例年よりも早く梅雨があけ、最高気温が40度を超える都市も出ている2022年の夏。電力供給のひっ迫によって、節電という課題に直面している。

 エアコンは掃除をしてきれいにすれば冷却効率が上がり、かつ節電にも役立つ。そんな中、「エアコンの奥の奥まできれいに掃除をする」サービス「おそうじ本舗」に注目が集まっている。

 「おそうじ本舗」フランチャイズチェーン事業を展開するHITOWAライフパートナー(東京都港区)の見澤直人社長に、ハウスクリーニング市場や今後の展望を聞いた。(武田信晃、アイティメディア今野大一)

●市場は拡大 1784億円に成長へ

 矢野経済研究所による調査をもとに、HITOWAライフパートナーが推計したハウスクリーニング市場の市場規模を見てみよう。2014年に1453億円だった市場は22年に1732億円にまで拡大。25年には1784億円に成長すると予想している。

 現状では、ハウスクリーニングを利用した人の割合は6.6%(矢野経済研究所)と、100人中7人しか利用したことがないという結果だった。ただこれは、裏を返せば伸びしろも大きい市場だということでもある。見澤社長は「利用率が12%、15%となるだけでも市場は3000億〜4000億円になりますから、まだまだ伸ばせると考えています」と話す。

 おそうじ本舗のハウスクリーニング分野での売上高は、18年は90億円だった。それが、この4年で倍増し、今後もさらなる成長を見込んでいるという。

 業績拡大のポイントとなるのがエアコンのクリーニングで、技術を駆使した「完全分解洗浄」にHITOWAライフパートナーの強みがある。

●50を超えるエアコン設備を備えた研修施設 

 同社は、メイプル超合金のカズレーザーさんをCOO(チーフおそうじオフィサー)、安藤なつさんをCOO秘書に起用した。見澤社長は、起用の狙いを話す。

 「過去にも柴田理恵さんなどを起用し、それぞれテーマを決めてCMを打ってきました。ハウスクリーニングは『どこの会社も同じで違いが分からない』というお客さまが少なくありません。それをどうマーケティングによって訴求すればいいのかを考えた際、説得力のある方という声が社内から上がりました。その中でカズレーザーさんが、そういうイメージを持っている方だと考えました」

 確かに「仕事ができそうなタレントランキング」で、カズレーザーさんは櫻井翔さんと並び、男性1位を獲得している。 

 記者発表ではメイプル超合金の2人が「夏に向けてのエアコン掃除の重要性」について、完全分解洗浄を含めプレゼンした。

 安藤さんは介護の本(『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』(KADOKAWA))を出版するなど、介護歴約20年のベテランでもある。介護現場ではエアコンがどれくらい重要かを聞くと、「高齢者になると体温調節がしづらいので、空調は非常に大事でした。状況を聞きながら温度を変えていましたね」と話す。

 カズレーザーさんは、特にエアコン掃除について以下のように説明した。

 「おそうじ本舗と横浜国立大学との共同研究によると、一般のエアコン清掃会社が採用している従来のエアコンクリーニング手法では、カビや細菌などを含む汚れがエアコン内部に約3分の1残っているという結果が出ています。特に、エアコン内部にある水をためるドレンパンには、カビや汚れが付着している他、送風ファンにもほこりとカビがこびりついています」

 そこで強調したのが、フィルターやアルミフィンの奥にあるドレンパンと送風ファンまで洗う完全分解洗浄だ。

 国内には100種を超えるエアコンが出回っている。だが、1度全てを分解して元に戻せる業者は少ない。同社は50を超える最新機種のエアコン設備を備えた研修施設を持つ。担当者はその研修施設でさまざまな訓練ができるようになっているという。これにより、担当者が各家庭に設置されているあらゆるエアコンに対応できるようにした。

●利用者はまだ6.6% 倍以上に増やしたい

 同社はハウスクリーニング事業を1997年にスタートしている。HITOWAライフパートナーとして防疫対策、ビジネスの両面でポジティブな状況であることは間違いないだろう。

 「2020年4月は、皆さんどうしていいのか分からないということで業績が落ち込みました。その後5月に少し戻り、6月から前年同月比を上回る数値になりました。自宅での滞在時間が伸びたことによって、家で気になる部分が増えたため、依頼が増えました」

 今後、ハウスクリーニングに伸びる余地はあるのだろうか。

  「在宅率は下がると思いますが、『家に帰ったらどう過ごそうか』とライフスタイルを考えることは、生活の一部になっています。エアコンだけではなく、家にあるいろいろなものをきれいにしようと思うようになりました。手洗いもそうです。以前は子どもに『手を洗いなさい』と注意していたのが、今では手を洗わないほうが少ないかもしれません。衛生観念が変わったと思います。ハウスクリーニングは必要なサービスになっていくと考えています」

 さらに売り上げ目標を達成できるのかどうか。その勝算を聞いた。

 「6.6%しか利用していない現実があるので、このハードルを越えるためのチャレンジは重要だと思っています」と話す。当面は利用率15%ほどを目標にしている。

 「10人のうち7人も8人も利用するかと言われれば、それはオーバーだとは感じています。状況を見ながらしっかりとビジネスをしていきたいです」

 筆者はエアコンの水漏れが発生したため業者を利用したことがある。その時、業者から「半年から1年に1回は掃除をした方がいい」といわれた。私のような悲惨な状況ではなくとも、定期的な掃除をしてもらいたい需要がおそうじ本舗にあるのか。それは安定した収益源になるはずだ。

 「昔はエアコンが汚れて、どうしようもなくなってから『エアコン掃除をしましょう』という感じでした。だから掃除は大変でしたし、故障の原因にもなりかねませんでした。一方、水が漏れだす前に掃除をする『予防クリーニング』のほうが、きれいさを維持しやすいですし、長持ちもさせやすいのです。昔は夏と冬しか利用しませんでしたが、今は湿気とりなどで1年中使っています。1年に1回でもいいので、使用頻度に応じて利用してもらうように訴求していきたいですね」

 ハウスクリーニングを標ぼうしている以上、エアコン掃除の先に、家全体の掃除も視野に入れているのだろう。

 「その通りです。私も現場の人間でしたが、お客さまは『どんな人が来るんだ?』と緊張していましたし、私もどんなお客さまなのかと緊張していました。家に入ること自体にハードルがあるビジネスなのです。そして2〜3時間、一緒に過ごすわけですからストレスが溜まります。一方、お客さまと適切なコミュニケーションをとって安心していただけたら次につながります」

●「きれい」は人による尺度が違う 難しいビジネス

 同社はくらしのマッチングサイト「楽ラクーン」を2020年に開発、リリースした。これはおそうじ本舗だけではなく、競合の清掃会社にもプラットフォーム上に出店してもらい、HITOWAやおそうじ本舗が受けた注文を出店者に割り振っていくサイトだ。

 最近は需要が大きく、注文を受けてもおそうじ本舗のお客に1カ月ほど待たせてしまうケースも出てきた。それを防ぐために、同社のフランチャイズ(FC)の店以外の清掃会社にも参加してもらい、すぐに対応してもらおうと考えたのだ。

 「これは、B2B2Cのサイトです。一般のお客さまに訴求していく中で、しっかり市場シェアをとり、価格をリードする。多くの業者に参加してもらうことによってサービスの質を高めていきたいと思い、新たに立ち上げました」

 質という言葉が出たが、おそうじ本舗はFC制を採用している。FCではサービスの質に差が出やすくなる。

 「確かに標準化が最も難しいところです。コンビニなどはスタンダード化しやすいですが、クリーニングビジネスでは床のきれいさは100人いれば100人とも基準が違います。また、家に入ってモノを壊したり、モノを盗んだりするのではないかと警戒もされます。

 ただ、当社のFCは基本的にオーナーが多く、家を拠点に仕事をしています。ですので、周辺住民もオーナーの人物像を理解しています。また、ハウスクリーニング(清掃)を頼む場合は、オーナー自ら足を運ぶことが多く、それが安全、安心につながっています」

 見澤社長は仮に大資本が参入しても、ノウハウの蓄積があるので、業界がひっくり返ることにはならないと話す。

 「教育が大事で、毎年研修をやった分だけストックになります。洗剤の知識、道具の使い方などといった技術は1年やってできるものではありません。教育に時間をかけることによって差別化を図れると思っています」

 そのノウハウにはクレーム対応も含まれているという。

 「お客さまによってきれいの尺度も違います。信用がないと、お客さまの勘違いによって、モノがなくなったという事態が発生する場合があるんです。一方、きれいになったことによって、逆に傷が表れて『傷つけた』と指摘されるときもあります。

 昔は写真を撮ったりしていましたが、それはお客さまの心情的にうれしいものではりません。今は一緒に機械の動作確認をする、汚れはどこにあるなど全て合意した上で清掃をするようにしています」

 筆者の家の郵便受けには、水回りの修理のマグネット付き広告などが時折、入っている。彼らが掃除方面までビジネスを広げてくる可能性もゼロではない。

 「ただエアコン掃除は緊急性が高いものなので、ハウスクリーニングとはそこまでの類似性はないと思っています。彼らはドアをノックできると思いますが、技術力、接客力、安心感で差をつけられるはずです」

●掃除ビジネス以外も手掛ける

 同社のビジネスは掃除だけではない。新しいビジネスモデルとして「KEiROW」という訪問医療マッサージのサービスを2002年に始めた。バッグや靴修理の「靴専科」も展開している。丁寧に修理するため、預かり期間はものによって1カ月以上かかることもあるそうだ。

 これは技術が問われるので、フランチャイズ制をとりつつも、HITOWA自ら靴などの工房を抱えることによって、FCのバックアップ態勢を充実させた。

 「市場が変化し、必要とされるときにビジネス化して一気に広げていきます。市場として大きくはないかもしれませんが、その中でも圧倒的なナンバーワンを目指しています」

 「FC数は、おそうじ本舗が1800、KEiROWが300、バッグ・靴が80ぐらいです。今は2万世帯に1店舗ぐらいです。将来的におそうじ本舗は25年で2700店舗を出店できると思っています。多すぎるのでは、とFCのオーナーから言われることもあります。ですが、1人のオーナーがお客さまを深堀りしていても、ケアできる数は多くないのです。KEiROWは500、靴専科は300ぐらいあれば存在感が出てくると思います」

 コロナで衛生観念が変わったことは間違いない。電力ひっ迫による節電で、エアコンの性能をどう引き出すかは話題になった。おそうじ本舗のような業態は今後、より身近なものになっていきそうだ。