連日続く猛暑の影響で電力不足の可能性があるとして、政府は6月27日、東京電力管内に「電力受給ひっ迫注意報」を初めて発令した。家庭や企業の電力使用を巡り政府が節電を呼び掛ける中、売れ行きが好調な製品がある。ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3、メーカー希望小売価格は1万4850円)だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、連日の猛暑などを追い風にビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。

●クラファン出身の充電式デバイス

 同製品は「REON POCKET」(レオンポケット)シリーズの3世代目で、専用のネックバンドなどとともに使用する。19年7月に自社のクラウドファンディングサイトで初代レオンポケットの資金を募ったところ、一週間で目標額の6600万円に到達。好評だったため、翌20年7月には一般販売を始め、2日で1万台を販売した。その後も、機能改善などを繰り返し、現在に至る。

 最新機種のレオンポケット3では、サーモモジュールを新開発するとともに冷却フィンを改良することで、冷却効率を高めた。旧機種と比較し、駆動時間を最大約2倍、吸熱量も1.5倍まで向上したという。

 「着るエアコン」と呼ばれているように、冷却機能「クールモード」だけでなく、「ウォームモード」を使用すると冬も使用でき、季節を問わず利用できるようにした。クールモードでは最大61時間、ウォームモードでは同51時間、それぞれ駆動する。

 スマートフォンなどモバイル機器の開発で培ったノウハウを生かし、本体には加速度センサーなどを装備。ユーザーの行動を検知し、本体が自動で最適な温度に設定する。専用アプリ経由で好みの温度に設定することも可能。スマートフォンのようにモバイルバッテリーを使ったUSB充電(Type-C)にも対応している。製品ページによると、100分でフル充電になるという。

●ソニーG広報「想定以上の推移」 暑さ対策の切り札に?

 レオンポケット3の売れ行きについて、ソニーG広報は「販売戦略なども絡むため詳細な数値は開示できない」とした上で「発売から売れ行きは好調。われわれの想定以上で推移している」と回答した。家電量販店のヨドバシカメラの店舗や、ECサイト「Amazon.co.jp」でもランキング1位を記録するなど、発売以来、好調を維持しているという。

 好調な売れ行きの背景については「ユーザーの環境意識の高まりと、発売のタイミングが良かったからではないか」(ソニーG広報)と分析する。発売直後の4月〜5月も例年よりも高い気温が続き、不安定な気候が続いた。

 ここ数日も連日の猛暑が続き、節電ニーズが高まっている他、富士通ゼネラルが6月10日に発表したように、昨今の半導体不足や3月の中国・上海のロックダウンなどの影響で一部店舗で続く、エアコンの品薄状態なども好調な売れ筋の背景にあるとみられる。

●通勤から“接待ゴルフ”まで 利用シーン広がる

 販売元のソニーGによると、発売当初はビジネスパーソンの利用を想定していたという。初代レオンポケットは、専用インナーウェアの首元のポケットに収納し、肌近くで直接冷却する仕組みだったが、21年3月に専用ネックバンドを発売。これにより、服を問わず利用できるようになった上、ビジネスシーンだけでなく、近所のウォーキングやゴルフなど動きが少ない運動でも使えるように。利用シーンとユーザー層の拡大に成功した。最新機種には「ゴルフモード」を搭載しており、より快適に利用できるようにしている。

 ニーズの拡大に伴い、専用ウェアを開発する企業が相次いだ。専用ウェア(東レ製)に加え、ベイクルーズ(東京都渋谷区渋谷)がソニーとライセンス契約を締結。運営するメンズセレクトショップ「EDIFICE」 (エディフィス)ブランドから21年6月、専用のポロシャツとビジネスシャツ(それぞれホワイトとサックスブルー)を発売した(現在は休売中)。はるやまホールディングスやタカキューも続き、それぞれ専用ビジネスウェアを受注生産で発売した(現在は休売中)。

 ビジネスパーソンは社内の上司や取引先の幹部と“接待ゴルフ”に勤しむことが少なくない。このため、スポーツ製品を手掛けるデサントも、自社の『デサント』『ルコックスポルティフ』『マンシングウェア』のゴルフ3ブランドから、レオンポケット対応の専用ゴルフウェアを発売した。

 こうした各社の動きにソニーGは「想定ターゲットが確実に広がっている」と手応えを示す。日本での人気を受け、最近では中国・香港で初の海外販売を始めたというレオンポケット3。猛暑を背景とした、国内外でのビジネスの広がりに今後も注目が集まりそうだ。

 ビジネスパーソン向けの暑さ対策としては、デジタル機器の通信販売を行うスリーアール(福岡市)が繰り返し使えるネッククーラー「ひえリング」の予約販売を開始している他、厚労省が熱中症のリスクが高まるとして、近距離での会話時を除き、屋外でのマスク着用を控えるよう注意喚起を出している。