「ガスト」「バーミヤン」「しゃぶ葉」などを展開するすかいらーくホールディングスは、アフターコロナに対応するために新しい“看板戦略”を打ち出した。具体的には、店舗の存在を知らせる「リードサイン」を約500店に設置するとともに、店舗の駐車場入り口を知らせる「IN看板」のデザインを約1000店で変更する方針を掲げている。いずれも店舗の視認性(目で見た際の確認のしやすさ)を向上させるための施策で、2024年度早期の実施を目指している。

 店舗の存在を気付いてもらうだけでなく、ドライバーをスムーズに駐車場へ誘導するため、どういったことを工夫しているのだろうか。店舗開発本部 マネージングディレクターの梅木郁男執行役員に話を聞いた。

●アフターコロナへの対応

 すかいらーくでは、店舗から2キロメートル以内にあるロードサイド沿いの誘導看板や、駅前の看板をリードサインと呼んでいる。ロードサイド沿いの看板には「ガストのロゴマーク」「直進を示す矢印」「1km」などと記載されており、ドライバーに「1キロ先にガストがあるのだな」と直感的に知らせる役割がある。駅前の看板は「ガストのロゴマーク」「出てすぐ」「営業時間7:00〜23:00」などの情報があり、「どこかでちょっと食事にしようかな」と考える消費者に、店舗情報を知らせている。

 同社は、実験的にいくつかの場所にリードサインを設置し、同じような条件の店舗(看板なし)と売り上げの変化を比較した。すると、「ガスト京王若葉台店」(神奈川県川崎市、ロードサイド立地)では売り上げ効果が2.5%増、「ガスト池田駅前店」(大阪府池田市、駅前立地)では4.0%増という結果となった。他の実験店舗も合わせると、平均で2.0%の売り上げアップが見込めることが分かった。

 IN看板ではどのような変更をするのか。コロナ禍でテークアウト需要が急増したことから、同社ではガストとから揚げ専門店「から好し」の併設店を増やした。その施策と連動して、IN看板にから好しのロゴマークなどを掲載してきた。

 しかし、コロナが5類に移行し、から好しの認知度も向上してきたことから作戦を変更することに。ガストのロゴマーク、駐車場の「P」マーク、「信号右折」といった記載があるIN看板を実験的に導入した。いずれも、駐車場の存在をアピールしたり、ドライバーが入りやすくするためのものだ。ガスト静岡国吉田店(静岡市)の実験では、他店舗と比べて売り上げが1.5%増という成果が出たことから、こちらも1000店舗で変更することにした。すかいらーくが展開する店舗数は3000近くあるので、これは大きな変化といえる。

 梅木氏は「アフターコロナになって、人流が復活しています。お客さまも店舗に戻ってきているので、IN看板も駐車場だとすぐに分かるようにする必要があると考えています」と説明する。

●街路樹と後からできた構造物への対応は?

 立地や周辺の道路状況などは店舗によって大きく異なる。それぞれの店舗の視認性を高め、スムーズに駐車場へと誘導するため、梅木氏は知恵を絞っている。

 例えば、新店オープンの際には、看板を適切な場所に設置するために、社員が現地の状況を直接確認するだけでなく、自動車から動画の撮影もする。梅木氏はその動画をチェックし、IN看板の位置などを調整していくという。それだけ視認性の向上にこだわるのは、売り上げを大きく左右する要素の一つだからだ。

 また、ドライバーから見て、競合の店舗・看板が自社店舗より手前にある場合には、さらにその前にガストのリードサインを設置するようにしているという。存在を先に認知してもらうことで、「ガストで食事しよう」という意思決定を促す狙いがある。

 店舗が街路樹で隠れるような場合は、特に視認性を高める工夫が必要となる。街路樹の葉が少なくなる冬だとそれほど問題はないが、夏になるとかなり見えにくくなるケースもある。

 そこで、新店舗をオープンする際には、葉が最も茂っている状態での視認性を確認するようにしているという。道路から見えにくいという状況を、IN看板や自立式の看板でどう補うかをしっかり検討するためだ。同社には看板設置に関するマニュアルは存在するが、最終的には店舗ごとの状況によって、個別施策を判断しているという。

 店舗がオープンした後、付近に新しい構造物ができた場合も、視認性の低下につながる。売り上げにかかわるので、追加の対策が必要となる事態だ。一方、全ての店舗の周辺状況を本部がリアルタイムで把握するのは難しいという事情もある。そこで、周囲の環境が大きく変わった際には、店舗のマネジャーやクルーに知らせてもらうような制度を始めようとしているという。

 普段何気なく目にしている看板だが、その設置場所などを巡って店舗開発の担当者は日々知恵を絞っているのだ。