3月15日、丸亀製麺のカナダ1号店がバンクーバーにオープンした。店名は「Dunsmuir(ダムスミューア)店」(以下、バンクーバー店)。初日は長い行列ができる盛況ぶりで、予想の3倍となる1218杯を販売したという。

 丸亀製麺は2011年のハワイ・ホノルル店の出店を皮切りに、米国、台湾、香港、カンボジア、インドネシア、ベトナム、フィリピン、英国と海外展開を拡大している。バンクーバー店が好調な背景には、これまでの海外展開で得たノウハウが大いに生きているようだ。

 どのようにして、初出店の地で繁盛店を作り上げているのか。丸亀製麺を展開するトリドールホールディングス Marugame Udon ビジネスユニット長、三澤ビクター氏にバンクーバー店のビジネス戦略を聞いた。

●米国西海外での成功を受け、カナダ進出へ

 2024年3月末時点で、海外に264店舗を展開している丸亀製麺。海外店舗は総じて好調で、特にハワイのワイキキ店は、月商約1億3000万円(2023年8月)を記録するなど国内外の店舗で最も高い売り上げを誇る。

 米国西海岸に位置するストーンズタウン店やバレー・フェア店も好調で、この地域に地理的に近く、客層が似ていることもあってカナダ・バンクーバーへの出店を決めたという。

 「米国西海岸には、多数のアジア系住民やコミュニティーが存在します。バンクーバーもアジア系住民の比率が高く、街によってはアジア系住民が大多数を占めることもあります。アジア系のレストランやスーパーマーケットも多く、日本食への関心やニーズが高い地域で、うどん店の成功が期待できると考えました」

 出店したのはスタジアムチャイナタウン駅のすぐそばで、スポーツイベントやコンサートなどが開催される「BCプレイス・スタジアム」「Rogers Arena」が目の前にある。

 「イベント時に人手が増えるほか、近くには大学や日本橋のようなビジネスエリアもあります。多くの来店が見込まれるだろうと考え、このエリアに出店を決めました」

 バンクーバーでの出店にあたって、手を組んだのは現地でティーカフェ「ゴンチャ(Gong cha)」や「ウェンディーズ(Wendy's)」などをフランチャイジーとして営業している企業だ。

 「米国の店舗は直営店ですが、バンクーバー店はフランチャイズでの運営です。当社から麺匠(※)をはじめ麺職人が事前に現地入りしてトレーニングを実施していますが、オペレーションはフランチャイジーに任せており当社の社員は店舗に在籍していません」

●テーマは「日本のうどんをそのまま伝える」

 丸亀製麺の海外店舗は、日本で定番の「かけうどん」や「ぶっかけうどん」などは展開しつつ、同時にローカライズにも注力している印象だ。特に英国ではその傾向が強く、ロンドン店ではチキン白湯やポーク豚骨、焼きうどん、ビーガンメニューなど日本にないメニューを幅広く取りそろえる。

 一方、バンクーバー店では多少のローカライズはしているものの、テーマは「日本のうどんの味をそのまま伝えること」だという。日本の店舗と同じ製麺機を店内に置き、日本産の小麦粉で生地をつくり、日本同様の味や食感を維持することを重視している。

 現状のメインメニューは「かけうどん」(6.49CAD:約720円)、「ぶっかけうどん」(10.99CAD:約1200円)、 「きつねうどん」(8.99CAD:約1000円)など日本同様のものと、海外丸亀でも人気の「肉玉うどん」(11.99CAD:約1330円)、ハワイや米国西海岸で人気の「肉うどん」(10.99CAD:約1220円)、「カレー肉玉うどん」(13.99CAD:約1550円)など、全9種類に絞っている。加えて、天ぷらなどのサイドメニューを提供する。

 英国の店舗と比較するとメニュー数はかなり限定的となり、ビーガンメニューもなく、おむすびもない。焼きうどんなどオペレーションが複雑になるメニューや外国人スタッフにとって作る難易度が高いおむすび、それほど需要が高くないであろうビーガンメニューを省き、効率を優先しているという。

 「現状は様子見の段階で、どこまでローカライズする必要があるかを探っています。メニューのラインアップはいずれ増やす予定ですが、現地スタッフが慣れるまでは効率重視で考えています。それでも売り上げは好調ですので」

 価格帯は、従来の丸亀製麺と同様に日常的に通いやすい「ファストカジュアル(中価格帯)」としている。三澤氏いわく、「現地ではラーメン1杯の相場が15CAD(約1680円)ほど」とのこと。丸亀製麺では最も高いメニューでも13.99CADなので、かなりお手頃になるそうだ。

●初日は1218杯を販売。一番人気は「肉玉うどん」

 バンクーバー店のオープン初日は予想の3倍ほどの売れ行きで、1日で1218杯のうどんを販売した。その後も、開店前に行列ができる日が続いているという。

 「オープン初日の一番人気は『肉玉うどん』で、『肉うどん』や『カレー肉玉うどん』も好評でした。一方で、『かけうどん』や『ぶっかけうどん』はそれほど需要が高くなく、具材が多いメニューが人気でした」

 オープンから約1カ月が経過した現在も、人気のラインアップは変わらない。1人で天ぷらを3つ、4つと注文する人もいて、客単価が高い傾向もあるそうだ。

 「平日は大学生が目立ち、週末はファミリーが増えます。全体的にアジア系の方が多いですが、それ以外の方もいますね。最も混み合う時間帯はディナータイムです。多くの人が複数人のグループで訪れており、すでに他国の丸亀製麺を訪れたことがある、あるいは食べたことはなくてもブランドを認知しています」

 ランチも行列ができているが、待つほどの時間が取れずに来店を断念している人も一定数いるという。これほどの反響の理由は、ブランド認知率の高さのほか、手頃な価格帯も大きいと三澤氏は説明する。

 「この価格で日本と同じ品質のうどんが食べられるのは、並んででも訪れたい強い動機になっているはずです。『見たことがあるブランドだから行ってみたい』と友人同士で誘い合って訪れる方も多いです」

●最大の課題は「高品質」の維持

 バンクーバー店は想定以上の順調なすべり出しで、オペレーションの質も向上してきていると三澤氏。とはいえ、味のクオリティーを保つのは容易ではないようだ。

 「今回、海外店舗では初めて麺職人が現地入りして直接スタッフに指導しているので、オープニング時の品質は高いと思います。ただ、日本と同じ製麺機や小麦粉を使っても、麺の品質を同一にするには環境に合わせた調整が必要です。温度や湿度、水質などを踏まえて、熟成時間や茹(ゆ)で加減などを細かく調整しなければ一定の品質にならず、ここが最も苦労している点です」

 バンクーバー店がオープンした3月の丸亀製麺(国内外)の売り上げランキングを見ると、ハワイ・ワイキキ店が1位、そしてバンクーバー店が2位にランクインした。この勢いを保ちつつ、海外での店舗展開を盛り上げていきたいと三澤氏は締めくくった。

 トリドールホールディングスは、2024年3月期時点で、丸亀製麺を含む自社の海外店舗数を900店まで拡大している。2028年3月期には3000店舗まで拡大させる計画を発表しており、4月8日には「ラー麺ずんどう屋」の中国1号店を上海にオープン、4月29日には切りたて牛肉専門店「肉のヤマ牛」のポップアップ店を香港にオープン予定だ。丸亀製麺の海外出店も、ますます加速していくかもしれない。

(小林香織)