BGM配信などを手掛けるUSEN(東京都品川区)が沖縄でちょっと気になる店をオープンした。那覇市のタイムスビル1階に店を構える「CAFE&BAR U」だ。

 「ん? 飲食店を運営していない会社がカフェを始めるなんて珍しくないでしょ。それがどうかしたの?」と思れたかもしれないが、店内に「これでもかこれでもか」といった感じでテクノロジーがぎゅぎゅっと詰まっているのだ。

 注文から会計までタッチパネルで行うことができたり、デジタルサイネージを使って集客力を高めたり、配膳ロボットが料理を運んでいたり。同社が手掛けるサービスを張り巡らせているわけだが、個人的に気になったのは「USEN Camera」というサービスだ。

 店内の天井にカメラを設置しているので「防犯カメラかな」と思って担当者に聞いたところ、「監視だけではなく、さまざまなデータを取得して、店の運営に役立てている」とのこと。

 店がオープンしたのは、2022年3月。半年以上運営してみて、どのようなことが分かってきたのか。同事業を担当している執行役員の伊藤直嗣さんに話を聞いた。

●自分たちでやってみた

――沖縄に“DXだらけのカフェ”をオープンしました。その理由を教えてください。

伊藤: 弊社は60年以上にわたって、店舗に対してBGM配信やPOSレジなどさまざまなサービスを提供してきました。飲食店向けのサービスを導入すれば、「人件費を削減できますよ」「業務を効率化できますよ」といったことをアピールしてきましたが、この話を聞いたお店の人たちはこのように感じていたのかもしれません。「そんなにいいサービスのであれば、自分たちでやってみれば」と。

 じゃあ、自分たちでやってみるか。で、実際に使ってみてどうだったのかを“お伝え”することができるのではないか。知見をフィードバックするだけでなく、課題が見つかれば、それを改善できるかもしれない。このように考えて、カフェをオープンすることにしました。

●分からないこともある、ことが分かった

――店内に「USEN Camera」を導入していますよね。資料をみると「防犯と分析を兼ね備えている」などと書かれていますが、どのように使っているのでしょうか?

伊藤: 防犯以外に、来店客の属性を分析することに使っています。男性なのか女性なのか、年齢は30代なのか40代なのか、初めての来店なのかリピーターなのか、店内のお客さまは何人いるのかといった情報が分かるんですよね。

 店は30〜40代の女性をターゲットにしていることもあって、そうした層が多い。ただ、カメラから得られた情報を分析すると、想定よりも40〜50代の男性が多いことが分かってきました。もちろん、現場で働いているスタッフは「40〜50代の男性が多いなあ」という印象は受けているのですが、数字で証明されることによって、あらためて定量的に把握することができる。こうしたデータを受けて、今後は商品開発などに生かしていかなければいけません。

 どの時間帯にどういったお客さまが多いのかといった情報も分かるのですが、40〜50代の男性は朝から昼の時間に利用する人が多いことも分かってきました。店はオフィス街にあるので、商談前にプレゼン資料を確認したり、商談後にメモをまとめたり、サードプレイスとして利用されている人が多いのかもしれません。

 カメラを導入して分かったことは「分からないこともある、ことが分かった」こと。たくさんのデータを取得できるわけですが、それをどのように活用すればいいのか。「CAFE&BAR U」では、来店客の属性を分析することで、その人たちが好みそうなメニューを提供するなど、少しずつ取り組みを始めていますが、実績はまだまだ。PDCAをどんどん回すことによって、“最適解”を見つけなければいけません。

――このほかに、カメラをどのような形で使っていますか?

伊藤: 「映像」と「音声」は、ものすごく役に立っていますね。ネットワークカメラなので、リアルタイムで映像が見れますし、音声も聞くことができる。目新しい技術ではないですが、店の状況はどうなっているのか、オペレーションはうまく回っているのか、厨房でトラブルは発生していないのか、といったことが分かるんですよね。

 私は普段、東京で働いているので、すぐに沖縄に行くことができません。物理的な距離があっても、カメラを通じて、オペレーションをチェックできることは大きいですね。

 話は変わりますが、某飲食チェーンが「USEN Camera」を導入していまして、そこのスーパーバイザーの人が「とても役に立っている」と言っていました。その人いわく、店を管理するうえで、50項目をチェックしているそうで。カメラを導入する前は店に足を運んで全ての項目を確認していたのですが、カメラから映し出される映像と音声があれば、35項目はチェックできると言っていました。

 現場に行かなければ分からないこと。料理の温度は適正なのか、おしぼりは熱くないのか、においに問題はないのかなど。デジタルで分からないこと以外は、カメラからの情報で判断していて、「業務効率につながった」と言っていました。

●沖縄以外でも展開

――店を運営してみて、苦労したことは何だったでしょうか?

伊藤: スタッフを集めること、原価が高騰していること、この2つはとても苦労しています。新しい料理を提供するにあたって、原材料を決めていかなければいけません。そのときに原価率を計算するわけですが、計算している途中で原価がアップすることがありました。

 報道などで「原価がアップして、大変だ」といった声を耳にすることがありますが、店を運営してみて「本当にそうだな」と肌で感じることがたびたびありますね。

――なぜ沖縄に店を構えたのでしょうか?

伊藤: 以前から沖縄に拠点を構えていたこともあって、弊社のサービスを導入している飲食店が多いんです。導入率が高いということは、「新たなテクノロジーを試してみようかな」という人も多いのではないか。こうした仮説があったので、沖縄に店をオープンしました。

 「CAFE&BAR U」は食事を提供するだけでなく、飲食店を営む人たちに向けて情報を発信する場でもあるんですよね。いわゆる“ショールーム”的な役割を果たしていかなければいけません。店舗×DXのコンセプトはぶれずに、沖縄以外でも展開していきたいですね。

(土肥義則)