11月4日、日本カー・オブ・ザ・イヤーの上位10台となる「10ベストカー」が選出されました。10ベストカーは以下の10台となります。

 「スズキ アルト」「トヨタ クラウン」「日産 エクストレイル」「日産 サクラ/三菱 eKクロスEV」「日産 フェアレディZ」「ホンダ シビックe:HEV/シビックタイプR」「マツダ CX-60 e-SKYACTIV D」「BMW iX」「ヒョンデ IONIQ 5」「レンジローバー」「ルノー アルカナ」です。

 今年は投票で同数となったモデルがあるため11台となりました。最終選考の結果発表は12月8日を予定しています。

 一方、11月9日にはRJCカーオブザイヤーの最終選考が行われ、国産車部門は「日産 サクラ/三菱 eKクロスEV」、輸入車部門では「BMW アクティブツアラー」が選ばれました。

 これを読んで「おかしいな」と思った方もいるでしょう。「11月9日に最終選考があったのに、12月8日にも結果発表をするとは、どういうこと?」と。

 その答えは、「実は、日本にはカー・オブ・ザ・イヤーが2つある」からです。

●日本・カー・オブ・ザ・イヤーとRJCカーオブザイヤー

 1つは、「日本・カー・オブ・ザ・イヤー」であり、もう1つが「RJCカーオブザイヤー」です。どちらも選考員が投票して、今年の1台を決める賞レースです。ただし、この2つは運営も選考員も、まったく別。そして、それぞれが毎年、「今年はこれ!」と発表しているのです。

 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、「Car Of The Year」の頭文字をとって「COTY(コティ)」、RJCカーオブザイヤーは、そのまま「RJC(アールジェーシー)」と呼ぶことで区別をすることもあります。最初に日本カー・オブ・ザ・イヤーが1980年にスタートし、11年後となる91年からRJCカーオブザイヤーが始まります。

 では、この2つの賞レースは、どのような違いがあるのでしょうか。

 まず、大きく異なるのは運営団体です。日本カー・オブ・ザ・イヤーは、自動車メディア(雑誌やWebメディアなど)の編集長クラスが実行委員を務めています。賞を決める選考員は、参加する媒体から推薦された人が務めます。選考員は60人。言ってみれば、自動車メディアによる賞が日本カー・オブ・ザ・イヤーです。

 一方、RJCカーオブザイヤーは、特定非営利活動法人自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)が運営する賞です。自動車研究者、ジャーナリストとあるように、フリーランスの集まりがRJCであり、その集まりが決める賞がRJCカーオブザイヤーとなります。こちらのメンバーは40人。クルマの専門家であるフリーランスによる賞がRJCカーオブザイヤーとなります。

●過去10年の「今年のクルマ」を比較

 では、実際に、どんなクルマが過去に選ばれてきたのでしょうか。日本カー・オブ・ザ・イヤーの過去10年は以下のようなクルマとなります。

2021-2022:日産 ノート/ノートオーラ/ノートオーラNISMO/ノートAUTECH CROSSOVER

2020-2021:スバル レヴォーグ

2019-2020:トヨタ RAV4

2018-2019:ボルボ XC40

2017-2018:ボルボ XC60

2016-2017:スバル インプレッサスポーツ/G4

2015-2016:マツダ ロードスター

2014-2015:マツダ デミオ

2013-2014:フォルクスワーゲン ゴルフ

2012-2013:マツダ CX-5

 一方、RJCカーオブザイヤーの過去10年+今年分は以下のようになります。

2023年次:日産 サクラ/三菱 eKクロスEV

2022年次:日産 ノート/ノートオーラ

2021年次:トヨタ ヤリス/ヤリスクロス

2020年次:日産 デイズ/三菱 eKワゴン

2019年次:三菱 エクリプスクロス

2018年次:スズキ スイフト

2017年次:日産 セレナ

2016年次:スズキ アルト/アルトラパン

2015年次:スズキ ハスラー

2014年次:マツダ アテンザ

2013年次:日産 ノート

 見比べてみると、過去10年で同じクルマになったのは、昨年の「日産ノート/ノートオーラ」だけ。

 ちなみに日本カー・オブ・ザ・イヤーは日本車も輸入車も同じ条件で戦いますが、RJCカーオブザイヤーは、日本車部門と輸入車部門が分かれています。そのため日本カー・オブ・ザ・イヤーは、過去10年で3回の輸入車がグランプリとなっています。

 一方、RJCカーオブザイヤーでは、11回のうち4回が軽自動車、4回がコンパクトカー。つまり、軽自動車とコンパクトカーが11回中8回を占めています。RJCカーオブザイヤーは、小さなクルマが選ばれる傾向が強いといえるでしょう。

●「カー・オブ・ザ・イヤー」というお墨付き

 カー・オブ・ザ・イヤーの獲得は、自動車メーカーにとって商品に箔がつくことを意味します。専門家が「今年一番のクルマだ」と認めるわけですから、賞を獲得した自動車メーカーは、誇らしげに広告やCMに賞の獲得を明記するようになります。そして、ユーザーも、それを見て「専門家のお墨付き」であることを理解し、購買意欲を高めることになるというわけです。

 ですから、自動車メーカーは、賞の獲得に向けて、選考員会向けの追加の試乗会を開催しています。もちろん通常の試乗会でも、選考員を確実に呼びます。逆に言えば、選考員は必ず、候補に挙がったクルマを試乗していることが求められるのです。

 こうした自動車メーカーの賞獲得に向けた動きがあれば、どのクルマが賞を獲得するのかは、事前になんとなくわかってしまうものと思うかもしれません。しかし、実際のところ、RJCカーオブザイヤーはまだ小さなクルマが強いという傾向はありますが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの予測は非常に困難である、というのが個人的な実感です。

 なぜなら、選考員は、みな自動車メディアで働く人間ですが、それぞれ評価基準や好みが異なっているのです。製品としての出来を重視する人もいれば、売れ行きを重視する人、社会的な意味を最優先に考える人もいます。そのため投票結果としては、まったくのバラバラ。最終選考では、選考員1人ずつの投票内容が公開されますが、その内容にはいつも驚かされてばかりです。

 あえて言えば、どのようなクルマが選ばれるのか、その選考こそが世相を反映しているということでしょう。選考員も日本の空気の中で生活していますから、当然、その判断にも世相の影響があるはず。12月8日になれば、日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考も発表されます。今年のグランプリに、どんなクルマが選ばれるのかに注目です。

筆者:鈴木ケンイチ