美容室の倒産が急増している。東京商工リサーチが調査結果を発表し、2024年1〜4月に46件の倒産が発生。同期間として過去10年間で最多だった2018〜19年の32件を上回った。現在のペースが続くと、年間の件数がこれまで最多だった2019年の105件を上回る可能性が高いという。

 2019年まで、1〜4月に美容院が倒産する件数は30件前後で推移していた。コロナ禍では、テレワークの広がりや来店控えなど厳しい環境が続いたものの、資金繰り支援などで倒産は下火に。2020年以降は28件・23件・22件と低水準で推移していた。

 新型コロナウイルス感染症の5類移行後は来店客が徐々に回復したが、円安や物価高、人手不足に見舞われたことで2023年は31件に増加。2024年は同期間として初めて40件を超えた。

 美容室はそもそも参入障壁が低く、店舗数も多いことから競争が激しい業界だ。加えて、美容資材や光熱費の高騰、人手不足などに見舞われ、コスト転嫁の必要性が生じている。

 値上げに踏み切る美容院も多いが、消費者が「料金に見合った価値がない」と判断すると顧客離れにも繋がってしまう。そのため、技術力や接客力だけでなく、ブランディング力もますます問われるようになっている。SNSなどを活用した集客や口コミ対策なども重要になっており、今後、集客につながる強みを持たない美容室の淘汰が進んでいく可能性が高い。

 東京商工リサーチは「実質賃金のマイナスが続く中、値上げは顧客の足が遠のく要因になりかねず、美容室の倒産はしばらく増勢が続く可能性が高い」と指摘する。

 1〜4月に全国の企業倒産(負債1000万円以上)のうち、日本産業分類の「美容業」を集計・分析した。