北九州市のソウルフードと呼ばれる人気うどんチェーン「資さんうどん」が東上を進め、大阪に到達。11月20日には、大阪市鶴見区に65店目の今福鶴見店をグランドオープンした。

 場所は、大阪メトロ・長堀鶴見緑地線の今福鶴見駅から徒歩3〜4分のロードサイド。「フレスポ鶴見」というショッピングセンターの一角に位置する。大阪市内といっても、周囲は郊外の住宅地だ。「イオンモール鶴見緑地」がすぐ近くにあって、近辺は郊外型の商業地域になっている。

 フレスポ鶴見には、スーパー「万代」の他、飲食店も回転寿司「スシロー」、焼肉「ワンカルビ」、しゃぶしゃぶ「しゃぶ葉」、ハンバーグ「びっくりドンキー」などといった人気店が並んでいるが、現状は「資さんうどん」がダントツで支持されている。

 平日のお昼ごろから午後9時ごろまで、何度か店の前まで様子を見に行ってみたところ、いつ行っても行列が絶えずに大反響を起こしている。資さんうどんを経営する、資さん(北九州市)の広報も「お昼時だけでなく、深夜まで行列ができる状況にあり、うれしくもあり、驚いている」と話す。

 顧客単価は約1000円。席数は108席、駐車場台数は近隣店舗と共用で226台となっている。店舗は24時間営業だ。顧客層は「他地域と変わらず、お子さまからお年寄りまで幅広い年齢層」(広報)とのこと。一方、筆者が現地を訪れた平日には、リタイアした高齢者も目立った。今福鶴見には市営の団地が多くあって、古くから住んでいる人が多い。そうした事情も垣間見えた。休日にはファミリーが増えて、顧客層が変わってくるだろう。

●関西でのPRを地道に行ってきた

 大阪進出に当たって、資さんでは知名度を上げるため用意周到に宣伝活動を行ってきた。7月21〜26日、大阪府と兵庫県のホームセンター・商業施設にキッチンカーを出店。看板メニューの「肉ごぼ天うどん」を販売し、大きな手応えを得た。

 8月28日〜9月10日には「阪神百貨店梅田本店」の地下1階「スナックパーク」にて、ポップアップストアを出店。最長で2時間待ち、200人を超える行列ができた。また、9月15〜18日、大阪城公園で開催された「テレビ大阪YATAIフェス!2023」に、キッチンカーで参戦。来場者の投票によりナンバーワングルメを決める「Y-1グランプリ」では、なんと1位を獲得して実力を示した。

●大阪と異なる特徴も、すんなり受け入れられた

 大阪には独自のうどん文化があり、相容れない心配もあったが、全くの杞憂だった。大阪のうどんも、資さんうどんも、コシはない。大阪のうどんはやわらかく歯切れが良い。それに対して、資さんうどんは、もっちりとしている。一方で、どちらもだしが染み込んだ、やわらかいうどんを食べさせる文化といった共通点があって、大阪でも歓迎されている。

 今福鶴見店のロケットスタートを見れば、大阪都市圏(都市雇用圏、10%通勤圏)に住む約1200万人の市場で、かなりの出店が期待できる。12月7日時点で大阪府内に「丸亀製麺」は54店、「はなまるうどん」は28店ある。讃岐うどんはコシが強く、大阪のうどんとは全くの別物にもかかわらず、受け入れられている状況だ。資さんうどんも、出店を重ねられるのではないだろうか。

 資さんうどんは2024年、大阪市と隣接する兵庫県尼崎市に2店をオープンすることも決まっている。8月11日には、大阪に先行して、岡山県初出店となる岡山大元店を岡山市北区にオープン。岡山県と香川県を結ぶ本四架橋により、コシが強くいりこだしが一般的な讃岐うどんの店が増えている。にもかかわらず、岡山大元店も想定を上回る来店数となっていて、行列ができており、すんなりと受け入れられている。

 これまで資さんうどんは、中国地方には山口県に5店を出店していた。北九州市と山口県下関市は関門海峡で隔てられているが、今やトンネルと橋で陸続きとなっている。密接な地域性もあって、順調に出店しているのだ。山口県に初出店したのは09年で、翌10年に出店した福岡市よりも早かった。

 福岡県でも北九州市と周辺部だけでなく、福岡市や久留米市など筑後地方にも出店。福岡市に出店する際は、地場の博多うどんに味を合わせた方が良いという意見もあったが、創業者の大西章資氏は、これまで支持されてきた味を貫いた。こうした覚悟と出店攻勢によって、北九州以外の地域にも資さんうどんが受け入れられる素地ができたといえるだろう。

 「ウエスト」や「牧のうどん」といった博多うどんについて、資さんの広報は次のように言及する。

 「博多うどんは麺がより一層やわらかくて、だしがあっさりしている印象。味わいの部分で大きく異なる。例えば資さんうどんは、麺の表面はやわらかいが、中はモチモチした食感だ。だしは鯖節、昆布、椎茸などから取った濃い目の甘みが残る味になっている。同じ福岡県出身のうどんチェーンとして、博多うどんをライバル視することなく、うどん文化を盛り上げていきたい」

●どんな点が人気を博しているのか

 既存店と比較すると、今福鶴見店は肉ごぼ天うどんをはじめとしたうどんメニューが多く注文されている特徴がある。他地域では、うどん以外にも「丼」「カレー」「おでん」など、100種類以上の豊富なメニューがあり、もっと分散しているという。

 丼物は「カツとじ丼」の人気が最も高いが「天丼」「牛丼」「ソースカツ丼」などもあり、バラエティに富んでいる。

 忘れてはいけないのは、名物の甘味「ミニぼた餅」。年間販売個数は540万個に上り、お彼岸の期間中だけで27万個を販売する。甘さ控えめの北海道産の小豆のみを使用して、あんこを作っている。

 人気メニュー3種のミニサイズを組み合せた「しあわせセット」(ミニ肉ごぼ天うどん+選べるミニ丼+ミニぼた餅で980円)という、セットメニューも提案されている。 ミニ肉ごぼ天うどんをミニかしわごぼ天うどんに変更でき、ミニぼた餅がないセットも可能だ。さらに「焼きうどん」「かしわおにぎり」といった、北九州のローカル色が強いメニューもある。

 資さんうどんの卓上無料トッピングに、とろろ昆布がある。大阪に限らず、とろろ昆布は一般的に有料のトッピングで、それが入ったうどんは「昆布うどん」という別のメニューになる。

 そのとろろ昆布が無料で入れ放題なのは、大変なお得感がある。新規出店した地域では、この点も受けているのではないだろうか。うどん好きにしてみれば、追加費用なしで昆布うどんを楽しめるのも、支持される背景にあるだろう。

●東京進出はまだまだ先か

 大阪はうどんに限らず、お好み焼き、たこ焼きなど「こなもん」を好む文化があり、恐らくその傾向は今後も変わらないだろう。資さんうどんではやらないだろうが、肉ごぼ天うどんからうどんを抜いた「肉ごぼ天吸い」といったものを出して、卵かけごはんとセットにすれば流行するのではないかと個人的に思う。

 実際に、難波の老舗うどん店「千とせ」は肉うどんが名物だったが、今はそれ以上に肉うどんからうどんを抜いた「肉吸い」が売りになっている。小ぶりの茶碗に入った卵かけごはん「小玉」とセットで注文する人が多い。

 また、大阪では「油かす」という牛ホルモンをカラっと揚げたものを入れた「かすうどん」が流行してきている。もともと南東部の南河内・藤井寺市の名物だった肉うどんから派生したものだ。

 ちなみに資さんの屋号は、大西章資氏の名前「章資」の「資」が由来である。18年に3代目社長へ就任した佐藤崇史氏の指揮下で、直近ではさらに広い地域に資さんうどんの味を広げる出店攻勢をかけている。九州の全県に出店を完了し、岡山、そして大阪と順調に拡大路線を歩んでいる。

 なお資さんは、18年に後継者問題から投資ファンドのユニゾンキャピタルが買収した。当時の年商は約70億円、店舗数は42店だった。ユニゾンキャピタルはスシローを運営するあきんどスシローに投資をして、国内随一の回転寿司チェーンに成長させた実績がある。スシローは海外出店にも積極的で、今や世界的な企業に成長しつつある。資さんうどんに同様の夢を託しているのだ。

 佐藤氏はソニー入社後、ボストン・コンサルティング・グループに転職。06年からはファーストリテイリングに転じ、経営変革・グループ戦略・人事・店舗運営・社長室などの責任者を歴任。16年には「三田製麺所」「渋谷餃子」を展開する外食企業のエムピーキッチン(東京都渋谷区)の代表取締役社長に就任――といった経歴を持つ。世界的な大手企業、外食ベンチャーで経営者としてキャリアを積んできた、その手腕に期待がかかる。

 佐藤氏が率いた5年間で、資さんの年商は約124億円と100億円を超えた。今では年間延べ1600万人が来店するという。さらに大阪での成功が見えてきて、そろそろ東京に進出かとも噂される。しかし、同社では「関西の皆さまに受け入れていただくことが直近の目標」としており、それが叶うことで、全国展開の足掛かりとしていくという。

(長浜淳之介)