丼もの・うどんメニューを中心に展開する「なか卯」の朝食メニューは、ファストフード業界の中でも屈指のリーズナブルさだ。物価高騰が叫ばれる中、低価格を守る理由にはある戦略があった。担当者に詳しく聞いた。
全国に462店舗を展開しているなか卯は、そのうちの455店舗で午前5時〜10時の間、通常メニューに加えて朝食のメニューも提供している。
なか卯の朝食価格を触れる前に、大手牛丼チェーン3社の朝食メニューの“最安値”(2月3日時点)を紹介する。吉野家の「納豆定食」は399円、松屋の「Wで選べる玉子かけごはん」は290円、なか卯と同じゼンショーホールディングスのすき家の「たまかけ朝食」は280円だ。
対してなか卯の「目玉焼き朝食」は280円、「こだわり卵朝食」に至っては250円で提供している。これまで何度かの値上げをしているが、それでも競争激しい同業と比較して、安さが際立つ。
これらのメニューの開発経緯を聞いた。
店舗で朝食を摂る客は、朝の時間帯にご飯を食べるというリズムが組み込まれている人が多い。ということもあって、毎日食べても飽きがこないように、和をベースにした食材を選んだ、と担当者は説明する。
また「一日の活力をチャージいただくため」(担当者)、タンパク質、脂質、塩分、糖質、ミネラルを適量摂取できるような構成を考えて開発したということだ。
目玉焼き定食は、なか卯が親子丼に使用している「こだわり卵」と同じものを使用している。こだわり卵は濃いオレンジに近い色の黄身で、コクのある味わいが特徴。餌からこだわっているそうで、一般的な卵と比較してビタミンDは1.4倍、ビタミンEは4.4倍とのこと。
目玉焼きに使用する際は鮮やかな色とコクを生かすため、黄身が半熟でトロッとした焼き加減になるようにしているそうで。実際に利用客から「卵がおいしい」という意見をよくもらうそうだ。
●なぜこの価格帯で提供しているのか?
朝食の価格を決める上で、どのようなことを意識しているのだろうか。担当者に話を聞いたところ、「朝食にコンビニを利用する客層」を設定して、手軽な価格を追求しているそうだ。
実際に「おにぎり1個とドリンク1本、またはおにぎり2個を購入した時の料金」を指標の一つとしている。
確かにコンビニでこれらを購入すると、200〜300円程度になる。コンビニと同じくらいの金額にもかかわらず、店内で温かい朝食にありつけると思うと、なか卯の朝食は有力な選択肢になるかもしれない。
ちなみに看板メニューである「はいからうどん」は、通常の時間帯は並サイズで290円だが、朝の時間帯では10円安い280円。これも朝の時間帯のサービス価格ということだ。もちろん量は変わらない。
実際に、朝食の時間帯にはどのような客層が来店するのか聞いた。
店舗の立地によって客層は違っていて、ビジネス街や駅前の店舗では出勤前に立ち寄る会社勤めの人、郊外店ではシニア層やドライバーの人が目立つという。とはいえ、いずれも男女問わず幅広い年代の人が利用するそうだ。
エヌピーディー・ジャパン(東京都港区)の外食・中食市場における朝食の動向分析レポートによると、2022年7月の朝食を外食・中食で摂る機会数は、前年同月比で17%増となっている。コロナ禍前である19年同月比でも2%増だ。
なか卯に限らず、朝食をいつでも手頃な金額で摂れる外食チェーンは、その地域にとっての「インフラ」になりつつあるのかもしれない。