コロナ禍でライフスタイルが変容する中、大手外食チェーンを中心に朝食やディナータイムなど、特定の時間帯に絞ったメニューを展開している。
ハンバーガーチェーンの国内店舗数で1位と2位の存在であるマクドナルドとモスバーガーは、それぞれ「夜マック」「夜モス」を展開している。それぞれの担当者に取材し、開発経緯、ターゲットを比較した。
●2018年から展開している夜マック
夜マックは、マクドナルドが午後5時以降限定で提供するメニューだ。2017年6月に東海3県(愛知県・三重県・岐阜県)限定で導入し、好評だったことで18年3月19日から全国の店舗にも展開した。
当初はレギュラーメニューのバーガーにプラス料金でパティの枚数が2倍になるサービスのみだったが、18年8月1日に「マックフライポテト」と「チキンマックナゲット」のセットを通常よりも安く提供する「ポテナゲ」を販売開始し、ディナー時間帯のメニューを充実させた。
夜マックのターゲットは、「夜食にボリュームを求める人、家族や友人などとワイワイ楽しみたい人」がメイン。加えて、「マクドナルドの通常メニューのファンにもパティが2倍になる体験を訴求し、来店動機につなげたい」と担当者は説明する。
特に人気のあるメニューはポテナゲで、「コロナ禍で家族での食事機会が増えたお客様の利用を獲得したことで、18年の販売時と比べて販売数量を大きく伸ばした」という。
20年2月からは、同社初の「ごはんバーガー」を期間限定で販売し、現在までに複数の商品を展開している。
ごはんバーガーを除くと、夜マックで展開しているメニューは通常メニューの「売り方」を変えた施策だ。大規模な投資や既存のオペレーションを大きく変更することなく、客単価を上げることを狙った戦略といえる。
●夜モスはコロナ後にはじまった
「夜モス」はモスバーガーが午後3時以降の時間帯限定で展開しているメニューで、全店(一部店舗を除く)に展開したのは22年5月18日。夜マック全国展開と比較すると約4年が経過したタイミングであり、ウィズコロナでのスタートとなる。同年3月21日に、東京都による飲食店への時短営業要請が終了しており、これから夜の時間帯のニーズが戻ってこようという時期だった。
想定ターゲットは30〜40代の男性で、仕事帰りの「お持ち帰りニーズ」を狙ったという。
「夜モスライスバーガー よくばり天 金目鯛とかきあげ」は、海鮮かき揚げに金目鯛の素揚げを乗せた商品。家庭で調理する機会があまりないであろう金目鯛を使用し、調理法は素材の味を楽しめるように素揚げを採用し、中食のニーズに訴求したという(現在は販売終了)。
「夜モスライスバーガー よくばり焼肉」は、具の焼肉の量を通常時間帯のメニューの2倍にし、1つの商品でもしっかり満足感を得られるようにした。
実際の購買層はというと、夜モスの「焼肉」と「金目鯛」を購入する客層の7割は男性で、20代以下がボリュームゾーンとのこと。想定よりも若い層から支持されているようだ。
一方、通常時間帯で販売しているレギュラーメニューのライスバーガーでは、「焼肉」は男性、「海鮮かきあげ」は女性に人気がある。いずれも30〜40代が購入層のメインで、次に50代が多いという。ディナー時間帯でボリュームのある食事を求めるのは、結局のところ若い世代なのかもしれない。
そして先日3月24日から、「夜モスライスバーガー カツカレー」の提供を開始した。冷製カレーソースを絡めたロースカツに、グリーンリーフとキャベツを合わせ、ライスプレートで挟んだ商品だ。
カレーソースは4種類のカレー粉と3種類のカレールーをブレンドしており、辛味はマイルドに抑え、醤油も加えて家庭的な味付けに仕上げたという。同商品の発売に伴い、「夜モス ライスバーガー よくばり天 金目鯛とかきあげ(塩だれ)」は販売終了となる。
夜マックと夜モスは、主力のランチ時間帯以外を強化するために始めたという点で、出発地点は同じだ。食べ応えを意識したメニュー展開である点も共通する。しかし想定するターゲットにおいては、夜マックは「家族や友人とワイワイ楽しみたい」パーティー需要、夜モスは仕事帰りのビジネスパーソンの持ち帰り需要をそれぞれ狙っている点で異なる。
展開メニューは、ボリュームと見た目のインパクトを訴求するマックに対して、素材や味付けにこだわったモス。ディナー時間帯の「戦い方」にも、2社の思想の違いがあった。