学生服大手の菅公学生服が、セレクト制服(いわゆる「なんちゃって制服」)に商機を見いだしている。2016年9月に「カンコーショップ原宿」(東京都渋谷区)をオープンし、制服レンタルサービス「NANCHA」を開始。23年1月には商業施設「イクスピアリ」(千葉県浦安市)に2店舗目となる「カンコーショップイクスピアリ」をオープンした。

 1854年に創業した歴史ある同社が、セレクト制服に取り組む狙いについて同社の運営担当者に話を聞いた。

 カンコーショップ原宿のアイテム数は約1800点で、さまざまなブランドのセレクト制服を取り扱っているのが特徴だ。店内で気に入った制服を選び、レンタルする。過度な汚損や破損がなければ返却時のクリーニングは不要だ。なお、レンタル時には身分証(学生証・保険証・運転免許証・パスポートなど)を必要としている。

 料金については、ボトム、リボンもしくはネクタイ、シャツ、ニット、ブレザー、ローファーがセットになった「Lプラン」(当日8000円、1泊2日で1万円)を用意している。また、レンタルできるアイテムをLプランより少なくした「Mプラン」(当日4000円、1泊2日5000円)や「Sプラン」(当日2000円、1泊2日2500円)もある。

 利用シーンとしては「テーマパークやイベントなどをお気に入りの服装で楽しむ」「友人と制服を着用してプリクラや写真撮影をする」「卒業式や入学式などの式典、冠婚葬祭などフォーマルな場面で着用」といったものを想定している。

 主な利用層は、制服のない学校に通学する生徒や、決められた制服はあるがカーディガンやコートなどは自由としている学校の生徒だ。担当者は「制服がなくても、中高生だからこそ着られる『制服』を着たいという思いを持たれている方が多いので、学校制服の要素がきちんとある商品が人気です」と説明する。

 なぜ、一般的な学生服がメインの同社がセレクト制服のレンタル事業に参入したのか。

 背景には、少子化の進展により制服を着用する生徒の数が減っていることがある。そんな中、自社のリソース(縫製技術、多品種小ロット生産、制服デザイン力)を活用して、新たな市場開拓を行うのが1つ目の目的だ。

 2つ目の目的はブランディングだという。担当者は「学校制服というと良くも悪くもトラッド(伝統的)で固いメージを持たれることが多かったように思います。そこを、ファッションの原点である原宿に出店し、『かわいい』『おしゃれ』といったイメージを構築することを狙いました。また、中高生の生の声を聞き、商品開発に生かすことが必須と考えました」と説明する。

●2店舗目をオープンした背景

 イクスピアリに2店舗目を出店した背景には、原宿店でのレンタルニーズが高まっていたことや、「テーマパークで制服を着用したい」といった利用者の声をよく聞くようになったことがある。コロナ禍で制服を着る機会が少なくなった生徒に、気軽に楽しんでほしいという狙いもあるという。

 イクスピアリ店にはレンタルアイテム約1500点をとりそろえている。有料のロッカーやパウダールームを完備しているのも特徴で、原宿店にはないポップなカラーのアイテムも用意している。また、グループやカップルで来店した際に「おそろいコーデ」ができるような準備もしている。

 オープンから2カ月が経過しているが、高校生や大学生が主な利用者層だという。担当者は「学生時代に着ていた制服が自分の好みではなかったので、かわいいものを着たかったという理由や、よりテーマパークを楽しみたいという理由で着用されているのではないかと思います」と分析する。

 具体的な利用者数については、SNSで話題になったこともあり1日で100人を超えることもあるという。担当者は「順調な滑り出しだと感じています」(担当者)としている。