セブン-イレブンが入れたての紅茶を提供するマシンを試験的に導入し、話題を呼んでいる。今のところ、2023年春から東京都心部を中心に4店のみだが、本格展開した場合には大きな反響を呼ぶ可能性がある。

 これまでもセブンは13年1月に「セブンカフェ」ブランドで、コーヒーマシンを導入。競合他社も含めて、コンビニの100円コーヒーが一大ブームになり、今も飲み続けられて定着している。

 紅茶に先立って、23年3月には店内専用マシンによる「お店で作るスムージー」の提供を全国規模で拡大すると発表。24年3月末日で約1万5000店への導入が完了した。

 セブン-イレブン・ジャパンの広報によると「お店のスペースなどの事情で、どうしても設置できないケースがあるが、ほぼ全国に行き渡ったのではないか」としており、設置可能な店舗への導入を急いでいる。

 次々と新しいサービスが登場する、セブンのレジ周りにあるドリンクマシンについて、まとめてみた。

●ずらりと並ぶマシン

 セブンの紅茶マシンについては、JR田町駅・都営地下鉄三田線の三田駅から徒歩圏の2店舗にあるのを確認した。

 そのうちの1つ「芝フロントビル店」(東京都港区)を訪れてみると、カウンターにコーヒー、紅茶、スムージーのマシンがずらりと6台並んでいた。まるでドリンクマシンの見本市のようである。この店は面積が広くて品ぞろえが豊富。キャッシュレスのセルフレジも設置されている。イートインコーナーも広く、20席くらいある。

 紅茶マシンは1台で、アフタヌーンティーに良さそうな休日の午後3時頃に訪問すると、ちょうど近隣の住民らしき30代半ばくらいの女性が購入していた。

 同店は田町駅西口(三田口)から徒歩3分くらいの国道1号線沿いにあるが、周囲はオフィス街なので、ビジネスパーソンの利用が多い。また、近隣にタワーマンションも増えており、住民の利用もかなりあると思われる。

 ランチタイムに関しては、弁当、おにぎり、サンドイッチ、菓子パン・総菜パン、総菜の旺盛な需要でにぎわっている。弁当などと共に、カウンターのコーヒーを買って行く人が多いので、マシンがその分必要となっている。イートインの利用も多い。

 そのうち紅茶マシンは1台、スムージーのマシンも1台設置されている。

●紅茶マシンを操作してみた

 紅茶マシンは「セブンティー」と銘打っている。ただし、同社の広報は「現状はあくまで試験的な導入であり、今の機械のままで全国に広げるかどうか、何も決まっていない」としている。従って、セブンティーが全国展開の際のブランド名になるかどうか、不明である。

 紅茶マシンを実際に操作してみた感想は次の通りだ。

 セブンティーは、コーヒーマシンとよく似た仕様だ。ホットの場合、レジで料金を払って、紙コップを受け取りマシンにセット。ボタンを押すと、自動的に香り立つ紅茶が出てくる。

 アイスティーもアイスコーヒーと同様、冷凍ケースに入っている砕いた氷が詰まったプラスティックのカップを、レジで購入して、サービスを受けることになる。

 カップの蓋には、「アイスティー」「アイスミルクティー」などと書いてあるが、アイスコーヒーの氷とどう違うのかは判別できなかった。

 商品ラインアップは、ホットストレートティー、ミルクティー、アイスストレートティー、アイスミルクティーで、それぞれRとLの2サイズがある。価格はホットストレートティーとアイスストレートティーのRが110円で最も安く、アイスミルクティーのLの300円が最も高い。

 ホット・アイスにかかわらず、ストレートティーは、ダージリン、アールグレイ、アッサムから選択可能。ミルクティーも、アッサムとアールグレイから選べるようになっている。

 紅茶をカップに注ぎ終わるまでは2分くらいかかる。茶葉を蒸らす工程がある分だけ、コーヒーよりも心持ち長い。

 マシンには、茶葉を蒸らしている旨の図柄が表示されるので、待っている時間でも手持無沙汰になることはない。逆にワクワクさせられる。

 コーヒーの場合は、朝の出勤前や時間がない時など、なるべく早く出てくるほうが良い。1980年代に「ドトールコーヒー」が普及して以来、そういったイメージがある。しかし、紅茶の場合は、英国の貴婦人の社交文化からアフタヌーンティーの習慣が広がっている。ワンタッチで注がれる簡便な機械でも、心の余裕がある時に買ってみたいものだと、個人的に感じた。

 また、コーヒーが嫌いで、紅茶なら飲めるという人もいる。コーヒーも飲むが、紅茶をより日常的に楽しんでいるという人もいる。そういう人には、紅茶マシンの登場は朗報だろう。

 ペットボトルの日本茶や麦茶が日本でこれだけ多く販売されていることを踏まえると、もしかしたら、日本茶や麦茶のマシンもありなのかもしれない。特に、外国人観光客には受けるのではないかとふと思った。

●出来たてパンが並ぶ店舗にも

 田町駅の東口(芝浦口)から10分ほど歩いた「芝浦4丁目店」に行ってみた、こちらは倉庫街・工場街から、マンション街に変わってきているエリアで人通りが多い。

 この店もイートインのスペースが広く、窓際に11席ほど並んでいる。コーヒーマシンがレジ横だけでなく、イートインの真ん中あたりの通路側にも設置してあり、喫茶需要の高さがうかがえる。

 この付近は、見渡したところ喫茶店があまりない。湾岸エリアが新興のタワーマンションが建ち並ぶ住宅街に様変わりしているのに対して、商店の発達がついてきていないケースが、勝どき、月島あたりにも見受けられるが、芝浦も同様である。

 セブンとしては、オフィス街の芝フロントビル店に対して、芝浦4丁目店では住宅街における紅茶マシンのニーズを探っているのではないかと推測される。

 芝浦4丁目店では、「デイリーヤマザキ」以外のコンビニではあまり目にすることがない焼きたてパンが提供されている。カウンターの揚物ケース横に「セブンカフェベーカリー」と称する焼きたてパンのケースがある。

 近隣は商店が未発達で、街のパン屋もほとんど見られない。買い物難民化している住民にとっては、多少値が張っても焼きたてパンを食べたいというニーズはあるはずで、良い狙いだと感じた。

 焼きたてパンのケースには、お店のオーブンで焼く「フィナンシェ」(150円)、「メロンパン」(160円)、「クロワッサン」(170円)、「チョコクロワッサン」(190円)、「リングドーナツ メープル風味」(140円)、「カスタードinドーナツ」(160円)が並ぶ。また、普段はホットスナックのケースの中にある「お店で揚げたカレーパン」(160円)も入っている。

 お店で揚げたカレーパンは、21年6月から首都圏と東海の一部で販売を開始して、22年10月には販売累計5000万個に達した。そこで全国展開に至った。

 この中に、お店で揚げたカレーパンに匹敵するような、次のヒットが商品潜んでいるかもしれない。しかし、紅茶に合うものは、フェナンシェくらいだろうか。チョコクロワッサンも悪くないが、コーヒーのほうが合っている感がある。

 今ならスイーツのチルドケースにある、季節商品の「まるっと苺のカップミルフィーユ」(378円)あたりがアフタヌーン・ティーにぴったりという印象を受けるが、そこはお好みで店内の商品ラインアップの中から選べるだろう。

 かつて「サークルKサンクス」が併設で展開していた「ケーズカフェ」のような感じで、セルフカフェ形式の喫茶スペースを本格的にとって、居心地の良い椅子やテーブルを導入した店づくりをすれば、もっとイートインが利用されるのではないだろうか。

●お店で作るスムージーの導入が進む

 お店で作るスムージーは、他のチェーンにはないセブンに特徴的な商品だ。お店で揚げたカレーパンと並んで、近年ヒットして定番化した。販売数に関しては公表していない。

 お店で作るスムージーの特徴は、通常は廃棄されてしまうブロッコリーの茎、サイズや見た目が問題で規格外になっていたイチゴ、バナナ、マンゴーなどが使われていること。健康とフードロス低減の両立を目指した。

 急速冷凍した野菜や果物がプラスチック容器に入っており、商品を冷凍庫から取り出して、レジで購入。カップの蓋に付いているバーコードを専用機に読ませて、カップをセットする。ボタンを押したら、約70秒で完成する。

 商品ラインアップは4種類。1日に必要とされる3分の1の緑黄色野菜が摂取できる「グリーンスムージー」(300円)、明治ブルガリアヨーグルトを使用した「ベリーベリーヨーグルトスムージー」(330円)、国産大豆の豆乳を使った「いちごバナナソイスムージー」(300円)、トロピカルな果実の甘味や酸味を引き立てた「マンゴーパインスムージー」(300円)となっている。

 セブンカフェのコーヒーマシンは、年間10億杯を超える販売数を誇っており、今やセブンは日本で最もコーヒーを売っているチェーンとなっている。これだけの販売力があれば、レジ周りの喫茶需要の開拓をさらに進めようとするのは、当然の戦略だ。

 13年より、富士電機と共同開発した専用マシンで提供を始めており、税抜で100円という低価格で入れたてコーヒーが楽しめるというので、大反響を起こした。クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏による、スッキリしたデザインも好評だ。サイズはRとLの2種類。

 その後も、セブンカフェは改良を重ね、17年からはホットとアイスのカフェラテが提供されるようになった。

 22年7月には、コーヒーの濃さが「軽め」「ふつう」「濃いめ」の3段階から選べるようになった。

 キリマンジャロ、ブルーマウンテンといった高級な豆を使った商品も販売されることがあり、値段は高いが、喫茶店の価格の半額以下であり、人気が高い。

●失敗もあったカフェ戦略

 セブンのカフェ戦略は成功し続けているように見えてしまうが、歴史的に見ると、そうでもない。

 カウンターコーヒーには、1980年代から取り組んでいる。最初はサイフォンで作ったコーヒーを注文のたびに店員がカップに注いで提供していた。しかし、繁忙時に店員の手が回らないなどの理由で失敗。ドリップ方式、カートリッジ方式にも取り組んだが、いずれも失敗した。

 完全セルフ、簡便なワンタッチ操作にしたセブンカフェの登場まで、30年も諦めずに取り組んだ。そこに創業者・鈴木敏文氏の執念を感じざるを得ない。

 14年には、セルフコーヒーがヒットした余勢を駆って、コーヒーに相性の良い商品としてドーナツをレジ横で本格展開。「ミスタードーナツ」と「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の経営不振を招くほど追い詰めたが、店内調理を重視する専門店の鮮度に最終的には敵わず、数年でレジ横から撤退している。

 また、18年には都内の数店でテスト的に実施していた、ビールサーバーによる樽生ビールの提供を中止。現在まで復活していない。「ちょい生」なる呼称で、SとMの2サイズ。Sが100円、Mが190円という、格安居酒屋を上回る価格破壊で、長蛇の行列を生み出した。しかし、反響が大きすぎて、他の業務に支障があるため、止む無く中止に追い込まれたと言われている。

 本当にちょい生の全国展開を実行していたら、セブンが今頃は間違いなく日本一の居酒屋、あるいは超巨大ビアカフェチェーンになっていたほどの非常にもったいない企画だった。子どもも来るようなコンビニが酔っ払いの巣窟になっていいのかと、苦情が入れば検討せざるを得なかったのだろう。コンビニ居酒屋化の断念は、それだけコンビニが国民の生活になくてはならない、インフラになった証でもある。

 紅茶マシンも、本当に成功するのかは未知数である。しかし、今後は、日本人も朝やランチ後のコーヒー、昼下がりの紅茶と、飲み分けが進んでいく方向性も見えている。スイーツの強化と共に、アフタヌーン・ティーを楽しむ「ヌン活」需要開拓に、全国展開がなされていくのではないだろうか。

(長浜淳之介)