比寿の「ひとりサウナプラス」は60分3800円、90分4800円でともに水シャワーのみ。原宿の「マイサウナ暖力」は80分5400円とやや割高だが、水風呂がある。

 上記3施設は、ソロサウナチューンと比較してかなり予約が取りやすい(5月中旬時点)。オープンして日が浅いためか、多数のリピーター獲得にまでは至っていないのかもしれない。

 数は少ないが、会員制の施設も出てきている。祖師ヶ谷大蔵にある男性専用の「自問自答」は入会金5500円、月会費1万3200円で入り放題。Webサイトで空き状況を確認し、空いていれば利用できる。

 高円寺などにある男性専用の「HOTTERS24(ホッターズ24)」は、入会金4400円、月会費1万3200円(高円寺店の場合)で、全国4店舗の相互利用もOK。24時間365日好きな時間に利用できるそうだ。週1回以上の頻度で通うなら、会員制が魅力的かもしれない。

●年会費100万円以上の超高級サウナも登場

 現状の個室サウナは、1時間4000円前後の価格帯が主流だが、それらとは一線を画す高級路線の会員制施設も出てきている。

 この5月に福岡でオープン予定の「脈 -MIYAKU-」は、最大6人まで利用できるグループ向けの施設。個人会員の入会金は80万円(初回入会割引で50万円)、年会費30万円で、年会費には毎月1回の無料利用が含まれる。法人会員は、入会金が300万円(初回入会割引で200万円)、年会費100万円(初回入会割引で90万円)で、年会費には毎月5回の無料利用が含まれる。

 初回会員は、審査を通った90人となる。『GOETHE(ゲーテ)』の記事によれば、すでに首都圏からも応募が殺到しているらしい。

 21年7月、恵比寿にオープンした「THE CLASS.(ザ・クラス)」も、話題を呼んでいる超高級会員制サウナだ。22年4月には、同ブランドの麻布十番店「ロカ・ザ・クラス」がオープンした。最大4人まで利用できて、個人・法人ともに入会金が22万円、年会費が110万円となる。さらに、1万2000円〜の都度利用料金がかかる。

 ザ・クラスを運営するMAGMA The.(マグマ・ザ)社のCMO、北條敦也氏は「メインターゲットは法人で、勢いのあるスタートアップや芸能事務所が会員になっている」と話す。最近では、大手企業からも「会社の福利厚生にしたい」という問い合わせがあるそうだ。

 ラグジュアリーな設備に加え、床や壁に敷き詰めた天然溶岩プレートを水蒸気によって温める「マグマスパ式サウナ」の特徴も。今回、「ロカ・ザ・クラス」で体験取材を実施した。

 「ロカ・ザ・クラス」は男女グループでの利用も可能で、男女別にパウダールーム、シャワールーム、トイレがある。サウナは複数人が寝転べる広さで、照明を好きな色に変更できるカラーセラピーも搭載。

 サウナの温度は65度と高くないが発汗作用はバツグンで、入って数分で全身からしっとりした汗が吹き出てきたのには驚いた。個人差はあるが、この発汗作用こそマグマスパ式サウナの特徴らしく、体内深部の温度を上げて温めるそうだ。

 水風呂にも独自のこだわりがあり、富士山溶岩によってつくられた浴槽にミネラル鉱石水で濾過した水を使っている。

 休憩スペースはテラス付きで開放感たっぷり。大きな画面で映像を見ながらリラックスするもよし、一緒に訪れた人との会話を楽しむもよし。貸し切りで贅沢(ぜいたく)な気分に浸ることができた。

●会話ができない。コロナ禍で増した「個室需要」

 サウナーの新たな選択肢となった「個室サウナ」だが、その需要はどれほどなのだろうか。川田氏は「コロナ禍で個室を使いたいシーンが増えた」と話す。

 「僕は、友人や仕事仲間と連れ立ってサウナを利用することが、めずらしくありません。ときには、初心者に“ととのい方”を教えながら入るのですが、コロナ禍で終始無言でいなければならないのはおもしろくないし、人間関係も築きづらい。そんなときに複数人で入れる個室は重宝しますよね」(川田氏)

 川田氏を含む愛好家の多くは、心身だけでなく人間関係をととのえる場所としてもサウナが機能しているという。そのため不特定多数の人と一緒に入る大衆浴場ではなく、思う存分コミュニケーションが取れる個室環境は魅力的というわけだ。

 では、1人用の個室サウナはどうなのだろう。

 「個室サウナは、短時間で質の高いリフレッシュや癒やしを求める多忙なビジネスパーソンや経営者に選ばれやすいと思います。基本的に時間貸しのビジネスモデルなので、その時間にきっちりコミットできて、満足度の高い体験をしたい人に向いていますよね。僕も1人用の個室サウナをよく利用します」(川田氏)

 利用料金が上がっても、他人の存在を気にすることなく、効率よく利用できる点に価値を感じるというわけだ。女性の場合は、「ご褒美サウナ」として利用するケースも多いという。

●今後求められるのは、個室サウナ×〇〇

 ソロサウナチューンが市場にインパクトを与えたこと、コロナ禍で個室の需要が高まったことで、他社が次々と新規参入し、個室サウナが増え続けている背景は理解できた。とはいえ、ここまで急増すると供給過多になりそうな気もするが……。

 「差別化の難易度が上がっている認識はあります。ただ地域差があり、マイナーな地域ではまだ選べるほどの選択肢がないので、リピーターを獲得しやすいのかなと。例えば、22年4月、たまプラーザにオープンした『ROKU SAUNA(ロクサウナ)』は、周辺に類似施設がなく、利用者のほとんどは近隣住民のようです。ライフスタイルにサウナを組み込むなら、立地は重要な要素です」(川田氏)

 確かに、渋谷、恵比寿、品川など施設が密集するエリアを離れれば、明確な差別化をせずとも、まだまだ繁盛するチャンスがあるのかもしれない。

 「新しくできたサウナは、『まず1回行ってみよう』とはなるはず。ただし、損益分岐点はリピートにつながるかどうか。大衆浴場と比較した個室サウナの難しさは、床面積が小さく世界観を表現しづらいこと。カフェスペースやマッサージなどの付帯機能が少ないなかで、施設の魅力を語り尽くさなければなりません」(川田氏)

 川田氏が注目している個室サウナを聞くと、「OOO(オー)」と「SAUNA RESET Pint(サウナ リセット ピント)」をあげた。後者は、川田氏がプロデュースに関わっている施設だ。

 「オー」は4月に東日本橋にオープンしたばかりで、「コミュニケーションサウナ」がコンセプト。6人までのグループ利用がメインで会話しやすい環境にこだわっている。ビル内には、サウナ後にマッチするドリンクや食事を提供するアフターサウナバーも併設。

 6月、浅草に1号店がオープンする「サウナ リセット ピント」は、日本最大(※)の1人用サウナ個室数を誇る。瞑想やバーチャル旅行体験ができるルーム、ワーキングスペース、休息カプセルなど、サウナ以外の体験もそろう。浅草の街と連動した周遊プランなども提供する予定だ。

 「今後は、個室サウナ×〇〇という掛け算が必要になるかなと。言い換えると、サウナだけの施設は淘汰されていくかもしれません。サウナにプラスアルファして、仕事や食事、その他の体験も同時にできると、より行きやすくなり、リピーターにつながるためです」(川田氏)

 より個性が求められている個室サウナ。ビジネスセンスが試されるフェーズに突入したといえそうだ。

(小林香織)