企業の制服が、変化を続けている。ジェンダーフリーの考え方に基づき男女で区別のないデザインを採用したり、女性のパンツスタイルを拡充したり、新しい制服を導入するケースも目立つ。
また、制服を廃止する動きも加速。髪形や服装を個人が自由に選択できる環境を整備し、「ダイバーシティ」(女性やシニア、外国人、障害者、LGBTなど、多様な人材を積極的に活用しようという考え方)の推進を目指す企業も多い。
本記事では、制服を巡る各社の動向をまとめた。
●「ディズニー」「びっくりドンキー」はジェンダーレス化
制服における男女差を無くすべく、ジェンダーレスなデザインの使用、ジェンダーフリーなルールへの改訂を行う企業が増えている。
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドは4月1日から、キャストの制服における男女別の表記を撤廃。性別による指定をなくし、キャスト自身が希望するコスチュームを着用できるようにした。
髪色などの身だしなみに関するルールも一部緩和。性別にかかわらず全てのキャストを対象にルールを統一すると発表している。
びっくりドンキーを展開するアレフ(札幌市)は、2022年10月に社員制服をリニューアルし、男女兼用のジェンダーレスなデザイン採用。帽子は3種類(ベレー・ハンチング・キャスケット)、シャツは白・グレー・ベージュの各長袖・半袖で6種類、ベストは1種類用意し、従業員一人一人が色や組み合わせを選べるようにした。
びっくりドンキーでは店舗によってデザインの違う制服を導入していたが、制服刷新に伴い同じデザインに統一。
ジェンダーレスの制服導入の理由は、従業員が年齢や性別などを気にせずに着用しやすいデザインにすることで、「自信を持ってお客さまに接してもらいたいから」だという。
<参考記事:「自信を持って接客してもらいたい」 制服をジェンダーレス化した「びっくりドンキー」「JINS」の狙い>
●作業服もジェンダーフリーに
眼鏡専門店「JINS」も22年7月から、店舗スタッフの制服においてジェンダーレスなデザインを採用している。
従来の制服は男性用と女性用で仕様を分けていたが、変更に伴い規格を共通に。ジェンダーレスなデザインやサイズ感を取り入れた襟型の異なる2タイプのシャツを用意し、サイズや形状、着こなしは従業員一人一人が自由に選べるようにしている。
制服に限らず、作業服でのデザイン変更を実施した企業もある。総合電子部品メーカーのTDKは4月から新作業服を導入。ダイバーシティを意識したより安全でスタイリッシュなデザインを採用した。
新作業服のコンセプトは「多様性を尊重した、自由で挑戦的な風土を醸成できる作業服」「安全で機能的な、従業員がいきいきと働くことができる作業服」「時代にマッチした、現代の若者世代が着たいと思える作業服」。
新作業服ではダイバーシティーを推進するため、男性体形用・女性体形用ともに同一のデザインを採用している他、ファッション性と着る人を選ばないシンプルさを重視した。
●パンツスタイルの拡充
JALは20年4月から、客室乗務員(CA)を始めとする航空運送部門の従業員の新制服を導入。CAの制服ではワンピーススタイルなどに加え、同社初となるパンツスタイルを用意した。
導入の理由については「多様な働き方を実現するため」としている。
ANAホールディングスの国際線新ブランド「Air Japan(エアージャパン)」では、性別を問わず、コーディネートにバリエーションを持たせ、自分らしく着こなせるボーダーレスなデザインの制服を採用している。客室乗務員の個性を大切にすること、環境にも配慮した制服とすることなど、「すべてにやさしい」をコンセプトに設定した。
ボトムスはスカートとパンツ2種類用意。パンツの裾の長さは調節可能とし、シューズはスニーカーか革靴いずれかを選択できる。
日本の伝統文化である、「結び」「重ね」を取り入れ、日本らしさを表現している。「結び」はブランドカラーの帯ベルトで、「重ね」は自然に重なる美しいさまをスカートの裾やトップスの前身頃・袖などで表した。
●制服廃止の動きも
従業員の多様性、自由な働き方を推進すべく、制服廃止に踏み切った企業もある。
高島屋では、22年9月に一般制服を完全撤廃した。
同社では、営業戦略の役割や企業イメージの表現、顧客へのサービス面の観点から、これまで女性従業員のみが制服を着用する規定になっていた。しかし、ジェンダー平等やLGBT当事者への配慮などの観点から、廃止を決定。女性従業員のみに発生していた着替えの時間がなくなったという。
制服廃止の動きは、デパートや百貨店のみならず、銀行にも広がっている。京都中央信用金庫は22年4月から女性職員の制服着用を廃止し、男女ともにスーツを着用することにした。
他にも岩手銀行(盛岡市)や佐賀共栄銀行(佐賀市)などで廃止済み、北海道銀行、北陸銀行どでビジネスカジュアルの試行を実施中。多くの企業が制服廃止に向けて動いている。
日本トレンドリサーチ(運営:NEXER)の調査によると、銀行業界で女性行員だけが着ることになっている制服を廃止する動きに対して、半数近くが好感を示しており、同様の動きは今後も広がりそうだ。