社会全体でデジタル化による変革を意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれる中、自治体の“お手製DX”が話題になっている。役所窓口の呼び出し番号を表示するモニターをカメラで直撮りし、YouTubeでライブ配信する取り組みだ。低予算で時間もかからないこの手法は「身の丈DX」などとも呼ばれ、「これこそ住民が求めていたサービス」と評価の声が広がる。

 話題になったのは、千葉・市川市役所の行徳支所での取り組み。転入・転出届や、マイナンバーカードなどの受付窓口の呼び出し状況を表示したモニターをカメラで撮影し、動画投稿サイトのYouTubeでライブ配信している。

 「コロナ対策として、予算をかけずに迅速にできる方法を念頭において発案しました」(市の担当者)

 同市でこのサービスを始めたのは2020年2月。コロナ対策の一環として、待合スペースの密を解消するため、外出しても受付状況を確認できるようにとの考えから発案したという。

 役所内に余っていた動画用のカメラを粘着テープで天井に取り付け、モニター画面を撮影。初期費用はかからず、ランニングコストも通信費と電気代のみだという。SNSでの反響には「予算をかけずに迅速にできる方法を念頭に置いたものですが、このような評価をしていただき光栄です」と担当者は喜ぶ。

●コロナきっかけに全国の自治体でも

 こうした「お手製DX」の取り組みは、市川市にとどまらず、全国の自治体でも見られる。いずれも共通するのは、コロナ対策として窓口での混雑緩和を、予算をかけず迅速に解消することを目的とする点だ。

 大阪市港区では20年9月から同様のライブ配信を開始。インターネットで呼出状況を表示するシステムの導入も検討したが、予算の都合から別の方法を模索。他市の取り組みを参考に、低予算で実現できるモニター画面のライブ配信に決めた。

●DXへの「橋渡し」の意味合いも

 ライブ配信の導入を経て、新しいサービスに移行した自治体も多い。

 北海道・旭川市の市民課では、21年3〜4月にモニター画面のライブ配信を実施。その後「待合状況公開システム」を導入し、住民異動や戸籍の届出、証明書発行窓口の混雑状況をスマートフォンやPCから確認できるようにした。

 千葉市の各区役所でも、コロナ禍を機に同様のライブ配信を行った後に「混雑状況配信サービス」に移行している。

 いわば、ライブ配信を橋渡しとし、随時、新システムに移行していくという流れだ。

 デジタル化の重要性が叫ばれる昨今、顧客を置き去りにした「形だけのDX」という指摘がたびたび話題に上る。顧客志向とは何か――。自治体の「お手製DX」が称賛を集めたのは、この点をしっかりと押さえていたからにほかならない。

 SNSでは「これこそ住民が求めていたもの」「高度なシステムは希望しない。達成手段よりも成果を評価したい」「こういう簡単だけど便利なやり方をもっと使うべき」といった声が多数挙がっている。